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第43話 戦場を見下ろせる丘

 前回のポイント・ジャイアントワームを倒した!

 日は、暮れつつある。

 それに伴い、冷たい風が吹き始める。

 連戦により、汗をかいた俺たちは身を震わせる。


 町を見下ろせる丘に隠れながら、俺たちは休憩している。

 隠れているのは、監視の目をごまかすため。

 追討軍のみならず、ハウンドの軍勢からも。


 そう、軍勢。

 大規模なハウンドの群れは、もはや軍隊と変わらない。

 むしろ、集まれるだけ集まっている分、追討軍より多いぐらい。


「どっちが勝ちますかね?」


「追討軍だ」


「その根拠は?」


「戦争の仕掛け人であるアリスは、双方の戦力を把握してる」


「フェンリル覚醒のための茶番劇なんですね」


 スラゾウは頷く。


 茶番劇なのに、両軍は精鋭を揃えている。

 享楽主義者のアリスとしては、とにかく楽しみたい。

 これは、その一環だろう。


 ハウンド側の主だった戦力は――


 ハウンド、ヘルハウンド、オルトロス、ケルベロス、ガルム。

 ハウンド種族に限って、構成されている。


 対する人間側の主だった戦力は――


 ミノタウロス、イフリート、デーモンロード、エンシェントドラゴン。

 ハウンド種族を除いて、構成されている。


「激戦になるのは、間違いないっすよね?」


「間違いない。ただ、追討軍の被害は、思ったよりも少ないだろう」


「その根拠は?」


「ハウンド側は陸戦のみだけど、追討軍は陸と空に分散してるから、有利なんだ」


「ほんとにフェンリル覚醒のための茶番劇なんすね」


 ゴレタは頷く。


 そもそも、両者の目的は異なる。

 ハウンド側は、フェンリルの救出。

 人間側は、ハウンド軍の壊滅。


 その両者の衝突を止める。

 これが、俺の目的。


「問題は、双方とも本気ということ。始まってしまったら、止められない」


 もし止められるとしたら、圧倒的なまでの力が必要だ。

 それこそ、SSSクラスの。

 そういう意味では、フェルの存在は異質だ。


 だが、そのフェルをもってしても、今回の騒動は解決できない。

 解決できるのは、俺たちだけだ。

 だから、俺たちは町に潜り込む方法を模索している。


「戦場を突っ切るのか?」


「突っ切るしかないっすね」


「やっぱり、それしかないか」

 

 ゴレタは頷く。


「今更だけど、遠回りできないか?」


「その間に、期限を迎えます。そうなったら、こっちも危険です」


「人間側か、ハウンド側か、どちらかを頼るしかないのか」


 スラゾウは頷く。


「どうする?」


 見るからに殺気立っているため、どちらにも近寄りたくなかった。

 ただ、町に入るためには、戦場を突っ切らなければならない。

 町への出入りを妨げるように、両軍は対峙しているからだ。


 本当に選択肢は、それ以外にないのか?


「いや、第三の選択肢がある」


「第三の選択肢?」


「アリスを始めとした連中だ」


「そいつらに助けを求めるんですか?」


「そいつらの通った道を利用するんだ」


 俺は指摘する。


「問題は、どこにあるのか?」


「状況上、この丘のどこかっすね」


「ここ以外、それらしい場所はないから、間違いないだろう」


「ここでも、どこに?」


「たぶん、ふもとだ」


 俺は示す。


 根拠は、フェンリルの存在。

 町の中に護送する際、秘密裏にことを運ぶ必要がある。

 そうなると、ワームにより作り出したトンネルが浮かび上がる。


 結果を言うと、予想は当たっていた。

 手分けして探すと、丘のふもとにあった。

 草木により隠されているものの、トンネル状の横穴。


 状況上、ドーソンの別荘に通じる道を思い出すかもしれない。

 ただ、双方は別物だ。

 あちらは人間の手によるものだが、こちらは魔物の手によるものだ。


 要するに――


「この先は、危険だ。それでも、進むしかない」


 荷物からランプを取り出すと、火をつける。 

 襲撃に備えて、ゴレタに持ってもらう。

 役割を元に戻したのは、ゴレタの体力を温存させるためだ。


 ワームにより作り出されたトンネルは、暗かったものの狭くなかった。

 フェンリルを運び込む際に利用した以上、当然かもしれない。

 襲撃を警戒しながら、奥に進んでいく。


 奥に進んでも、環境に変化はなかった。

 暗いものの、狭くない。

 視界の暗さに慣れてきたため、進む速度を上げる。


「うん?」


 俺は立ち止まる。

 距離的には、残りは半分ぐらいだろうか。

 警戒は無用だと、思い始めたころだ。

 道は、無数に分岐した。


「どれにする?」


「どれでも、変わらないですね」


「どれでも、変わらないっすね」


「少しは考えろよ」


「考えても仕方ないですよぉ」


「何しろ、敵がいるんすから」


 実際、その通りだった。

 適当に選んだ道を進み、振り返ると行き着く先は同じだった。

 そこには、たくさんの魔物が待ち構えていた。


「無駄な選択を強いるなよ!」


 愚痴ったものの、意味のない分岐ではなかった。

 少なくとも、ここを住処にしている魔物にとっては。

 なぜなら、納得できる見た目だったから。


「アリ……巣作りか」


 開けた場所にいる魔物は、アリに似ている。

 ただ、俺の知っているものとは、根本的に異なる。

 犬ぐらいの大きさなんだ。


 もちろん、情報は大切だから、敵を調べてみる。


「〈異世界博士〉の効果により、対象の情報を把握する」


 俺は宣言する。


『〈異世界博士〉の指定効果、発動』


 脳裏に言葉が響き、虚空に文字が浮かぶ。


 【ステータス】


 クラス・ジャイアントアント

 ランク・G

 スキル・暗視F 巣作りF 隷属A

 エクストラスキル・なし


 【パラメーター】


 攻撃力・G(プラス補正)

 防御力・G(プラス補正)

 敏捷性・G(プラス補正)


「Gランクのジャイアントアント……もちろん、アリスの配下だ」


「語感がよくないですね」


「そういう感想?」


「それ以外、どう反応しろと?」


「いや、突っ込まれても、困るんだけど」


 スラゾウは笑う。


「それより、どう対応しよう」


「道をふさがれてる以上、戦うしかないっすね」


「戦うとしても、方法は?」


「オレが火を〈形成〉して、一気に殲滅する、とか」


「敵が薪代わりになるから、下手すると巻き込まれるぞ」


 ゴレタは頷く。


 敵は、戦力的には脅威ではない。

 ただ、状況的には脅威なのだ。

 なぜなら、数により押し切られる可能性が高いからだ。


 勝利に限れば、トンネルに火をつければいい。

 巣を焼き尽くし、敵を全滅できる。

 ただその場合、町にたどり着けなくなる。


 火に限らず、土の〈形成〉も警戒が必要だ。

 土を〈形成〉すると、トンネルのどこかに穴が開く。

 最悪、トンネルの崩落に巻き込まれる。


 いずれの選択にもリスクはあるから、悩ましいところ――

 読んでくださって、ありがとうございます。

 ブックマーク等の応援、ありがとうございます。


 丘のシーンを描いた時、感傷的になりました。

 その理由は、不明です。

 その時のタロウの心境は、作者の心境を反映しています。

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