表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
28/137

第28話 湖畔地帯への遠出

 前回のポイント・アリスと知り合った!

 屋敷の前に戻ると、エリザたちが待っている。

 合流した俺たちは、敷地の外に出る。

 情報を交換しつつ、昼食のために宿に向かう。


「そう言えば、タロウが娘の相手をしている間に、母親がこっちに来たわ」


「どんな印象だった?」


「よくわからない。――そうでしょ、スラゾウ、ゴレタ?」


 エリザの問いに、スラゾウとゴレタは頷く。


「よくわからないのは、調査を邪魔されたせい?」


「それ以前の問題。ドーソンによると、占い師は口が不自由らしいの」


「占い師なのに?」


「占いの際は、娘に付き添ってもらうの」


「そう装ってるだけじゃないのか?」


「その可能性は、否定できない。ただ、要望の書かれた紙を持参したわ」


 エリザは証言する。


「それなら、占い師とドーソンは、コンダクターだった?」


「もちろん、どっちも違うわ」


「〈異世界博士〉の情報に間違いはない、か」


 引っ掛かるものがあったけど、頭の片隅に追いやる。


 宿に着くと、朝食と同じく角の席に座る。

 朝食と異なるのは、フェルの席にエリザが座っていること。


「正直に言ってしまうと、タロウを止められるとは思っていないわ」


「本当に?」


「だから、こうして協力しているでしょ?」


「この後、遠出するとしたら、どうする?」


「できるのは、助言ぐらいね。無茶しても、無理をしないこと」


「その違いは?」


「可能と不可能と、異なるでしょ。助言ぐらいは、聞き入れて」


 俺は頷く。


 明るい雰囲気のまま、朝食を終えると――


「本当に遠出するつもりなら、くれぐれも気をつけてね!」


 そう言い残して、エリザは宿を後にする。


「これから、遠出します」


 エリザを見送った俺たちは、トマスに遠出を告げる。

 それに絡み、遠出するための荷物を用意してもらう。


 皮袋を背負い、スラゾウとゴレタを両肩に乗せる。

 重量は増えたのに、むしろ軽く感じる。

 期待を込めて、自分を含めた三名の能力を確認する。


「〈異世界博士〉の効果により、対象の情報を把握する」


 俺は宣下する。


『〈異世界博士〉の指定効果、発動』


 言葉が響き、文字が浮かぶ。


 【ステータス】


 ネーム・タロウ

 クラス・イレギュラーコンダクター

 ランク・G

 スキル・異世界博士G 汚染耐性G 身体強化G

 エクストラスキル・不明


 ネーム・スラゾウ

 クラス・イレギュラースライム

 ランク・F

 メインスキル・変化F 言語能力F

 エクストラスキル・不明


 ネーム・ゴレタ

 タイプ・イレギュラーゴーレム

 ランク・F

 メインスキル・形成F 言語能力F

 エクストラスキル・不明

 

「Gランクは、俺だけかよ……」


「ご主人、努力しましょ?」


「兄貴、鍛錬しましょ?」


 俺はがっかりする。


「出発しよう!」


 宿、ひいては町を後にすると、東に向かう。

 トマスによると、道なりに進めば到着するそう。


 予想に反して、道のりは気楽。

 昼の時間帯に、村が見えてくる。


「今回は、順調だな?」


「ご主人、ここからが大変ですよ」


「どうして?」


「行く時がよいなら、帰る時は悪いと、決まってます」


「迷信だろ。――ゴレタも、そう思うよな?」


 俺の問いに、ゴレタは首を横に振る。


「迷信じゃなく、事実っす」


「事実?」


「兄貴は、運がいいのか悪いのかわからない人っす」


「だから、警戒したほうがいい?」


「先輩も、そう思うでしょ?」


 ゴレタの問いに、スラゾウは首を縦に振る。


 迷信なのか事実なのか、判断に迷っている間に到着したのは――


「寂れた村だな?」


 大都市から距離があるとしても、その印象が強い。


「すみません、聞きたいことがあるんです。俺は――」


 村人に声をかけると、相手は挨拶した後、立ち去る。

 人見知りなのかと思ったら、違った。

 他の村人に声をかけても、同じ対応を取られるんだ。


「スラゾウ、ゴレタ、どう思う?」


「ご主人が、偉そうだからですね」


「兄貴が、エロそうだからっすね」


「お前らには聞かん!」


 役に立たない意見を無視して、俺は村長の家を訪ねる。


 当の村長は、村を囲んだ柵の外を眺めている。

 どうやら、魔物を警戒しているらしい。


「すみません」


「君は?」


「俺は、ギルド所属のテイマーです」


「今更、何のつもりだ?」


「今更?」


「何度も、説明しただろう。まさか、伝わってないのか?」


「新人だから、何も伝わってません」


「新人、か。悪いことを言った、すまん」


 村長は素直に謝る。


「どういうことですか?」


「一月ほど前に、湖のそばにある屋敷に引っ越してきた男がいる」


「ドーソンの屋敷?」


「そいつに、ギルドへの仕事を頼んだんだ」


「どうして、その男に?」


「君のように、ギルド所属のテイマーだと、名乗ったからだ」


 村長は証言する。


「ちなみに、謝礼は?」


「もちろん、払った」


「本当にその男は、ギルド所属のテイマーなんですか?」


「少なくとも、ギルドに所属してる証を持ってたぞ」


「もしかして、これのことですか?」


 俺は、竜の紋章が刻まれた指輪を取り出す。


「それだ!」


「盗難とか、偽造とか、偽のテイマーじゃないですよね?」


「そこらへんは、わからん。ただ、古かったぞ」


「わかりました。新人ですけど、村からの依頼に対応します」


「すまない、君に当たるつもりはなかったんだ。ただ、ここ二ヶ月ほど物騒で」


「物騒?」


「長い話になるが、構わないか?」


「構いません」


 村長の長い話を要約すると―― 


 発端は、二ヶ月ほど前のある日。

 季節外れの嵐の夜に、ハウンドの巣の一つが壊滅した。


 理由は、不明。

 ただし、痕跡から襲撃されたと思われる。


 その事件を契機に、村の周辺の魔物が活発化した。

 それに伴い、村人は仕事を満足にできなくなっている。


「結果は、この有様だ。挙句、魚の豊富な湖では、怪物の目撃情報まである」


「怪物……魔物?」


「あいつは、身勝手だ。何しろ、屋敷は厳重に守られてるんだぞ?」


「その点も含めて、柔軟に対応します。関連して、支援をお願いします」


「わかった、村人に声をかけておく」


 それから、情報を集め始める。


 集めた情報によると――


 この村を基点にして、北と南にそれぞれ問題がある。

 北の地域には、ハウンドの巣。

 南の地域には、男の屋敷。


 先に向かうのは、ハウンドの巣。

 後者は、村長の言葉から、争いが予想されるから。

 ただ、一つだけ問題がある。


「情報は、正しいのか?」


「ご主人は、村人を疑ってるんですか?」


「疑ってるのは、話の信憑性だ」


「兄貴、間違ってる可能性を考えてるんすね?」


 俺は頷く。


「判断するためには、現場に行くべきだろう。休憩したら、向かおう」


 俺の言葉に、スラゾウとゴレタは頷く。

 読んでくださって、ありがとうございます。

 ブックマーク等の応援、ありがとうございます。


 今回は、地味な話です。

 そのため、先へ先へと進んでいます。

 ポイントは、もちろん「嵐の夜」です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
新作へのリンクです
覚醒テイマーの成り上がり
設定を変えた別バージョンは、全部書き直してます。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ