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第18話 鉱山への潜入

 前回のポイント・タロウは、スラゾウを助け出した!

 戦場を後にした俺たちは、すぐに目的地に向かったわけじゃなかった。

 ゴメスの話から、そこそこの距離があるとわかったから。

 戦場を迂回して、最初に通った道を少しだけ戻る。


「ご主人、貴重な武器を盗賊の親分に渡すなんて、どういうつもりですか?」


「敵を少しでも減らしてくれると、ありがたいだろ」


「建前ですね」


「本音としては、感傷を抱いたんだよ」


「自業自得ですよね」


「共闘したためかもしれない」


「お人よしも、ほどほどにしてください。いい人ばかりじゃないですよ」


 ゴメスは、いわゆる「いい人」じゃない。

 ただ、外道でもない。

 それが、感傷を抱いた理由だろう。


「それより、お腹は空いてないか?」


「もちろん、空いてますよぉ。でも、町に戻らないんでしょ?」


「弁当ならあるぞ」


「本当ですか!」


 興奮するスラゾウに、俺は岩陰を示す。


 そこには、リュックサックに似た、背負う形の皮袋がある。

 その中には、食料と水を始めとした、生活必需品が入っている。

 

「ご主人にしては、準備がいいですね」


「前半は、余計だろ。宿の親子に、用意してもらったんだよ」


「それより、弁当をくださいよぉ。お腹、ペコペコなんですからぁ」


「救出は一刻を争うから、食事は移動しながらでもいいか?」


 スラゾウは頷く。


 俺は弁当と水筒を取り出すと、他の荷物を背負う。


 早速、スラゾウは食事に取り掛かる。

 本当に空腹らしく、食事は続く。


「ご主人は、宿の親子を許したんですか?」


「不満なのか?」


「理由を知りたいんです」


 態度から、スラゾウの心中は読み取れる。

 お調子者として振舞っているものの、スラゾウは冷徹だ。

 許すとしても許さないとしても、説明を求めているんだ。


「判断は、下してない」


「下せないんですか、下したくないんですか?」


「強いて言うなら、判断を下す段階じゃない」


「その段階じゃない?」


「宿の親子を許すべきかどうかの判断は、父親を見つけ出し、助けた後だ」


「ご主人は、本当に人がいいですね」


 スラゾウは呆れる。


 それから――


 目的地に着いたのは、一時間後だった。


「急いだから、捕まった人々を助けるための時間は、十分あるぞ」


「その根拠は?」


「なぜなら、この間に盗賊の生き残りが駆けつけるのは、困難だからだ」


「ゴメスが、盗賊を足止めしてるためですね」


「手助けしたのは、正解だったな」

 

 警戒するのは、中のみ。

 ただ、想定とは異なる状況。


 確認した限りでは、出入り口は一つ。

 しかも、そこは常に見張られている。


「どう思う?」


「他にも、出入り口はあると思います。そうじゃないと、不便ですから」


「その推測には、同意する。問題は、他の出入り口を探すべきか否か」


「時間が限られてる中では、捜し歩くのは得策じゃないですね」


 俺は頷く。


「ご主人、突入と潜入、どっちを選びます?」


「もちろん、潜入しよう」


「その心は?」


「お前の力を借りれば、突入は容易だろう。ただ――」


「ただ?」


「捕まった人たちを助け出して、逃げ切るのは困難だろう」


「盗賊の親分と渡り合えたから、思い上がったのかと、心配してました」


「それぐらいで変わるほど、俺は単純じゃない」


 俺は苦笑する。


「具体的な潜入の方法は?」


「見張りに向かって石を投げて、注意を引きつける。その間に、中に入る」


「見つかりませんか?」


 スラゾウは懸念を示す。


「そのままだと、見つかる。だから、お前の〈変化〉が必要だ」


「オイラが変化する?」


「お前の隠れ蓑を利用して、周囲に溶け込みながら、中に忍び込むんだ」


「一つだと難しいから、二つを組み合わせるんですね」


 スラゾウは理解する。


「じゃあ、やるぞ」


 俺は石を拾い上げると、出入り口の付近へと投げる。


 ボコッ!


 石を一つ投げるたび、様子を見る。


 それを数度繰り返すと――


「うん?」


 やっと見張りは気づく。


「じゃあ、行くぞ」


 俺は隠れ蓑と化したスラゾウをかぶると、出入り口に近づく。

 途中、見張りは戻ってきたものの、こちらに気づかない。


 そのまま足音に気をつけつつ、中に入る。

 そうして見張りをやり過ごすと、身を隠せるところまで進む。


「うまくいきましたね?」


「そう言えば、〈異世界博士〉で確認したら、〈変化〉のランクはFだったよ」


「ランクの上昇は、努力の賜物ですね」


「いつ努力したんだ?」


「そういうご主人は、ランク上昇しました?」


 スラゾウの追求に、俺はそっぽを向いてごまかす。


「ここは、使い捨てか?」


「どうして、そう思うんです?」


「場所といい、警備といい、適当だからだ」


 会話の間も、奥に進んでいる。

 

 出入り口の付近に比べると、視界は暗くなり、通路も狭くなっている。

 それでも、許容範囲内。

 前を見渡せるし、壁にぶつからないから。


「むしろ、潜入にはこれぐらいのほうが、いいのかもしれない」


「そうですか? 暗い上に、狭いですよね」


「だからこそ、相手は即座に敵味方の判断ができないんだ」


「オイラたちは、その隙を突けばいいんですね」


 警戒するのは、挟み撃ち。

 そのため、俺は前を、スラゾウは後ろを、それぞれ見ている。


 一定以上の視界が保てるのは、等間隔に設置されているランプのため。

 ただ、その明かりは、脇道までは届いていない。

 

「行き止まりは、下手すると詰むぞ」


「こういう時、先行して探索できる仲間がいたら、便利ですね」


「壁役さえいないのに、偵察できるやつ? 無理を言うなよ」


「でも、いたら心強いでしょ?」


 俺は頷く。


 不思議なのは、一度も見回りを目撃していないこと。

 将来的に放棄するつもりだとしても、無用心。


「運の問題じゃないとしたら、どうなるんです?」


「ゴメスの密告を警戒して、捕まった人たちを他に移したのかもしれない」


「考え過ぎですよ。見張りがいるから、見回りはいないんです」


「単純な答えだな。――来る」


「明快な答えです。――来る」


 俺とスラゾウの警告は重なる。


 要するに、前後から人が来るということ。

 それも、運が悪いことに、丁字路の真ん中で。

 当然、前にも後ろにも行けないから、左に曲がる。


 道なりに進むと、確かめる間もなく扉を開け、中に入る。

 無用心なのは、前からも後ろからも、声が近づいているから。

 もちろん、俺たちを追いかけてきたんじゃなく、この部屋に用があるんだ。


「こいつは――」


 俺とスラゾウは、息を呑む。


 そこにいたのは、巨大な生命体だった。

 今回のポイントは、隠れ蓑の効果です。

 その効果に関しては、迷いました。

 結果、スキルのない相手には、チートツールになりまいた。

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