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第17話 奪還

 前回のポイント・タロウは、ゴメスとの決闘に挑んだ!

「一、二、三――」


 俺は数を数えながら、剣を打ち込んでいく。


 ガキン、ガキン、ガキン――


「八、九、十――」


 十を数えた時、ゴメスの剣を弾く!


 このまま押し切れるかと思われた時――


 ブン!


 剣は空を切る。


 ゴメスは、後ろに飛び退いたんだ。


「小僧、力を隠してたのか?」


 予想外の事態らしく、ゴメスを始めとした盗賊は驚愕している。


「切り札は、窮地に陥った時に使うものさ」


「切り札? 嘘だな」


「決めつけてくれるね」


「しくじった、と言わんばかりの顔をしてるぞ」


「ブラフだよ」


 俺は笑ってみせる。


「もし嘘なら、俺の勝ちだ。勝機は一度、お前はそれを逃した」


「それこそ、嘘だね」


「じゃあ、試すぞ?」


 直後――


 ゴメスは距離を詰めると、剣を突き出す。


 予想していた俺は、後ろに跳ぶ


 その大きく跳んだ距離さえ、ゴメスは詰めてくる。


 俺は、慌てて後ろに下がる。


「やはり、嘘だったな。負けを認めるなら、今のうちだぞ」


「冗談は、よしてくれる?」


「グズグズしてると、俺も体力を使い、目算を誤る」


「……そうなったら?」


「五体満足ではいられないと思え」


 ゴメスの脅しに、俺は黙る。

 

 素人が、熟練者を倒す方法は――


 隙を突くのみ。


「隙? スラゾウの力を借りられれば―ー」


 閃く。


「結局は、スライム頼みか? 案外、情けないやつだな」


「ゴメス、これが最後だ!」


「特攻か? おとなしく負けを認めれば、命だけは助かったものを!」


 俺の宣言に、ゴメスは剣を構える。


「スラゾウ、今だ、やれ!」


「何、だと!」


 ゴメスは、反射的に振り返る。


 そこには――


「何もいない……?」


「食らえ!」


「ブラフか!」


 隙を突いた俺は、剣を振り下ろす。


 隙を突かれたゴメスは、剣を振り上げる。


 果たして――


 俺の攻撃は、ゴメスの攻撃を上回る!


 剣こそ弾き飛ばせなかったものの、ゴメスの体勢を崩す!


「負けを認めろ!」


「負けてねえよ!」


 俺は剣を押し込み、ゴメスは剣を押し戻す。


 鍔迫り合いだ。

 当事者は真剣でも、傍目には滑稽に映るらしい。

 スラゾウを始めとした面々は、呆気に取られている。


 それが、延々と続くかと思われた時――


 ヒュン!


 音を立てて、矢が飛んでくる。


「えっ?」


「あっ?」


 離れると、その間を矢は抜けていく。


「どうして?」


 俺は、矢の飛んできたほうを見る。


 そこには――


 弓矢を構えた、子分たちの姿がある。


「決闘じゃないのかよ?」


「少なくとも、俺はそのつもりだった」


 俺の抗議に、ゴメスは弁解する。


「俺の顔に泥を塗りやがって! 手前ら、何のつもりだ?」


「あんたは、頭として失格だ」


「失格、だと?」


「失敗を重ねた挙句、子分を見殺しにしようとしただろ!」


 子分たちは激昂する。


「俺を信じてついて来い!」


「そして、死ね?」


「そんなこと言ってない」


「言ってるだろ、あんたの小言は聞き飽きた!」


 子分たちは嘲笑する。


「誰の判断だ?」


「あんたの元雇い主の判断だ」


「いずれ、自分たちも使い捨てられると、わからないのか?」


「用済みのあんたに言われても、説得力がねえよ」


「用済み……」


 ゴメスは絶句する。


「キラータロウと言ったか?」


「どこの悪役レスラーだよ!」


「お前に恨みはないが、邪魔だから用済みともども始末することにした」


「スラゾウは?」


「安心しろ、世にも珍しいスライムだから、ちゃんとしたやつに売るよ」


「安心するわけないだろ、絶対に助け出すぞ!」


 今の頭に、俺は宣言する。


 すぐに仕掛けてくる。

 その予想に反して、盗賊は様子見している。

 弓矢による、不意打ちを避けられたためだろう。


「〈異世界博士〉の効果により、対象の情報を把握する」


 俺は宣言する。


『〈異世界博士〉の指定効果、発動』


 言葉が響き、文字が浮かぶ。


 【ステータス】、【パラメーター】――


「要点は三つ、か」


 一、情報通りなら、この場には俺以外のテイマーはいないこと。


 二、子分のランクはG、そのため単体では問題ないこと。


 三、スラゾウの〈変化〉のスキルが、GからFへと上がったこと。


 以上の点からわかることは――


 俺だけじゃ、包囲を突破するのは困難。


「おい、小僧」


「何だ、おっさん」


「手を貸せ」


「あいつらを叩きのめせる、算段でも整ったのか?」


「あぁ、だから手を貸せ」


「わかった、でも一度きりだ」


「ふん、当たり前だ。そもそも、勝負はついちゃいない」


 俺は呆れる。


「肝心の方法は?」


「俺が先に仕掛ける。その隙に、手前はスライムを取り返して逃げろ」


「あんたは?」


「俺はけじめをつける必要がある」

 

 ゴメスは頷く。


「最後に、一つ言っておくことがある」


「何だよ?」


「俺たちが捕まえた連中は、ここから北に進んだところにある、鉱山にいる」


「目的地は、北の鉱山ね」


「町に戻ると手遅れだから、もし助けたいなら、このまま向かえ」


「好機は、短期間の上に一度ね」


 俺は頷く。


「俺は行くぞ」


「おっさん、死ぬなよ」


「ふっ、馬鹿なこと言ってるんじゃねえよ、小僧が。――手前こそ、死ぬなよ」


 ゴメスは笑う。


「止まれ、止まらないと撃つぞ?」


「俺は用済みなんだろ? 止まっても止まらなくても撃つなら、止まらねえよ」


「くそっ、こいつを狙え!」


 ゴメスが拒むと、今の頭は叫ぶ。


 だが、その判断は明らかに遅かった。


 歩くことから走ることへと、切り替えていたゴメスは――


「手前ら、覚悟しろ!」


 矢が飛んでくる前に、賊の群れに突っ込む。


「殺せ、殺しちまえ!」


 今の頭の言葉を機に、乱戦が始まる。


 それに伴い、怒声と悲鳴が飛び交う。


「見とれてる場合じゃないぞ!」


 俺は、盗賊の群れに突っ込む。


 目的は――

 

 スラゾウを助け出すこと。


 そのため、スラゾウを捕まえている、盗賊を探している。


「スラゾウ、どこだ!」


「ご主人、ここです!」


 俺の呼びかけに、スラゾウは応じる。


 俺は牽制のために剣をぶん回しながら、声のしたほうに近寄る。


 盗賊の群れを割って進んでいくと――


 見つけた!


「く、来るな、来たらこいつを――」


 迫り来る俺に対して、盗賊は警告するように、スラゾウを突き出す。

 

 剣を振り下ろすと、盗賊の腕ごとスラゾウを切ることになる。

 俺は剣の平の部分を用いて、盗賊の両腕を打つ。


「ぐはっ!」


 賊はうめくと、スラゾウを手放す。


 スラゾウは地面に着地すると、俺の差し出した剣を上り、肩に乗る。


「ご主人、遅いですよ!」


「お前は、文句しか言えないのか!」


「元気な証拠ですから、喜んでください!」


「そんなことより、逃げるぞ!」


「ええ、とっとと逃げましょ!」


 俺たちは頷き合う。


「死にたくなければ、どけ!」


 俺は突破のために剣をぶん回しながら、盗賊の群れを突っ切る。


 人の輪の外に出ると、振り返る。

 

 視線の先には――


 剣が折れたために、窮地に陥っているゴメスの姿があった。


 武器を失ったゴメスに、盗賊は襲い掛かる。

 ゴメスに向かって、俺は持っていた剣を投げる。

 ゴメスは飛んできた剣を掴むと、襲ってきた盗賊を迎え撃つ。


「俺の役目は終わりだ。後はゴメスの役目だ。――行こう」


 感傷を断ち切った俺は、北にある鉱山を目指して走り出す。

 最後に、ゴメスに剣を渡すのには理由があります。

 それは、ゴメス生存ルートの確保です。

 ただ、この時点では、その後の役割は決めていませんでした。

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覚醒テイマーの成り上がり
設定を変えた別バージョンは、全部書き直してます。
― 新着の感想 ―
[良い点] ありがちなチートラッシュではなくしっかりと構成が練られているところ [気になる点] 本来読者側が思考したり展開を予想したりするのが楽しいのに作者コメントのネタバレやメタフィクションのせいで…
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