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第21話 鉱山からの脱出

 前回のポイント・人質を救出した!

 延々と来た道を戻っている。

 その間、見回りとは、一度も遭遇していない。


「無用心だな――」


「無用心ですね――」


 俺とスラゾウは顔を見合わせる。


 出入り口を抜ける。

 そこには、見張りもいない。


 警戒した俺は、一人先行する。


「スラゾウ、盾になってくれ」


「盾? わかりました」

 

 俺はスラゾウシールドを、空に構える。


 直後――


 ヒュン! ヒュン! ヒュン!


 大量の矢が、飛んでくる。

 しかしそれは、すべて受け止められる。

 スラゾウシールドによって。


「スラゾウ、大丈夫か?」


「大丈夫ですけど、長くは持ちませんね」


 元に戻ったスラゾウは、俺の肩に乗る。


「嘘だろ……すべて防がれたぞ!」


「見ただろ? 君たち程度じゃ、俺には傷一つつけられないぜ!」


 俺は威圧のために、強気に出る。


 狙い通り――


 二十人ほどの盗賊は、動揺している。

 その中には、弓を下ろしている者も、後ずさっている者もいる。


 このままやり過ごせるかと思われた時――


「お前ら、びびってるんじゃねえよ! 俺たちには、こいつがいるだろ!」


 聞き覚えのある、粗野な声がする。


 声の主は、ゴーレムを虐待していた、二人の男のうちの一人。

 よく見ると、そのそばには、もう一人の男もいる。

 そして、両者の間には、ヘルハウンドが見える。


「やれ、ヘルハウンド! おい、こっちじゃねえ、あっちだ――うぎゃあ!」


 ヘルハウンドは、襲い掛かる。

 ただし、敵じゃなく、味方に。


 ヘルハウンドは、炎を吐く。

 それを受けた二人の男は、苦しみ抜いた末に、焼け死ぬ。

 

「うわああぁぁっ!」


 最悪の事態に、盗賊から悲鳴が上がる。


 だが、悲鳴は長続きしなかった。

 ヘルハウンドの炎により、周囲は焼き払われたから。


 瞬く間に盗賊を始末したヘルハウンドは、標的を変える。

 薬物中毒者のように濁った目を、こちらに向けたんだ。


「次の狙いは、俺たち?」


 俺たちは顔を見合わせる。


 盗賊を始末したヘルハウンドは、その場をぐるぐる回っている。

 好機を窺っているような、苦痛に耐えているような、奇妙な動き。

 今のうちに、情報を把握してしまおう。


「〈異世界博士〉の効果により、対象の情報を把握する」


 俺は宣言する。


『〈異世界博士〉の指定効果、発動』


 言葉が響き、文字が浮かぶ。


 【ステータス】


 クラス・ヘルハウンド(擬似オルトロス)

 ランク・E+(Aー)

 スキル・隷属(れいぞく)A 狂化(きょうか)A 身体強化D

 エクストラスキル・不明


 【パラメーター】


 攻撃力・B+(プラス補正)

 防御力・B+(プラス補正)

 敏捷性・E-(プラス補正)


 信じられないぐらいに、ランクとパラメーターが上がっている。

 さらに、エクストラスキルという、見慣れないものも含まれている。


「ご主人、どうなってるんです?」


「おそらく、ヘルハウンドは完全に理性を失ってる」


 その証拠に、スキルの中に〈狂化〉が含まれている。

 それにより、ヘルハウンドは正気を失っているに違いない。


「〈異世界博士〉によると、あのヘルハウンドは、オルトロス並みらしい」


「オルトロス? 地獄の番犬ケルベロスの弟分ですよ!」


「強いのか?」


「優に数百人規模の戦力ですね」


「そりゃそうか、英雄の敵だし」


 俺は警戒する。


「強化された炎を防げると思うか?」


「正直、防げる防げない以前に、試したくないですね」


「了解。じゃあ、避けつつ逃げるか?」


「オイラたちだけなら可能ですけど、全員は不可能ですね」


 スラゾウは否定する。


「それなら、俺が囮になる」


「正気ですか?」


「正気だ。さらに言うと、本気だ」


 俺は覚悟を決める。


「正気の上に本気……説得は無理そうですね」


「やらなくて後悔するよりも、やって後悔したいんだよ」


「それ、後悔する前提ですよね」


 スラゾウは苦笑する。


「俺が囮になってる間に、スラゾウはみんなを誘導してくれ」


「そう都合よく、ご主人を狙ってくれますかね?」


「狙う。なぜなら、あいつの狙いは俺だ」


 俺は断言する。


「盗賊の用心棒の刺客?」


「おそらく。だから、俺から離れれば、助かる可能性は跳ね上がる」


「ご主人、生き残ってくださいよ」


「もちろん、生き残るさ」


 俺は頷く。


「行くぞ!」


 覚悟を決めた俺は、転がっている剣を拾うと、ヘルハウンドめがけて投げる。


 ヒュン!


 剣はヘルハウンドに届く前に、炎を受けて溶け落ちる。


「こちらに、注意を引きつける!」


 そのため、俺は岩と岩との間を行き来しつつ、剣を拾っては投げるを繰り返す。


 果たして――


 攻撃に引き寄せられ、ヘルハウンドはこちらに向かってくる。

 その間に、スラゾウに誘導された、ネイトを始めとした人たちは戦場を離れる。


 無防備な彼らに対して、しかしヘルハウンドは興味を示さない。

 興味を示しているのは、俺のみ。


「人気者じゃないか!」


 それでも、万一の場合に備えて、俺は牽制を続ける。

 剣を投げられるのも、岩に隠れられるのも、ヘルハウンドの問題。


 火力が上がっている分、速度は下がっている。

 〈感覚強化〉と同じく、〈隷属〉と〈狂化〉には利点と欠点があるに違いない。


「十本目……嘘だろ――」


 攻撃した後に岩陰に隠れた俺は、辺りを見渡して絶句する。


 攻撃の要の剣も、回避の要の岩も、大半が溶けてなくなっていたから。

 そう、攻撃どころか、回避さえ困難。

 残りわずかとなった剣と岩により、ヘルハウンドを仕留められる?


「やってみせる!」


 俺は隠れている、岩のそばの剣に跳びつく。


 瞬間――


 岩の周辺に、炎が渦巻く!


「いけ!」


 俺は剣を拾うと、狙い定めて投げる。


 剣は、ヘルハウンドに突き刺さる寸前――


 ボッ!


 音を立てながら炎に包まれ、溶け落ちる。


「おしい――」


 そう思った直後、気づく。


 窮地に、陥ったことに。


 何しろ、辺りに剣も岩もなく、攻撃も回避も不可能だったから。


「まずい――」


 俺の言葉は、消える。


 ヘルハウンドが、近距離から吐き出した炎によって!


「生き残るぞ!」


 俺は両手を交差させると、顔を守る。


 予想に反して、灼熱の痛みは訪れなかった。

 交差させた両手を下ろすと、目の前には巨人がいた。


「ゴーレム……」


 呆然としている俺に対して――


「下がって!」


 ゴーレムは示す。


 それに伴い、俺は距離を取る。

 当然のように追ってくるヘルハウンドの前に、ゴーレムは立ちふさがる。


 直後――


 ゴーレムとヘルハウンドは、激突する。

 読んでくださって、ありがとうございます。

 ブックマーク等の応援、ありがとうございます。


 ゴーレムの登場タイミングは、迷いました。

 早過ぎると、面白くない。

 遅過ぎると、意味がない。

 そのため、その中間になりました。

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覚醒テイマーの成り上がり
設定を変えた別バージョンは、全部書き直してます。
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