第41話 ボードレスへの旅路
前回のポイント・旧街道は、アリスの配下の魔物に抑えられていた!
人型の犬が、周囲を警戒している。
ゴブリンに似た雰囲気があるから、いわゆる亜人だろう。
見た限りでは、ゴブリンより弱そう。
ゴブリンに比べても体は小さいし、背も低い。
それに、火を噴きそうにも、水を吐き出しそうでもない。
持っている武器も、そこらへんに落ちている木の枝。
ただ、実際のところは不明。
きちんと調べる必要がある。
そもそも、魔物の情報は前提条件だ。
「〈異世界博士〉の効果により、対象の情報を把握する」
俺は宣言する。
『〈異世界博士〉の指定効果、発動』
言葉が響き、文字が浮かぶ。
【ステータス】
クラス・ノーマルコボルト
ランク・G
スキル・警戒G 隷属A
エクストラスキル・なし
【パラメーター】
攻撃力・G-(プラス補正)
防御力・G-(プラス補正)
敏捷性・G-(プラス補正)
【ステータス】にも、【パラメーター】にも、目を引く点はない。
強いて挙げると、〈警戒〉か。
文字からして、敵を察知しやすくなるスキルだろう。
実際、コボルトは見張り役だ。
元から戦力として、期待されていないんだ。
その証拠に、強化のスキルが見当たらない。
ただ、どこでも目にするから、数だけは多かった。
その規模は、ゴメスが率いていた盗賊団と同程度。
要するに、五十前後。
「どうする?」
「戦いを避けるのは無理ですから、戦いましょ。問題は、その方法ですね」
「蹴散らせればいいんだけど、可能っすかね? 無理だと、一苦労っすよ」
コボルトは見張りのために、そこらへんに散らばっている。
そのため、普通は各個撃破。
ただ、〈警戒〉の性質上、実行は困難だろう。
下手に見つかると、数により押し切られる。
押し切られなくても、戦闘専門の仲間を呼ばれる。
各個撃破ではなく、同時殲滅が望ましい?
「複数の群れを同時に攻撃して、一気に潰す」
「妥当ですね。早速、準備しましょ」
「準備を終えたら、戦闘っすね」
先手を打つための準備は――
マッドゴレタは、向かって左の群れに向かう。
スラゾウスピアを構えた俺は、向かって右の群れに向かう。
叩きのめすことではなく、追い払うことを目的にした作戦だ。
「よし、行くぞ!」
ゴレタは、コボルトの群れに突っ込む。
俺も、コボルトの群れに突っ込む。
警戒を上回る襲撃に、コボルトたちは混乱している。
俺たちの攻撃は、面白いぐらいに当たる。
ゴレタの腕は、コボルトを吹っ飛ばす。
俺の槍は、コボルトを弾き飛ばす。
予想した通り、コボルトはゴブリンより弱かった。
テッドよりも、アリスのほうが補正は強いはずなのに。
そのくせ相手にならないのだから、根本的に弱いんだ。
「予想以上に弱いぞ。これなら、すぐに追い払える!」
思い返してみると、強い魔物とばかり戦ってきた。
本来、これぐらいの相手が適度なんだろう。
群れの半分ほどを蹴散らすと、コボルトは逃げ出す。
狙い通り。
逃げるやつは追わない。
留まっているやつを追い払う。
ほどなく、コボルトの集団は統制を失う。
無目的に、あっちへこっちへ逃げている。
これなら、無事に抜けられそう。
そう思った時――
ドーン!
地面が爆発する。
「何だ!」
地面は、爆発していなかった。
爆発したように、見えただけだ。
突然地面から、魔物が現れたんだ。
「ミミズ?」
その魔物は、ミミズによく似ている。
くねくねと動いているし、地面に潜んでいたから。
ただし、とんでもなく大きかった。
それこそ、シーサーペントぐらいありそう。
巨大なミミズは、コボルトを飲み込んでいる。
魔物ごとの守備範囲が、決まっているらしい。
結果的とはいえ、コボルトはそれを破ってしまったんだ。
同士討ちしている間に、情報を集める。
「〈異世界博士〉の効果により、対象の情報を把握する」
俺は宣言する。
『〈異世界博士〉の指定効果、発動』
言葉が響き、文字が浮かぶ。
【ステータス】
クラス・ジャイアントワーム
ランク・E-
スキル・地耐性E(風耐性-E) 穴掘りE 隷属A 身体強化D
エクストラスキル・不明
【パラメーター】
攻撃力・E-(プラス補正)
防御力・E-(プラス補正)
敏捷性・F-(プラス補正)
「Eランクのワーム……むろん、アリスの配下だ」
飲み込まれたコボルトは、食われた?
それにしては、悲鳴が聞こえなかった。
もっとも、その前に意識を失ったのかもしれない。
「ワームが、コボルトに夢中になってる間に突っ切ろう。――よし、今だ!」
コボルトが飲み込まれるのを横目に、俺たちは走り出す。
飛び出したままのワームとの距離は、徐々に開く。
通り抜けられたようだ。
そう思った時――
ドーン!
地面が爆発する。
むろん、気のせいだ。
実際は、地面からワームが飛び出したんだ。
俺たちの進行を妨げるように。
「もう一匹いるのか!」
二匹いるわけじゃなかった。
前のくねくねと、後ろのくねくねと、連動している。
要するに、とてつもなく大きい一匹のワームなんだ。
「だから、ジャイアントワームなのか」
「ご主人、納得してる場合じゃないですよ!」
「兄貴、すぐに対応しないとまずいっすよ!」
スラゾウとゴレタは警戒を促す。
「このまま、逃げ切れないか?」
「無理ですね」
「無駄っすね」
「どうして?」
「前と後ろと、よく見比べてください」
「見比べるとわかるけど、逆なんすよ」
勘違いしていた点がもう一つあった。
頭と思ったら、尻。
尻と思ったら、頭。
要するに、ワームの狙いは、俺たちなんだ。
ワームの頭に当たる部分が、こっちを向く。
すると、口らしきものが見える。
そこには、刃のような歯が生えている。
「スラゾウ、ゴレタ、飲み込まれないように注意しろ!」
たとえ飲み込まれても、一緒なら対応できるから問題ない。
だが、個々に狙われるから、脱出は困難だろう。
「これが顔なら、攻撃して撃退だ。――仕掛けるぞ!」
顔への攻撃に対して、ワームは慌てて逃げる。
地面に。
正確には、すでに掘られた穴の中に隠れたんだ。
ただ、逃げる際にかすったらしく、体液がこぼれている。
軽傷とはいえ、弱点らしき顔への攻撃だ。
「このまま、引っ込む?」
予想は半ば当たり、半ば外れる。
顔は引っ込んだまま、尻がこちらに向かってきたから。
やっぱり、顔は弱点なんだ。
「ゴレタ、迎え撃つぞ!」
俺とゴレタは構える。
迫ってくるワームに向かって。
だが、迎撃は失敗した。
なぜなら、こちらの射程外から、攻撃を受けたから。
ワームの尻が広がると――
ポーン!
コボルトが、飛び出す。
投石機による投石と同程度の威力だろう。
俺とゴレタは木を盾にして、コボルトの弾丸を避ける。
木にぶつかったコボルトは、死んでいないらしく身動きする。
「生きてるのかよ!」
コボルトの表情は――
「生きてて悪いのかよ!」
恨めしげ。
当たり前か。
殺してしまえば、アリスの命令を守れなくなる。
コボルトはともかく、ワームは粛清の対象になる。
口じゃなく尻なんだから、取り込んだだけ。
もちろん、俺たちへの攻撃に利用するためだ。
俺たちは、その作戦にまんまと引っ掛かったんだ。
読んでくださって、ありがとうございます。
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ボードレスへの道は、短いものの険しいです。
そのため、散策ではなく、旅路となります。
それは、心強い仲間がいるために選択できました。




