第42話 コボルトとジャイアントワーム
前回のポイント・ジャイアントワームに襲われた!
罠にはまった、俺たち。
どうする?
「ご主人、飲み込まれたコボルトは、他にもたくさんいます!」
「兄貴、次々とコボルトが飛んでくるから、後ろに下がるっす!」
「わかった、距離を取るぞ!」
ポーン! ポーン! ポーン!
間の抜けた音が連続する。
ワームの尻から、コボルトが飛ばされる際のものだ。
コボルトの弾丸は、俺たちが盾にした木々にぶつかる。
本当に警戒するのは、連携。
そう思ったものの、杞憂に過ぎなかった。
大半のコボルトは、瀕死状態だから。
「実質的に仲間を殺してないか?」
「ワームからすると、俺たちのせいなんすよ」
「責任の押し付けだろ!」
俺は呆れる
「ご主人、油断は禁物です」
「攻撃も、連携も失敗なのに?」
「相手の目的は、木々をなぎ倒すことです」
「どうして?」
「木々をなぎ倒せば、地中から好きなように攻撃できます」
「まずいぞ!」
直後――
ドーン!
俺の真下の地面が、爆発したように割れる。
それに伴い、ワームの口が出てくる。
「当たれ!」
俺は、スラゾウスピアを振り下ろす――
「―――!」
ワームは、地中にもぐる。
直後――
ドーン!
今度は、ゴレタの近くの地面が、爆発したように割れる。
もちろん、ワームの口が出てくる。
「潰れろ!」
マッドゴレタが、拳を振り下ろす――
「―――!」
ワームは、地中にもぐる。
「モグラ叩きかよ!」
モグラ叩きじゃない。
こっちは、不意の攻撃を避けながら、叩くしかない。
対してあっちは、地面にもぐりながら、隙を突けばいい。
そう、圧倒的に敵が有利なんだ!
観察の間も、ワームの攻撃は続く。
地中からの攻撃に、俺たちはあたふたしている。
このままだと、隙を突かれてやられてしまう。
「どうする?」
よく見ると、ゴレタよりも俺のほうが狙われている。
さらにその狙いは、俺に限ると正確。
俺を恨んでいる?
「俺ばかり正確に狙われてる。――どうして?」
「前世の行いですかね!」
「カルマの問題っすね!」
「前世って何だよ! カルマって何だよ!」
俺の言葉は、空しく響く。
「強引に倒す? 一度逃げる? ――どっちだ?」
時間の都合上、選択は前者のみ。
幸運を祈って、敵を叩くしかない。
こんなことなら、木々が無事の間に対応したのに――
「木、ね。燃やして、即席のバリケードを作ってみるか」
荷物から取り出したランプを利用して、なぎ倒された木々に火をつける。
それも、自分たちを囲むように。
こうすれば、攻撃の地点を絞れる。
細工を施すのと、攻撃を受けるのと、同時――
「えっ?」
予想と異なるのは、攻撃の地点。
割れた地面は、周囲じゃなく周辺。
要するに、俺じゃなく、炎のバリケードに。
地上に出たワームは、炎に突っ込む。
もちろん、炎は体に燃え移る。
ワームはのた打ち回りながら、地中に戻っていく。
「どうして――」
馬鹿な真似を?
いや、違う。
ワームは、馬鹿じゃない。
「ワームは、地中だとは熱によって、対象を感知してるんだ!」
「憶測ですよね?」
「結果論っすね?」
スラゾウとゴレタは反論する。
憶測ではないし、結果論でもない。
最初にコボルトを狙ったのは、このため。
もちろん、俺たちを狙う時に邪魔だから。
コボルトを木々をなぎ倒すために利用したことこそ、結果論。
これなら、攻撃の回数と精度の違いも説明がつく。
ゴレタよりも、俺とスラゾウのほうが熱を発しているんだ。
「ほんとにそうですかね」
「根拠を薄く感じるっす」
俺の説明に対して、スラゾウもゴレタも納得しかねる様子。
ただ、状況はそう示している。
なぜなら、ワームの攻撃は完全に止まっているから。
「試してみればわかる」
俺は手当たり次第に、なぎ倒された木々に火をつける。
炎を警戒しているらしく、ワームは地上に出てこない。
そのため、俺は燃え尽きそうな木々を穴に蹴り込む。
もちろん、燃やすためではなく、燻すため。
「来る!」
熱と煙に耐えられなくなったらしく、ワームは地上に出てくる。
それも、全身。
一度、状況を立て直すつもりのようだ。
この機会を逃してはならない。
俺とゴレタは手分けして、火のついた木々を穴に落としていく。
当然、逃げるための穴をふさいでいるんだ。
「これなら、簡単には逃げられない。それでも逃げるなら、無視して突っ切る」
追い詰められたワームは、こちらに尻ではなく口を向けた。
「どうして?」
次の瞬間――
土やら、石やら、木やら、大量に飛んでくる。
「ゴレタ、前面に立ってくれ」
「了解」
炎のバリケードとマッドゴレタの壁により、攻撃を防ぎ切る。
だが、それは牽制に過ぎない。
本命は、次。
『エクストラスキルの兆候を確認しました』
警告が、浮かぶ。
「大技が来るぞ!」
ワームは勢いよく息を吸う。
それに伴い、吸い寄せられる。
掃除機に吸い取られる、ゴミみたいに!
ワームの吸引力は、想定を超えている。
それにより、残っていた木の火も消えている。
それどころか、コボルトを含めたすべてが、吸い込まれている。
顔はともかく、口は頑丈らしい。
いろいろ吸い込んでいるのに、ワームの吸引は続いている。
【データベース・エクストラスキル〈吸引〉】
正直、評価の難しいスキルだ。
使い道に乏しいからだ。
もちろん、実戦向きではない。
比較的珍しいスキルだから、使われた場合、儲けものと考えよう。
「今回も、役に立たない……」
「ご主人、どうします?」
「兄貴、どうするっす?」
「攻撃を利用して、ワームを直接叩く!」
〈吸引〉に逆らわず、むしろ勢いに乗って、俺たちは突っ込む。
だが、当然のように、敵は待ち構えている。
ワームの口は、俺たちを食い殺そうと、大きく開く!
それに飲み込まれる前に、俺たちは次の行動に移る。
「スラゾウ、投石器になってくれ」
「了解」
スラゾウスリングを構えると、拾っておいた石を投げる。
もちろん、弱点の顔、それも目を狙って!
ブン!
石は鋭い音を残して、ワームの目にぶち当たる。
「ウェェェ!」
悲鳴が上がる。
弱点への攻撃に伴い、〈吸引〉が止まる。
それに合わせて、ゴレタは拳を振るう。
強烈な打撃に、ワームはもだえる。
「スラゾウ、剣に変化してくれ」
「了解」
もだえているワームの首元に、俺は近づく。
そして、スラゾウソードを振り下ろす。
ザシュ!
「ウェェェ?」
意味不明な言葉を残して、ワームの首は堕ちる。
しばらくして、光に包まれる。
どうやら、ワームは死んだらしい。
「とりあえず、危険地帯を抜けよう。それから、休憩だ」
俺たちは頷き合う。
読んでくださって、ありがとうございます。
ブックマーク等の応援、ありがとうございます。
ジャイアントワーム戦は、倒すのに工夫を施しました。
簡単に倒してしまうと、味気ないと思ったからです。
これにより、タロウの洞察力のすごさが強調できました。




