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第38話 反撃開始

 前回のポイント・湖の怪物に襲われた!

 反撃開始だ。


「ゴレタ、〈形成〉してくれ」


「相手は熱に弱いから、屋敷の火を〈形成〉するんすね?」


「いや、そこらへんにばら撒かれた水だ」


「火じゃなく、水?」


 ゴレタは首をひねる。


「火を〈形成〉しても、敵にたどり着く前に狙い撃ちされる」


「そうだとしても、水の理由は?」


「目的は攻撃じゃない、防御だ。水の壁なら、水の攻撃を防げるはずだ」


 ゴレタは大きな水溜りに近づくと、〈形成〉を実行する。

 予想した通り、液体も可能だった。

 水の塊と化したゴレタは、壁として前面に立つ。


 それに前後して、シーサーペントの攻撃は再開された。

 一箇所に集まっているため、複数の水弾と水刃が飛来する。

 

 だが、聞き慣れた音はしなかった。

 ウォーターゴレタにより、いずれも受け止められたのだ。


「ゴレタ、問題ないか?」

「問題ないっす。――さぁ、どんどん来るっすよ!」


 ゴレタは挑発する。


 それに対して、シーサーペントは攻撃を繰り返す。

 だが、その一つとして、水の壁と化したゴレタを突破できない。

 それどころか吸収され、ゴレタの水の体は維持されている。


「防御に続いて、攻撃。スラゾウ、投石器になれるか?」


「原始的なものなら、可能だと思います」


「それなら、変化してくれ」


「ただ、大きいですよ?」


「むしろ、大きくないと意味がない」


 スラゾウが変化したのは、もちろん――


 攻城兵器として使われる、投石機じゃない。


 対人武器として使われる、投石器。


 手持ちとはいえ大きいそれに、焼け落ちた屋敷の破片を載せる。


 俺はウォーターゴレタの壁越しに、スラゾウスリングを撃つ。


 ブン!


 音を立てて、屋敷の破片は飛ぶ。


 ほどなく、シーサーペントの巨体の一部に当たる。


「グェェェ!」


 悲鳴が上がる。


 シーサーペントは、もだえている。

 痛みよりも、熱さに苦しんでいるんだ。

 その証拠に、ぶつかった箇所は見る見るうちに赤くなる。


「次々いくぞ!」


 もだえているシーサーペントに、投石を続ける。


 一発、二発、三発、四発、五発。


 そのつど、巨体は震える。


「このまま押し切るぞ!」


 だが、シーサーペントは馬鹿ではなかった。

 投石から逃れるために、湖に沈んだんだ。

 当然、その後の攻撃は湖に落下して、不発に終わる。


「出てきたところを叩く。スラゾウ、ゴレタ、もう少しだけ我慢してくれ」


 スラゾウとゴレタは頷く。


 予想とは異なり、シーサーペントは浮上してこない。

 ただ、こちらに焦りはない。

 水中に特化していない以上、ずっと潜っていられないからだ。


 警戒しながら、浮上を待つ。

 体感は長かったものの、実際は長くなかっただろう。

 水面に波紋が広がると、巨体は姿を現す。


 予想を上回ったのは――


「跳び上がった!」


 シーサーペントは、空に向かって跳び上がる。


 一気に浮上して、その力を利用したのだろう。


 無理しているらしく、その顔は歪んでいる。


 一見すると無駄な行動の意味は――


【エクストラスキルの兆候を確認しました」


 警告が、浮かぶ。


「大技を使用するための時間稼ぎだ。――食い止めろ!」


 阻止しようと、俺は投石を続ける。


 発射したのは三発、そのうち命中したのは一発のみ。


 それじゃあ、シーサーペントの行動を阻止できない。


「ゴレタ、スラゾウ、伏せろ!」


 直後――


 シーサーペントは、吐き出す。


 信じられないぐらい大量の水を。


 水弾の雨が降り注ぐ。

 そのさまはまるで、シーサーペントが泣いているみたい。

 涙と異なるのは、幻想的ではあるものの感動的ではないこと。


 ウォーターゴレタは、膝をついている。

 ただ、何とか耐えたらしく、体は維持されている。

 派手な見た目に反して、威力は低いのか?


「突破されるかと思って、ひやひやしたよ――そっちか!」


 今の攻撃は、ゴレタに対するものじゃなく、屋敷に対するものだ。

 実際、屋敷の火事は鎮火している。

 それに伴い、俺たちはシーサーペントへの効果的な攻撃手段を失う。


 俺は投石を再開したものの、効果はない。

 最初と同じく五発当たったのに、シーサーペントは難なく耐えたからだ。

 熱には弱いが、痛みには弱くないのだ。


【データベース・エクストラスキル〈水弾乱舞(パレットレイン)〉】


 このスキル自体は、さほど脅威ではない。


 単純に水弾の数を増やしただけだからだ。


 対抗手段は、頑丈な家屋に閉じこもることだ。


「どうする?」


 だが、考える暇を与えられなかった。


『エクストラスキルの兆候を確認しました』


 再度、警告されたからだ。


「今度は、俺たちを狙ってくる。スラゾウ、ゴレタ、屋敷の後ろに回るぞ」


 屋敷の後ろに回ると、ゴレタは前に立つ。

 その後ろに、俺とスラゾウは控える。

 二重の壁なら、耐えられるか?


 直後――


 シーサーペントは、吐き出した。


 やはり、信じられないぐらい大量の水を。


 水刃の雨が降り注ぐ。

 今度は、ゴレタも耐えられない。

 全身を切り裂かれ、水の体を維持できなくなる。


【データベース・エクストラスキル〈水刃乱舞(ブレードレイン)〉】


 このスキル自体は、さほど脅威ではない。


 単純に水刃の数を増やしただけだからだ。


 対抗手段は、頑丈な壁に隠れることだ。


「ご主人、どうします? 戦いますか、逃げますか」


「兄貴、どっちにしても、対策しないとまずいっす」


「さて、どうしよう?」


 今のところ、敵の攻撃は止まっている。

 二度、エクストラスキルを使用したため、疲弊しているんだ。

 ただ、牽制の投石程度は問題ないらしく、こちらに近づいてくる。


 周囲は、二度の大技により穴だらけ。

 中には、トンネルになっているところもある。

 景色の変化は、〈 地獄の猛火(ヘルファイア)〉を食らった時を思わせる。


「トンネル……いけるかもしれない。ゴレタ、土を〈形成〉してくれ」

「了解!」


 瞬く間に、人型の土の塊が出来上がる。

 ただし、思った以上に小型だ。

 敵と同じく、味方も疲弊しているのだ。


「ゴレタ、時間を稼いでくれ。その間に、俺があいつを討つ」


 俺とスラゾウは、ゴレタの〈形成〉により出来上がったトンネルに下りる。

 それから、水弾と水刃により出来上がった別のトンネルに移る。

 そうして、敵に悟られないように少しずつ近づく。


 移動の間も、すっかり耳慣れた音が連鎖する。


 ドーン! パーン! ドーン! パーン! ドーン! パーン!


 攻撃は執拗だ。

 早くしないと、ゴレタが持たない。

 

 しばらくすると、シーサーペントの足元に着く。

 頭上は開けているから、地上に出られそうだ。


「スラゾウ、剣に変化してくれ」

「了解」


 タイミングを見て、地上に出る。

 ゴレタへの攻撃のため、敵の首の位置は下がっている。

 そこに、狙いをつける。


「グォォォ?」


 突然の襲撃に、シーサーペントは後ずさる。


 だが、それより早く、俺の一撃は目標を捉える。


 ザン!


 確かな手ごたえ。


 シーサーペントの首は、宙を舞う!


 巨体が、倒れる。

 それに合わせて、周囲に光が満ちる。

 どうやら、シーサーペントは死んだようだ。


「俺たちの勝利だ!」


 その言葉に合わせるようにして――


「「おぅ!」」


 スラゾウとゴレタは声を上げる。

 読んでくださって、ありがとうございます。

 ブックマーク等の応援、ありがとうございます。


 今回のポイントは、熱を弱点とする敵に、火ではなく水で対抗することです。

 もちろん、奇をてらったわけではありません。

 こちらのほうが、有利だと思ったのです。

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設定を変えた別バージョンは、全部書き直してます。
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