表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
51/137

第51話 受付嬢の指示

 前回のポイント・ギルドマスターから、依頼を受けた!

 執務室を後にした俺たちは、受付に向かう。

 人気のない受付に着くと、マリーが待っている。


「マリーさん、祝賀会の準備は?」


「魔物の巣は見つかるし、謎の少女は現れるし、後回しね」


「俺の宣誓式みたく、延期しないといいですね」


「それは、大丈夫。ネイトさんもハンナさんも、張り切ってるから」


 マリーは頷く。


「エリザとアンナは?」


「買い出しに行ったわ」


「あの少女は、一人きり?」


「声をかけたテイマーが数人いるから、守りは万全よ」


「さすがマリーさん、頼りになる」


 俺は賞賛する。


「そういうことだから、話を依頼に移すわよん」


「マリーさんも、張り切ってますね」


「最近、事務処理が忙しかったから、受付の仕事に関われなかったの」


「そう言えば、最近、受付では見かけませんでしたね」


「久しぶりの本業に、張り切ってるの」


 マリーは微笑む。


「あなたたちには、魔物の巣の実態を調べて欲しいの」


「大変なの?」


「うーん、一切不明」


「それ、大変だと、言ってませんか?」


「言ってるようなものだけど、言ってないからセーフ」


 マリーは茶化す。


「そもそも、今回の依頼の発端は、タロウちゃんなのよ」


「どうして、俺のせいになってるの!」


「タロウちゃん、地下道を崩壊させたでしょ?」


「結果的には」


 俺はごまかす。


「偶然だろうと必然だろうと、結果は同じよ」


「はい、ごまかしました」


「素直でよろしい」


 マリーは褒める。


「それにより、蓋が外れたの。それに伴い、魔物が町に現れたの」


「だから、責任の一端は俺にあるんですね?」


「突き詰めると、タロウちゃんのせいじゃないんだけど、責任はあるわ」


「本来なら、ドーソン評議会議員に調査させるべきですね。もちろん、一人で」


「あの人、本当はいい人なのよ。貧困層に対して、親身に対応してるし」


 マリーは、遠回しにドーソンを擁護する。


 俺も、フェルも、ドーソンに対して敵意を抱いているわけじゃない。

 ただ、ドーソンのもたらした事件の顛末に、納得していないだけ。

 とはいえ、先入観により、判断力が鈍っているのは否めない。


「話を進めると、依頼は威力調査ね」


「威力調査?」


「簡単に言うと、調査して必要なら対処する」


「やっぱり、大変じゃないか」


 俺はため息をつく。


「でも、見返りはあるわ」


「そりゃ、あるでしょ」


「新ヒロインに、いいところを見せられるわ!」


「その新ヒロイン、眠ってるんですけど?」


 俺は突っ込む。


「それに、タロウちゃん、ランクを上げたがってたでしょ?」


「上げたいですね」


「今回の依頼を達成すれば、間違いなく上がるわ」


「それ、すごく大変だと、言ってますよね」


 俺は閉口する。


「うん、言ってる。でも、大丈夫」


「大丈夫?」


「タロウちゃんなら、やれるわ!」


 マリーは請合う。


「ご主人、諦めが肝心ですよぉ」


「兄貴、気分転換になるっすぅ」


「お前たちがやる気なら、俺もやるよ」


 仲間の意見に、俺は押し切られる。


「そもそも、GランクとFランクでは、絶対の差があるわ」


「本当ですか?」


「本当。なぜなら、新ヒロインに絡み、仲間が増えるかもしれないのよ」


 マリーは伏線を張る。


「言われてみると、その可能性はありますね」


「その場合、Gランクだと、支え切れないかもしれないわ」


「でも、Fランクなら、確実に支えられる、か」


 俺は納得する。


「ランクが低くていいことはないけれど、ランクが高くて悪いことはないわ」


「弊害はないんですか?」


「本人の実力と釣り合いが取れているなら、弊害はないわ」


「釣り合いが取れていないとしたら、どうなります?」


「標的になりやすいし、失敗を犯しやすい。逆に言うと、それぐらいね」


 ランクを上げる意味はある。

 だからこそ、ギルドの内部は、閑散としているんだろう。

 みんな、ランクを上げるために、積極的に依頼をこなしているんだ。


「それこそ、SSSになればやりたい放題よ」


「おやっさんは、苦労してますよね?」


「〈憤怒〉の現役時代を知らない人の言葉ね」


 マリーは呆れる。


「金遣いが派手、とか、女遊びが激しかった、とか、そういうことですか?」


「そっち方面じゃない、単純に罪状の問題」


「罪状?」


「現役時代の〈憤怒〉は、本来なら首が飛ぶ罪を、三桁は犯しているわ」


 俺は顔をしかめる。


「その中には、国家反逆罪に該当するものも、数例含まれているわ」


「紛れもない犯罪者じゃないですか」


「大罪人、ね。それゆえの、〈憤怒〉よ」


「大罪人……」


「他の六人のSSSも、似たり寄ったりよ」


「だから、本来なら近寄るべき相手じゃないんですね?」


 マリーは頷く。


「それこそ、S以上のランク上位者は、全員近寄るべき相手じゃないわ」


「そうなんですか?」


「あなたの知っている、隷属のルイスも同じね」


「確かに、危険な魅力がありましたね」


「だから、タロウちゃんもランク上げに励みなさい」


 俺は頷く。


「ちなみに、どうしてSSSは、罰せられないんですか?」


「〈憤怒〉を含めて、SSSを罰しようとしたことはあるわ」


「結果は?」


「散々ね。特に、王命による追討軍の結果はひどかったわ」


 マリーは表情を曇らせる。


「ひどい?」


「SSS一人のために追討軍は壊滅して、王様が謝罪したのよ」


「無茶苦茶だ……」


 俺は嘆く。


「私からの説明は、以上です。この後は、指定された場所に向かってください」


「食料を始めとした支援は、どうなってます?」


「心配しないで、ちゃんと用意されてるわ」


「手際がいいですね」


 俺は怪しむ。


「今回の依頼はケインさんの主導だから、当然ね」


「祝賀会の関係者の手が、全部埋まっていませんか?」


「だから、祝賀会は後回しなの」


 俺は納得する。


「じゃあ、がんばってねん!」


 マリーの声援を背に、俺たちはギルドを後にする。

 読んでくださって、ありがとうございます。

 ブックマーク等の応援、ありがとうございます。


 ランクに関する箇所は、省こうかと思いました。

 ただ、一度省いているため、残すことに決めました。

 

 基本的に上限は、Aランクです。

 Sランク以上は、特例になります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
新作へのリンクです
覚醒テイマーの成り上がり
設定を変えた別バージョンは、全部書き直してます。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ