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第36話 桃色の脅威

 前回のポイント・黒幕のアリスは、逃げた!

『エクストラスキルの兆候を確認しました』


 不穏な内容が、文字として浮かぶ。


「いきなり? スラゾウ、ゴレタ、ラミアを止めろ!」


 俺たちは、突っ込む。

 だが、たどり着く前に来た。

 ラミアのエクストラスキルの効果が。


 視界に、変化があった。

 ピンク色の靄が発生したんだ。

 まるで、桃源郷に迷い込んだみたい。


「ラミアは?」


 ラミアは、いなかった。

 代わりに、エリザがいた。


「はぁ?」


 俺は自分の目を疑う。


 そのエリザは、恋人みたいに微笑んでいる。


「どうなってる――」


 俺の言葉は、途切れる。


「マザー!」


「母ちゃん!」


 スラゾウとゴレタの呼び声によって。


「お前たち、何を言ってる? スラゾウ、ゴレタ、返事をしろ!」


 俺の呼びかけに、両者は反応しない。


「エリザ、マザー、母ちゃん……認識が上書きされたのか!」


 俺はその可能性に行き当たる。


 俺の場合、エリザの姿を取っているのは、一応ヒロインだからだろう。


「ということは、つまり――」


 エリザに見えるラミアに、俺は攻撃を仕掛ける。


 だが、無理だった。

 心理的な枷があるみたい。

 攻撃したくないんじゃない、攻撃できないんだ。


「無敵かよ……」


 俺は呆然とする。


【データベース・エクストラスキル〈誘惑(テンプテーション)〉】


 特定の対象に、幻惑を見せるエクストラスキル。


 このスキルの恐ろしいところは、わかっていても防げないことだ。


 ゆえに、発動される前に対応するのが望ましい。


 対抗手段は、汚染耐性D以上、精神耐性E以上を推奨する。


 ただし、能力の特性上、それ以上の耐性を有していても通じる場合がある。


「今回も、役に立たない……」


 俺はため息をつく。


 ラミアは、初手で〈誘惑(テンプテーション)〉を使用した。

 それ以外、勝利は不可能だから。

 〈隷属〉しているものの、〈狂化〉していないからこそできる判断だ。


 スラゾウとゴレタとは違い、俺は完全に〈誘惑(テンプテーション)〉されていない。

 もし全員〈誘惑(テンプテーション)〉されていたら、全滅もありうるだろう。

 Gランクとはいえ、〈汚染耐性〉のおかげだ。


「どうする?」


 ラミアは、〈誘惑(テンプテーション)〉に集中しているために、身動きが取れない。

 だが、スラゾウとゴレタは、仲よく呆けている。

 床には、偽のルイスが気持ちよく眠っている。


「偽のルイス……いける!」


 俺は思いつくと同時に、行動に移る。


 床に寝ている偽のルイスを、叩き起こしたのだ。


「どうした? お前、まだ帰ってなかったのか……」


「あいつは、人に化けた魔物だ! このままだと、食い殺されるぞ!」


「魔物に食い殺される? あの占い師、魔物だったのか!」


 偽のルイスは立ち上がると、ラミアに向かって突っ込む。


 〈誘惑(テンプテーション)〉を発動した際、寝ていた偽のルイスは、影響を受けていないのだ。


 偽のルイスの突進を受けたラミアは、吹っ飛ぶ。

 勢いよく壁にぶつかると、ゆっくり立ち上がる。

 そこに、偽のルイスが追いすがる。


 ラミアは迎え撃つものの、満足に戦えない。

 〈誘惑(テンプテーション)〉を、継続する必要があるからだ。

 そのため、本来なら相手にならない相手に負けつつある。


 選択を迫られたラミアは、〈誘惑(テンプテーション)〉を解く。

 それに伴い、景色が元に戻る。

 だが、再び〈誘惑(テンプテーション)〉の発動を試みる。


『エクストラスキルの兆候を確認しました』


 次の段階に移る前に、俺はラミアに飛び掛る。


「クァ?」


 〈誘惑(テンプテーション)〉されているはずの俺の攻撃は、ラミアにとって予想外だ。


 隙を突かれたラミアは、床に転がる。

 当然、エクストラスキルの発動は妨げられる。


 俺に続いて、偽のルイスも跳躍した。

 偽のルイスの押し潰しを食らったラミアは、床に倒れる。


 肉弾戦とはいえ、テイマーの連続攻撃だ。

 さすがのラミアも、立ち上がれない。


 窮地に陥ったラミアは机の上のランプを取ると、それを自分の体にぶちまける。


「クァァァ!」


 おぞましい悲鳴が上がる。


 火が、ラミアの全身を包み込む。

 それに伴い、部屋に火が燃え移る。

 ラミアは自分が死んででも、俺たちを足止めするつもりらしい。


 実際、炎に包まれたラミアは、俺に向かって突っ込んでくる。

 辛くも避けると、ラミアは床に倒れる。

 さらに、火は燃え広がる。


「どうするんだ!」


「もちろん、逃げる」


「壁の穴は、魔物によってふさがれてるのに?」


 偽のルイスは慌てる。


「ラミア、君の選択は間違いだ。もっと命を大切にするべきだ」


「クァ!」


「できるだけ、苦しまずに亡くなれ。それが、俺からの助言だ」


「クァ?」


「ゴレタ、扉の前の瓦礫を〈形成〉して、部屋の外に逃げるぞ」


 俺の指示に、我を取り戻したゴレタは従う。

 扉の前の瓦礫が取り除かれると、俺たちは扉を蹴破る。


 部屋の外に出ると、ラミアは追いかけてこなかった。

 最後の力を振り絞り、屋敷に火を放ったのだろう。


「望まない最期は、勘弁ですね」


「たとえ死ぬとしても、満足したいっす」


「善処する。ただ、今は優先しろ。俺たちだけじゃなく、全員の脱出を」


 偽のルイスを含めた俺たちは、すぐに行動に移る。

 途中、ゴブリンたちと合流すると、一階に降りる。

 それから家人に火事を伝えると、屋敷の外に逃げ出す。


 的確に対応したために、犠牲者はいなかった。

 正体はラミアだった、占い師を除けば。

 燃え盛る屋敷を背に、俺たちは深々と息を吐く。


 こうして、俺の記憶すべき、異世界三日目は終わる。

 〈誘惑〉のスキルは、変化を設けるために使わせました。

 いつも同じように戦っていると、読者は飽きる、と思ったからです。

 もっとも、その試みがうまくいったのかどうかは、わかりません。

 一区切りついていますから、評価してくれるとありがたいです。

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覚醒テイマーの成り上がり
設定を変えた別バージョンは、全部書き直してます。
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