第33話 屋敷への潜入作戦
前回のポイント・ファイアゴレタは心強い!
一休みした俺たちは、歩き出している。
予備のランプを失うとまずいから、俺が持っている。
その代わりに、戦闘はゴレタに任せている。
「それにしても、〈形成〉できるのが固体に限らないとは、びっくりだよ」
「試してみたら、できたっす」
「個体に続いて、気体。液体は?」
「たぶん、できるっす」
「機会を見つけて、試してみよう」
ゴレタは頷く。
「〈変化〉といい、〈形成〉といい、ご主人との契約によるスキルは特殊ですね」
「珍しいのか?」
「どっちも、聞いたことはないです。ご主人が、異世界人だからですかね?」
「〈異世界博士〉はもちろん、〈変化〉と〈形成〉も唯一無二、か」
「ただ、未確認の可能性はあります」
「その場合、俺以外にも、異世界から転移した者がいることになるぞ」
「あくまで、可能性です。おそらく、いません」
スラゾウは頷く。
三つ目の開けた場所に着いたものの、三度目の襲撃はなかった。
それどころか、横じゃなく、上に通じる道がある。
「到着?」
「到着したみたいですね。でも、道はふさがれてたりして」
「道はふさがれてなくても、扉は閉まってるかもしれないっす」
道なりに進んでいくと、行き止まりに着く。
扉は閉まっていたものの、鍵はかかっていない。
元からなのか、アリスのおかげなのか、判断はつかない。
中に入ると、敵が待ち構えていた。
そういうオチもなかった。
変わったのは、空気だ。
「気づかないふりをしてたけど、結構臭かったよな?」
スラゾウとゴレタは頷く。
狭い、暗い、臭い。
コウモリ、ネズミ、虫。
通ってきた道は、下水道だろう。
階段を上ると、台所に出る。
そこは、無人だ。
時間的に、中途半端だからかもしれない。
「めぼしいものはありませんねぇ」
「お前、つまみ食いしようとしただろ?」
「とんでもない、全部いただこうと思ったんです」
俺は苦笑する。
「先輩じゃないけど、休憩したいっす」
「やっぱり、疲れたか?」
「兄貴も? それじゃあ、休憩しましょ」
俺は頷く。
ゴレタの提案に沿って、休憩を取る。
お菓子などは、台所から頂いている。
「潜入の次は、探索だ」
隠れ蓑改め、スラゾウマントをかぶり、探索を開始する。
魔物には気づかれたものの、一般人に気づかれるとは考えにくい。
魔物を警戒しながら、慎重に進む。
魔物どころか、人さえ行き当たらない。
ただ、幾度も声は耳にした。
隠れ家として利用しているため、家人は少ないらしい。
しばらく探索していると――
「お客様の様子は?」
「いつも通り」
立ち話をしているメイドに、興味を覚える。
「道具の悪用?」
「目的はエロ?」
「話に、興味を持ったんだ!」
メイドの話をまとめると、次の通り――
ルイスを始めとした面々は、全員二階にいる。
その中には、魔物であるゴブリンも混じっている。
「魔物をそばに置いてるんですね?」
「仲間をそばに置くのは当然だろ?」
「契約に〈隷属〉を用いる、外道とは思えないんですよ」
「仲間と下僕、思い入れの違いじゃないか」
スラゾウは頷かない。
「それより、どうする?」
挟み撃ちにされると、詰んでしまう。
だから、外に通じる扉をふさいだ後、二階に上がるべきだろう。
「いろいろ予想と異なるな」
「どういうことっすか?」
「屋敷に侵入したら、すぐにルイスと会えると思ってたんだ」
「勘違いっすね」
ゴレタは頷く。
実際のところは、侵入が判明していないだけだ。
「よし、動こう」
扉は、二つ。
表口と裏口。
閉ざすのは、裏口のみ。
もちろん、面倒だからだ。
「よし、閉ざそう」
扉のそばにある彫刻を動かして、扉の前に移す。
全員、協力したことにより、一分とかからずに終わる。
準備を整えたから、二階に上がる。
一階とは違い、二階は静まり返っている。
「静かすぎる」
「何かあったと、言いたいんですか?」
「おそらく、待ち構えてる」
「ゴブリンですね?」
「隠れるところは、たくさんある」
警戒しながら、先に進む。
中ほどまで進むと、通路は一本道になる。
向かって左には、部屋がある。
そこから、一歩踏み出す。
途端――
ヒュン! ヒュン! ヒュン!
矢が、飛んでくる。
狙いは正確じゃないものの、数は多い。
俺たちは、壁に身を隠す。
「やっぱり、待ち伏せしてたか」
遠目に、ゴブリンの群れが見える。
前衛は、盾を構えている。
後衛は、弓を構えている。
その奥が、ルイスの部屋だろう。
ルイスが姿を見せないのは、狙撃を警戒しているに違いない。
「ゴブリンとはいえ、陣形を崩すのは難しいだろう」
「相手は地の利を得てますから、余計難しいですよ」
「当然、突破には時間がかかるだろう」
「その間に、挟み撃ちされますね」
スラゾウは警戒する。
「兄貴、石の彫刻を元に〈形成〉して、オレが突破します?」
「押し切れればいいけど、押し切れなかったらまずいぞ」
「どうして?」
「一本道だから、助けに行くのも難しいんだ」
「賭けみたいだから、やめとくっす」
ゴレタは苦笑する。
「どうする?」
壁に隠れながら、辺りを見る。
目につくのは――
左の部屋、ゴブリンの群れ、奥の部屋。
「左の部屋……うまくいけば、ゴブリンをやり過ごせるぞ」
「どうやって?」
「スラゾウ、鍵に変化して、左の部屋の扉を開けてくれ」
「了解」
左の部屋には、当然のように鍵がかかっている。
ただ、単純なものだ。
スラゾウキーにより、すぐに開く。
部屋の中に入ると、バルコニーに出る。
バルコニーの手すりを伝って、前の部屋に移る。
さすがに次の部屋には、バルコニーからは移れない。
「ゴレタ、〈形成〉を使ってくれ」
「何を元に?」
「次の部屋に通じる、壁を元に」
「了解」
ゴレタの〈形成〉によって、壁に穴が空く。
その穴を通り、次の部屋に移る。
そこは、目的の部屋だ。
「ゴレタ、〈形成〉を解いて、その瓦礫を扉の前に積み上げてくれ」
「了解」
直後――
扉の前に、壁の瓦礫が積み上がる。
それに伴い、ルイスとゴブリンは分断される。
ゴレタは体を失う前に、木の机に跳びつく。
それに伴い、ゴレタは木の人型に戻る。
「嘘だろ……」
ルイスは呆然と立ち尽くす。
読んでくださって、ありがとうございます。
ブックマーク等の応援、ありがとうございます。
今回のポイントは、壁を〈形成〉により壊すことです。
これは、ルール破りです。
でも、できる以上、実行させました。




