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第22話 灼熱の激闘、地獄の猟犬オルトロス

 前回のポイント・ゴーレムは、タロウの窮地に駆けつけた!

 マッドゴーレムと、擬似オルトロスの戦闘――


 ランクに限れば、勝敗は目に見えている。

 何しろ、GランクとAランク。

 たとえ種族の強さが上回っていても、劣勢を覆すのは困難だろう。


「ゴーレム!」


 ヘルハウンドの炎を受けて、ゴーレムの表面は溶け始める。

 鉄も溶けるのだから、泥ではなおさら。


 窮地かと心配したら、違った。

 泥の中から現れたのは、キラキラと輝く体。


「ダイヤモンド……」


 マッドゴーレムならぬ、ダイヤモンドゴーレム。


 本来の姿を明かしたゴーレムは、強化されたヘルハウンドにも引けを取らない。

 至近距離からの炎をものともせず距離を詰めると、攻撃を叩き込んでいく。


「だから、か」


 賊の用心棒が、ゴーレムに固執したのは、このため。

 オルトロス化したヘルハウンドと同程度なら、無理にでも契約するだろう。

 本来の力を盗賊に黙っていたのは、横流しを警戒したに違いない。


「逃げるのか?」


 接近戦は不利だと悟ったらしく、ヘルハウンドは距離を取る。

 だが、近距離からはともかく、遠距離からの炎の攻撃は無意味。

 威力が低下するために、ダイヤモンドの体に弾かれるのだ。


 人とは違い、ゴーレムでは急所を狙えないし、狙っても意味はない。

 ヘルハウンドは、追い詰められた形。


『エクストラスキルの兆候を確認しました』


 〈異世界博士〉を使用していないのに、文字が浮かぶ。


「エクストラスキルの兆候を確認した?」


 その意味は――


「警告だ! ゴーレム、逃げろ――」


 俺の言葉は、ひいては前方のゴーレムは、灼熱に包まれる。


 百メートル以上離れた、俺の周辺にも届く、炎と熱――


 飛んでくる火の粉を払っていると、文字が浮かぶ。


【データベース・エクストラスキル〈 地獄の猛火(ヘルファイア)〉】


 地獄の猟犬、オルトロスのエクストラスキル。


 それは、瞬時にして中隊規模の軍勢を焼き尽くす。


 対抗手段は、主に二つ。


 一、Aランク相当以上の金属、たとえばダマスカス(こう)の甲冑を着込む。


 二、Aランク相当以上の耐性スキル、たとえば熱耐性Aを用いる。


 もしどちらもないとしたら、あなたは死を覚悟しなければならない。


「中隊規模の軍勢を殲滅するスキルかよ!」


 本来、ヘルハウンドじゃ使用できないものだ。

 それを〈隷属〉と〈狂化〉の複合効果により、無理に使用している。


 ただし、その負荷は、ヘルハウンドに重くのしかかっている。

 なぜなら、ヘルハウンドの全身から流れる血は、止まらないから。


「それより、ゴーレムは――」


 ゴーレムは、〈 地獄の猛火(ヘルファイア)〉を受けながらも前進している。

 だが、ゴーレムの体は、徐々に炭化を始めている。

 次の一撃に耐えられるとは、思えない。


「いや、生き残るのは俺たちだ!」


 俺は一本だけ残っていた剣を拾うと、前に走りながら槍投げの要領で投げる。


 ヒュン!


 その攻撃は、ヘルハウンドの注意を引きつけるのには十分。

 ヘルハウンドは、こちらへと向きを変える。

 それに伴い、炎を充満させた口が、俺に狙いを定める。


 だが、ゴーレムはその隙を見逃さない。

 一気に距離を詰めると、最後の力を振り絞り、拳を振るう。


 ゴーレムの渾身の一撃は、ヘルハウンドの体を完全に捉える。

 勢いそのままに吹っ飛び、岩山にぶつかり、ヘルハウンドは地面に倒れる。


「大丈夫か!」


 俺は、ゴーレムに駆け寄る。

 

 当のゴーレムは、死に瀕している。

 少し前まではキラキラと輝いていた体は、大半が黒く染まっている。

 ダイヤモンドの体でも、〈 地獄の猛火(ヘルファイア)〉には耐えられなかったんだ。


 俺は、ゴーレムに手を差し伸べる。

 ゴーレムも、俺に手を差し伸べる。


 双方の手と手が触れ合った瞬間――


 外からじゃなく、内から言葉が生まれる。


 ――汝、契約をよしとするか?


 ――我、契約をよしとする。


 問いに対して、頭じゃなく心で応じる。


 ――ここに契約は結ばれた、汝と仲間に祝福あれ!


 直後――


 変化していた感覚が、元に戻る。


 契約したものの、ゴーレムは死に瀕したまま。

 肉体に当たる部分はなくなっており、残っているのは心臓に当たる部分のみ。


 核と思しきそこに、俺は荷物から取り出した、焚き火用の薪を近づける。

 予感とも本能とも判断のつかない、不思議な感覚に従って。


 すると、核を中心に体を作り始める。

 ほどなく、肩に乗せられるぐらいの大きさの、木製の人形が出来上がる。


「兄貴、オレの名前はゴレタ。これから、よろしく――」


「ゴレタ!」


 俺は倒れたゴレタを抱える。


 危篤なのかと心配したら、違った。

 眠っているらしく、寝息が聞こえる。

 寝息は安定しているから、助かったようだ。


「よかった――」


 そう安堵した瞬間――


 ガサッ!


 物音がした。


「嘘だろ……」


 振り返った俺は息を呑む。


 満身創痍ではあるものの、ヘルハウンドが立ち上がったから。

 ヘルハウンドはこちらに近づいてくると、一定の距離を残して止まる。

 そして、何かを頼むように、こちらを見る。


「お前、俺に何を伝えたいんだ?」


 俺は問いかける。


『〈異世界王〉のスキルランク上昇に伴い、対象の伝言を読み取ります』


『隷属の効果は消えたが、私は長くは持たない


 だから、あなたに頼みがある


 あいつに奪われた、我々の自由を取り戻してくれ


 そして、あいつに捕まった仲間を助けてくれ


 お願いだ――』


「どいつもこいつも、俺に頼みごとばっかりする」


「…………」


「わかったよ、お前の頼み聞き入れる。ただし、依頼としてだ」


「…………」


「後々、お前の仲間を助けた時に、お前の仲間に報酬を貰うぞ」


 俺の言葉に――


『ありがとう――』


 ヘルハウンドは安心したように、力尽きる。


 俺は地面に転がった剣を拾うと、ヘルハウンドの前に突き立てる。

 もちろん、墓標だ。


 俺はゴレタを抱えながら、スラゾウの後を追う。

 ヘルハウンドが消えていく、優しい光に包まれながら。

 読んでくださって、ありがとうございます。

 ブックマーク等の応援、ありがとうございます。


 二番目の仲間、ゴレタの加入です。

 元から用意していた話のため、苦労しませんでした。

 何度も会話に出てきた「壁役」は、その伏線です。

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覚醒テイマーの成り上がり
設定を変えた別バージョンは、全部書き直してます。
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