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第23話 疑惑の評議会議員ドーソン

 前回のポイント・ゴーレムを仲間にした!

 スラゾウたちの姿を求めて、俺はゴレタを抱えながら歩いている。


「するべきことは多いぞ」


 事件の発端である、商人だと偽っている詐欺師を見つける。

 黒幕の可能性がある、評議会の議員を調べる。

 ヘルハウンドの仲間を助けて、自由にする。

 元凶かもしれない賊の用心棒を捕まえて、ギルドに突き出す。


「盛りだくさんだな」


 それでいて、すべて達成できると思っている。

 ヘルハウンドに勝利したこともあるけど、それよりもゴレタの存在がある。

 それだけ、仲間の加入は価値があるんだ。


「もっとも、本当はのんびり過ごしたいんだけど」


 しばらく歩くと、スラゾウたちと行き当たる。

 予想と異なるのは、他にも人がいたこと。

 ただし、敵じゃなく、味方。


「ケインさん!」


「タロウ君!」


 そこにいたのは、ケイン。


 兵士を取りまとめる立場にあるらしく、他の兵士に指示を与えている。

 その指示に従い、兵士は捕まっていた人たちに、話を聞いている。


「これから、君を助けに行くつもりだったんだ」


「そうなんですか」


「だが、たった一人で強化されたヘルハウンドを倒すとは、さすがタロウ君だ」


 ケインは賞賛する。


「ゴレタのおかげです」


「小型のゴーレム? 変わった仲間だな」


「いろいろあったんですよ」


「こっちも同じだ。簡単に言うと、テイマーギルドからの要請だ」


 俺の指示した通り、ハンナはギルドに駆け込んだんだろう。

 事情を聞いたマリーはギルドを通じて、兵士に調査を要請したに違いない。


「盗賊の生き残りはいるのか?」


「少なくとも、三人います。これが、その三人を閉じ込めた牢屋の鍵です」


「三人、ね。それ以外は不明か?」


「生き残ってても、ごくわずかです。ただ、鉱山の調査には注意が必要です」


「わかった、慎重に調査する」


 数人の兵士を残して、ケインは他の兵士とともに、鉱山に向かう。

 ケインの調査を待っている間、俺はスラゾウに話を聞かせる。


「敵の敵は味方なら、いいんですけどねぇ」


「罠だと言いたいのか?」


「罠の可能性はないと思います。ただ、〈隷属〉に逆らえますかね?」


「逆らえる手段はあるはずだ。だから、ヘルハウンドの仲間との接触は必須だ」


「ゴレタが、貴重な情報を知ってるといいですね」


 しばらくして戻ってきたケイン一行には、三人の賊も含まれている。

 三人は事情を聞かされたらしく、いずれも顔色が悪い。

 俺が牢屋に閉じ込めていなければ、他の仲間同様殺されていたから。


 自分たちは「用済みだ」とわかったため、三人はケインに泣きついている。

 どうやら、情報を提供する代わりに、身の安全を保障してもらうようだ。

 当然と言えば当然、卑怯と言えば卑怯、盗賊らしい。


「タロウ君、何があったんだ!」


「何とは?」


「鉱山の前だ。焼け野原と化していて、通り抜けるのも一苦労だったよ」


「中隊を殲滅できる攻撃を食らったんです。ゴレタがいなかったら、危なかった」


「中隊を殲滅できる攻撃? 尋常じゃないな……」


 ケインは冷や汗をかく。


「詳しい調査は、後日行う。今は、町への帰還を最優先に考える」


 ケインは判断を下す。


 異論はないらしく、その場にいる全員が了承した。

 当たり前か。

 下手に好奇心を優先したら、全滅しかねない。


 なぜなら――


 賊の用心棒がやってくる、可能性があるから。

 配下の魔物を介した、敗北の報告を受けて。


「では、町に帰ろう!」


 町へと帰る途中、ゴメスと決闘をした場所を通る。

 そこには血の痕跡こそあったものの、死体の類はなかった。

 無事逃げ切ったのか、ハウンドの餌になったのか。


 いずれにしても、賊は壊滅。

 人質の救出に伴い、町での自由はなくなるから。

 今後は、狩る者から狩られる者へと、立場を変えるだろう。


「ご主人?」


「盗賊とはいえ、悲惨な最期だな……」


「むしろ、盗賊らしい気楽な最期じゃないですか」


「哀れむことはない?」


「盗賊にとっても、同情は無用でしょ。あの三人は、生き残ってますし」


 再び訪れたために、感傷的になっていたらしい。

 俺の意見よりも、スラゾウの意見のほうが正しいだろう。

 実際、三人の賊はのんきに、今後について話している。


 町までの道のりは、近いような遠いような微妙な距離だった。

 遠目に町が見えてくると、さすがに安堵する。


 門の前には、たくさんの出迎えが待っている。

 その数は、優に数百人を超えている。


「おぉ、よく戻った!」


 群集の中から進み出たのは、中年の男。

 容姿も格好も平凡ではあるものの、地位の高さを感じさせる。


「無事の帰還とは、私の判断は間違っていなかった。これからは――」


 男はしゃべり続けている。


「誰?」


「我々の派遣を決定した、ドーソン評議会議員だ」


「評議会議員?」


「君も知ってるフェルさんも、その一人だ。要するに、この町の上層部の一人だ」


 ケインは説明する。


「上層部ねぇ」


 俺は白眼視する。


 事件の黒幕かもしれない、評議会議員の存在を思い出したんだ。


「ちなみにドーソンさんこそ、問題の人物を我々に紹介した、評議会議員だ」


 ケインの言葉に、俺とスラゾウは顔を見合わせる。


 全員が困惑しているのに、ドーソンの話は延々と続く。

 読んでくださって、ありがとうございます。

 ブックマーク等の応援、ありがとうございます。


 黒幕候補の登場です。

 ただ、黒幕らしくないですね。

 もっとも、実際のところは別ですけど。

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