第32話 暗闇の戦い
前回のポイント・タロウは、着実に成長している!
狭い道を通り抜けると、開けた場所に着く。
「うん?」
立ち止まったのは、異変を感じ取ったため。
そこには、ジャイアントバットの死体が転がっている。
縄張りを出たために、別の魔物の餌食になったようだ。
死体の状態から、歯による攻撃だとわかる。
ただ、見慣れた形とは異なるから、その相手はハウンドじゃない。
「ネズミ?」
遠目に見えるのは、巨大なネズミ。
ただし、カピパラのような、愛くるしさとは無縁。
動物じゃなく、魔物だからだろう。
「差別です」
「差別っす」
「お前らは別だよ」
俺は釈明する。
戦うにしても避けるにしても、情報を把握する必要がある。
「〈異世界博士〉の効果により、対象の情報を把握する」
俺は宣言する。
『〈異世界博士〉の指定効果、発動」
言葉が響き、文字が浮かぶ。
【ステータス】
クラス・ジャイアントラット
ランク・G
スキル・暗視G
【パラメーター】
攻撃力・G-
防御力・G-
敏捷性・G-
ジャイアントバットと、ジャイアントラット。
両者の能力は、ほとんど変わらない。
そのくせ、ジャイアントラットの一方的勝利に終わった。
ジャイアントバットは、地上戦に負けた?
「今度もGランクの上に野良だ……ジャイアントラット」
「楽勝ですかね? 違和感はありますけど」
「戦力的には楽勝だけど、状況的には苦戦っすかね」
スラゾウとゴレタは指摘する。
幾度も痛い目にあったため、俺たちは慎重だ。
それが、幸いする。
群れの奥に、黒い塊がある。
さっきと異なるのは、本当に単一ということ。
群れを率いるように現れたのは――
熊ぐらいの大きさの、超巨大なネズミ。
「なるほど、勝敗はボスの有無か」
俺は納得すると、情報を集め始める。
それによると――
クラス自体は、ジャイアントラットのまま。
ただし、ランクはG+。
スキルの中に、〈連帯〉という見慣れないものが含まれている。
戦力的には、ハウンドより上、ヘルハウンドより下といったところ。
ただ、場所を踏まえると、ヘルハウンドより厄介かもしれない。
何しろ、ここは敵の住処なんだから。
よく見ると、手下の能力も上がっている。
たぶん、〈連帯〉の効果だ。
その中身は、手下の能力を上げるものだろう。
「どうする?」
対案は、二つ。
ボスを狙い、部下を無視する。
部下を狙い、ボスを弱らせる。
検討する暇は、与えられなかった。
ボスが、突っ込んできたから。
手下を、前面に押し出して。
「来るぞ! ゴレタ、気をつけろ!」
俺の言葉に、ゴレタは身構える。
背後から、一体のジャイアントラットが忍び寄っていたから。
その狙いは――
「ゴレタじゃない、ランプ――」
俺の言葉は、消える。
視界とともに。
不意打ちにより、ランプを落とされたんだ!
「うっ――」
訪れた闇に、俺は息を呑む。
だが、体勢の立て直しさえ許されない。
明かりを失う寸前、目にしていたから――
ジャイアントラットの群れが、こちらに向かって突っ込んでくるのを!
「スラゾウ、盾になってくれ!」
「盾ですね? 了解!」
スラゾウシールドを構えると、俺は壁に向かう。
だが、その前に周囲から攻撃が加わる。
痛み自体はないものの、行動を妨げられる。
そうしているうちに、強烈な一撃を食らう。
「くっ!」
盾のために転倒は免れたものの、体勢を崩す。
そこに、ジャイアントラットが殺到する。
全身に、耐え難い重さが加わる。
全身の重さに苦しんでいると――
ボッ!
音を立てて、炎が広がる。
瞬く間に膨れ上がった炎は、人型になる。
「ゴレタ!」
ランプの火を利用して、ゴレタは炎の体を〈形成〉したに違いない。
炎の塊と化したゴレタは、両手を振り回す。
その攻撃に合わせて、悲鳴が上がる。
ジャイアントラットは、強い光に弱いみたい。
ほどなく、全身の重みがなくなる。
俺は盾を振り回しながら、ボスに近づく。
ゴレタの炎により、視界を確保できたんだ。
「食らえ!」
ファイアゴレタを警戒しているボスに、俺は盾を叩きつける。
強打されたボスは、地面に転がる。
無防備になったボスに、ファイアゴレタは跳びつく。
「グギャア!」
苦悶の声が上がる。
全身を炎に包まれたボスは、地面をのた打ち回る。
それに巻き込まれ、手下は次々と炎に包まれる。
悲鳴の連鎖は、長続きしなかった。
ボスの死に伴い、群れは壊滅したからだ。
「兄貴、オレの体の炎が消える前に、ランプに明かりをつけて!」
「わかった!」
予備のランプを取り出すと、明かりをつける。
再び光を取り戻すと、残ったジャイアントラットは逃げていく。
ほどなく、人型の炎も消える。
核のみ残ったゴレタに、焚き火用の薪を近づける。
すると、瞬く間に人型に戻る。
「スラゾウ、ゴレタ、まだいけそうか?」
「いけそうです」
「いけそうっす」
スラゾウとゴレタは頷く。
「一休みしたら、先に進もう。もし危なそうなら、その時は引き返そう」
俺は判断を下す。
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ファイアゴレタの誕生です。
〈形成〉の元ネタは、超人気漫画「ワンピース」です。
ちなみに、わたしは大ファンです。




