第27話 不思議な美少女アリス
前回のポイント・エリザと町を散策した!
「私は、フェルナンデスの娘のエリザベートです。今日は、父の代理で来ました」
フェルの娘という、肩書きの効果は抜群。
俺たちは、すぐに中に招かれる。
俺一人じゃネイトの紹介があっても、手間取っただろう。
何しろ、両肩にはおかしな生き物もいるし。
「ご主人こそ、不審者ですよね?」
「兄貴こそ、変質者っすよね?」
「今日は、おやつ抜きだぞ?」
「ブーブー!」
「プープー!」
「お前ら、うるさいぞ!」
ブーイングの間も、ドーソンの屋敷の関係者の案内に従っている。
「今日、挨拶に来たのは――」
エリザは、家人に挨拶を始める。
暇になった俺たちは、庭を眺めている。
興味を引かれたのは――
二人の女。
年齢的には、女性と少女と言い換えられる。
どっちも、美しい顔立ちをしている。
特に、前者は作り物じみた美しさ。
「――?」
俺の視線に気づいたらしく、女性はこちらを見る。
「うっ――」
俺は息を呑む。
品定めされているように感じて。
人として?
男として?
あるいは――
「〈異世界博士〉の効果により、対象の情報を把握する」
俺は宣言する。
『〈異世界博士〉の指定効果、発動』
言葉が響き、文字が浮かぶ。
【ステータス】
クラス・不明
ランク・不明
スキル・不明
軽く調べた限りじゃ、おかしなところはない。
違和感を覚えたのは、気のせい?
考えている間に、二人は立ち去る。
「盗み見するなんて、ご主人はエッチですね?」
「そういうことじゃない」
「エロ目的じゃないとしたら、兄貴はどういうつもりっすか?」
「違和感を覚えたんだ」
俺は素直に答える。
「バストに?」
「ヒップに?」
「お前ら……」
旗から見た自分の印象に、俺は絶句する。
今のやり取りが聞こえたらしく――
「タロウ、胸と尻によって、女性の価値を判断するのは最低よ」
エリザは酷評する。
「スラゾウ、ゴレタ、私と一緒に、ドーソンさんと面会しましょ」
「俺は?」
「変態紳士は、好きにして」
俺は、一人その場に立ち尽くす。
立ち去り際――
「年上の女性が、占い師よ。私が主人の相手をしている間に、接触してみたら?」
エリザは提案する。
「ご主人、戻ったら、おやつをよろしく」
「兄貴、戻ったら、お茶もよろしく」
「戻ることの引き換えを要求するの!」
「頼みましたよ?」
「頼んだっすよ?」
「お前ら……わかった」
エリザの両肩に、スラゾウとゴレタは移る。
エリザたちを見送った俺は、すぐに動き出す。
恋人に見放された男に見えるらしく、誰も声をかけてこない。
ほどなく昨夜の話に出た、離れと思しき建物にたどり着く。
「この後、どうしよう?」
どうするべきかと迷っていると――
「あなたは?」
離れの扉が開き、人が出てくる。
その人物は、さっき見かけた少女。
予想とは異なるものの、絶好の機会。
「俺は、タロウ」
「あたしは、アリス」
俺たちは名乗る。
「あなたは、どうしてここにいるの?」
「友人に、同行を拒まれてね。今は、一人空しく散歩さ」
「恋人じゃないんだ?」
「恋人じゃないね。そういう君は?」
「ママの仕事の都合上、ここに住まわせてもらってるの」
アリスのママが、占い師なのは間違いない。
娘の存在が判明しなかったのは、引きこもっているためだろう。
「似てるような、似てないような、不思議な親子だね?」
「強いて言うと、あたしはパパに似てるわ」
「そのパパは?」
「あたしたちを置いて、どこかへ消えたわ」
「……ごめん」
俺は謝る。
「謝ることはないよ、事実だから」
「今は、二人?」
「うん、そう。でも、ママに新しい恋人ができたから、三人かなぁ」
「その人は?」
「この時期は空いてるらしく、ドーソンさんの別荘に住んでる」
「君たちの関係を、ドーソンは知ってるの?」
「ママは、自分の弟として通してるみたい」
「おじさんだね?」
俺の皮肉に、アリスは微笑する。
「そのおじさんは、どんな人?」
「うーん、わからない」
「ママの恋人だから、男の人だよね?」
「ドーソンさんと同年代の男の人よ」
「優しい?」
「お調子者」
積み重なる証拠。
そのおじさんこそ、盗賊の用心棒に間違いない。
「おじさんに興味があるなら、会ってみたら?」
「大丈夫なの?」
「あたしが、紹介するわけじゃないし」
「そりゃ、そうか。勝手に乗り込めばいいんだね?」
アリスは頷く。
「ただ、別荘にはたくさんの人がいるから、注意が必要よ」
「ドーソンの関係者?」
「ううん、おじさんの関係者。仕事上の付き合いみたい」
「聞き忘れてただけど、おじさんの名前は?」
「ルイス」
どうやら、当たりのようだ。
「別荘に来るつもりなら、場所を教えるよ?」
「頼む、教えてくれ」
「いい返事。この町から東に進んだ、大きな湖のあるところ」
「そこにたどり着くのは、大変?」
「うーん、動物が出るぐらいだから、大変じゃないと思う」
俺は頷く。
「わかった、行ってみる」
「今日行くなら、合流できるね。あたしたちも行く予定なの」
「だから、教えてくれたの?」
「うん、一人で遊ぶのは寂しいから」
アリスは微笑む。
「じゃあ、また後で会いましょ、お兄さん!」
アリスの言葉を背に、俺は離れを後にする。
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第一部のメインヒロインの登場です。
もちろん、占い師ではなく、アリスです。
タロウとアリスのやり取りに期待してください。




