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第20話 人質救出作戦

 前回のポイント・囚われのゴーレムを助けた!

「今度こそ、人質を救出しよう!」


 幾度目かの分岐を終えると、一本道になる。

 大変じゃないものの、厄介。

 前後を確認しつつ、一本道を抜ける。


「ここは――」


 たどり着いたのは、開けた空間。

 暗がりから中を覗くと、見張りがいる。


 三人の見張りがいるのは、重要な場所だから。

 牢屋のような区切りの中には、たくさんの人が捕まっている。


「どうします?」


「実力行使だ」


「好戦的ですね、さっきの件が関わってます?」


「関わってない。見張りはいなくなりそうにないから、倒すしかないんだ」


「そして、襲撃に気づかれる前に、外に逃げ出すんですね?」


 俺は頷く。


「具体的には、どう倒します?」


「単純に仕掛けたら、一人は逃げ切る。そうならないように、工夫する」


「どんな工夫ですか?」


「隠れ蓑を利用して、一人ずつ意識を奪う」


 俺は工夫を示す。


「不意打ちですね」


「それなら、全員倒し切れる」


「大変ですけど、確実ですね」

 

 スラゾウは頷く。


「順番は、向かって右、中央、左だ」


 俺は実行に移る。


 標的は変化に気づくことなく、欠伸をしている。

 その背後に回ると、膝かっくんをする。


 体勢の崩れた見張りの顔に、スラゾウは貼りつく。

 ほどなく意識を奪われた男は、地面に倒れる。


「一人目」


 右に続いて、中央。


「二人目」


 中央に続いて、左。


「三人目」


 三度繰り返して、目的を達成する。


「人が現れたり消えたり……どうなってるんだ?」


「俺は、ギルド所属のテイマーだ」


「テイマー!」


「依頼によりあなたたちを助けに来たから、俺の指示に従ってくれ」


「わかった」


 捕まった人たちは、半信半疑ながらも頷く。


 俺は見張りの懐から、三本の鍵を取り出す。

 その鍵を使って牢屋を開けると、中にいた人たちを外に出す。

 外に出した人たちに協力してもらい、三人の見張りを牢屋に閉じ込める。


「助かった、ありがとう!」


 捕まった人たちを代表して、四十歳前後と思しき男が、頭を下げる。


「助かったとは、限らない。礼は、町に着いてからにしてくれ」


「君は若いのに、テイマーらしく冷静だな」


「そう自分を律してるだけさ。それより、これで全員?」


「この鉱山にいるのは、これで全員だ。他の拠点までは、わからない」


「それに、捕まった時に一緒にいた人たちの、行方はわかる?」


「誰も、欠けてない。女子供は、町に送り届けられたようだ」


 どうやら、一応の目的達成のようだ。

 後は、この人たちを無事に町に送り届ければ、本当の目的達成。


「こんな真似をして、ただで済むと思うなよ!」


 声の主は、一人だけ目覚めた見張りだ。


「町に戻ったら、ただで済むと思うなよ、と言ったら?」


「揚げ足取ってるんじゃねえよ!」


「他人のことよりも、自分のことを心配するべきだね」


「心配?」


 見張りは首をひねる。


「君が頼りにしてる今の頭は、死んでる可能性が高いんだよ」


「今の頭が死んでる?」


「それは、前の頭が生きてる可能性が高いからだよ」


「冗談だろ……」


「俺と前の頭の二人で、十人ぐらい蹴散らしたから、可能性は高いよ?」


「お前、例のテイマーか!」


 見張りは顔を引きつらせる。


「くそっ、テイマーだからって、いい気になりやがって!」


「いい気になってるのはテイマーだからじゃない、勝者だからさ」


「こっちにも、テイマーはいるんだぜ!」


「君たちの仲間に、テイマーはいないはずだ」


「仲間じゃない、用心棒だ!」


「用心棒?」


「あいつにかかれば、お前なんか赤子の首をひねるように殺せる!」


 見張りは威張る。


「どんなやつ?」


「どうせあいつに殺されるだろうから、特別に教えてやる」


「聞かせてくれ」


「凄腕の上、冷酷なやつだ。話によると、ギルドから追放されたらしい」


「名前とか、容姿とか、性別とか、特徴は?」


「特徴は――」


 見張りは言葉を切る。


 他の二人が、服を引っ張って止めたんだ。


「これ以上、情報を漏らすな! お前、ハウンドの餌になりたいのか?」


 仲間の忠告に、威張っていた見張りは口をつぐむ。


 その後は、説得しても挑発しても、情報を引き出せなかった。

 俺よりも、そいつのほうが恐ろしいんだろう。


「盗賊の用心棒を務める、ギルドから追放された、凄腕の上に冷酷なテイマー」


 現状でも、情報が多過ぎる。

 これに、個人情報が加わったら、混乱しそう。

 もっとも、実物は平凡かもしれない。


「気に食わない相手を、ハウンドの餌にする人が、平凡ですかぁ?」


「もちろん、見た目の話だよ」


「そういう人は、顔に出るものですよぉ」


「凄腕らしいから、ポーカーフェイスだろ」


「外面を気にする人が、ギルドから追放されますかねぇ」


 実は、俺もスラゾウと同じ意見。

 ただ、対決に備えて、先入観を戒めているだけ。


 たとえば、一般人を装った無個性な男に、仕掛けられたら厄介でしょ?


 会話の間も、一向は外を目指して、通路を進んでいる。

 もちろん、先頭は俺。

 その後を、五十人を越える人たちが続いている。


「聞き忘れてたことがある。君の依頼人は誰なんだ、キーマタロウ?」


「どこのカレーライスだよ!」


「カレーライス?」


「キラタロウ!」


「すまん、間違ってしまって。異国人の名前は、難しいな」


 ネイト、と名乗った、捕まった人たちの代表は釈明する。


「ある宿の親子だよ」


「その親子の名前は、ハンナとアンナかね?」


「ネイトさんが、捕まった父親か!」


「ああ、無様に捕まった父親とは、私のことさ……」


「無様?」


 会話を聞きつけた周囲の人たちは――


「あんたは悪くない、悪いのは俺たちだ。悪徳商人に、引っ掛かったんだから」


 ネイトに慰めの言葉をかける。


「悪徳商人?」


「私たちの所属するギルドに、物資を融通する、との申し出があったんだ」


「都合がよくないか?」


「今思えば、その通りだ。ただ、その時は疑わなかった」


 疑わなかったんじゃなく、疑えなかったんだろう。

 それだけ、物資の不足は切実だったに違いない。


「指定された場所に、私たちは物資を受け取りに行った。その途中――」


「その途中?」


「待ち構えてた盗賊により、私たちは荷馬車ごと捕まった」


「罠、か」


 ネイトは頷く。


「馬車が襲われたことのみならず、物資が滞ったことも、そいつの指図だ」


「証拠はあるのか?」


「いずれの事件でも、そいつに似た男が目撃されてる。――みんな、そうだろ?」


 ネイトの問いに、捕まっていた人たちは「そうだ」と口を揃える。


「そいつ、本当に商人なのか?」


「正直、商人というよりも、詐欺師だ」


「どうして、そんなやつを信じたんだ?」


「困窮してたこともあるが、それよりも評議会の議員の紹介なんだ」


「その議員も、そいつに騙された口か」


 ネイトを始めとした、捕まっていた人たちは頷く。


 だが、スラゾウは頷かない。


「ご主人?」


「わかってる」


「わかってるなら、いいんです」


 俺たちの見解は、一致している。


 その議員が、今回の問題の黒幕かもしれない、と。

 読んでくださって、ありがとうございます。

 ブックマーク等の応援、ありがとうございます。


 ネイトとの会話は、ハンナとの会話の対比です。

 このころには、タロウの名前ネタは尽きかけています。

 そのため、徐々に別のネタに走り出します。

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覚醒テイマーの成り上がり
設定を変えた別バージョンは、全部書き直してます。
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