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第15話 スラゾウの失踪

 前回のポイント・エリザは、受付嬢になった!

 面談は、終わりのようだ。


 エリザは書類に視線を落とすと――


「これであなたは、正式にテイマーギルドに加入しました」


 よそよそしく言ったから。


「これ、ギルドマスターの台詞なの。受付嬢、それも見習いの仕事じゃないの」


「それなら、どうして?」


「父さんは昨日の事件のため、とても忙しいの」


 話によると、フェルは評議会の会合に行ったきり、戻ってきていないらしい。


「結局、マスター立会いの下行われる、宣誓はなくなったの?」


「後日ね。もっとも、日程は決まっていないけど」


「事実上の無期限延期だね。でも、期待してるよ」


 エリザは頷く。


「そして、お待ちかねの活動費」


「重いぞ?」


「香辛料の件が、依頼として処理されたから当然ね」


「依頼?」


「町までの護衛を依頼として処理して、その報酬から香辛料の代金を支払ったの」


「重いのは、その差額分のため、か」


「だから、本当に気にしなくていいのよ」


 俺は頷く。


「ご主人、中を確かめさせてくださいよ!」


 スラゾウは、皮袋の中をあさる。


「報酬は、期日により受け取るものと、依頼により受け取るものと、二つあるわ」


「これは、前者に当たるみたいだね?」


「無駄遣いするつもりがないなら、それだけでも十分暮らせるわ」


 エリザは、節約生活を勧めてくる。


「この後、俺は町を散策するつもりだけど、エリザはどうする?」


「私も同行したいところだけど、タロウの書類をまとめないといけないの」


「書類整理?」


「だから、私の分も町を回ってきて」


「わかった」


 俺は頷く。


「フラれましたね?」


「どうして、そうなる!」


「痛いところを突かれると、人は怒るそうですよぉ」


 スラゾウは調子に乗る。


 当のエリザは見送ってくれるらしく、楽しそうについてくる。


「そう言えば、どうしてあの宿を用意したんだ?」


「マリーさんと顔見知りらしいわ。だから、タロウに判断して欲しかったみたい」


「判断?」


「最近、ガラの悪い連中が出入りしている、という噂があるの」


「それ以前の問題だね。俺以外に、客はいないよ」


「それなら、大丈夫そうね。マリーさんには、そう報告しておくわ」


「いい親子だよ。少なくとも、今のところは」


 どうして、今のところ、なのだろう?


「報告を楽しみにしているから!」


 エリザの言葉を背に、俺とスラゾウはギルドを後にする。


「さて、どうしよう?」


 単に町を散策するのは、つまらない。


 目的?


 強いて言うなら、仲間の勧誘と加入。


「信頼の置ける相手の上、壁役としての力を発揮できる魔物……無理だろ」


「信頼の置ける相手の上、頭脳派のオイラもいますし、どこかにいますよ」


「お前、頭脳派のつもりなのか?」


「スライム差別ですかぁ? 親戚のスライムの人権大使に、言いつけますよぉ」


「人権じゃなく、スラ権だろ。そもそも、そんなやついるのか?」


 俺は首をひねる。


「たとえば、奴隷市場はないのか?」


「ご主人、可愛い奴隷のヒロインを、ゲットするつもりですね」


「そんなつもりはない」


 俺は苦笑する。


「あるいは、魔物市場はないのか?」


「ご主人、命をお金でやり取りするんですね」


「お前、時折、厳しいことを言うね」


 俺は閉口する。


 奴隷市場にしても、魔物市場にしても、期待は薄いだろう。


「とりあえず昼になったし、宿に帰って食事にしないか?」


「賛成!」


 宿に戻ることにしたのは、エリザとのやり取りのため。

 宿の親子に、危険が迫っているかもしれない。

 そう危惧した俺は、足早に宿に向かう。


 予想とは異なり、宿は平穏そのもの。

 もちろん、血の痕跡は見当たらないし、悲鳴の類も聞き取れない。


 ただ、胡散臭い男が、宿から立ち去るのを目にする。

 相手の立場と目的はわからないものの、不安は残る。


「スラゾウ、今の男に見覚えはあるか?」


「ありませんけど?」


「盗賊の一員かと、思ったんだ」


「町を拠点にしてる盗賊、ガラの悪い連中……一致しますね」


 立ち去った男のこともあり、俺は宿の中を見る。

 当然なのか、意外なのか、不穏な雰囲気はない。


「まぁ、平和ならいいんだけど――」


 宿に戻ってきた俺たちを見ると、親子は頷き合う。

 俺たちに合わせるように、アンナはテーブルに座る。 


「面倒だから、一緒に食べちゃいなさいと、お母さんに言われたの」


「待ってたの?」


「単に合わせただけ」


「それなら、よかった」


 会話の間も、アンナはスラゾウが気になるらしく、ぺたぺたと触っている。


「いやぁん!」


「……何だ、今の気色の悪い声は?」


「スライムのミルキーボイスに、ケチをつけるんですか?」


「子供の前だから、自重しろ」


「ご主人とは違い、アンナは扱いが丁寧ですねぇ」


 雑談していると――


「誰でも構わないから、料理を運んで」


 ハンナの呼び声が聞こえる。


「ご主人、料理を運んできてください」


「俺?」


「オイラも、アンナも、手がふさがってるんですよ?」


 遊んでいる両者の手は、ふさがっている。


「仕方ない。四人分はありそうだから、俺が取ってくるよ」


「いいの?」


「君は、スラゾウと遊んでいてくれ」


「うん」


「スラゾウ、アンナから目を離すなよ?」


 俺は奥に向かう。


 奥に着くと、ハンナの指示に従い、料理を盛る皿を探す。

 それから、料理を持った皿をテーブルに運ぶ。

 大変じゃないものの、時間がかかる。


「スラゾウ……いないな。あいつ、どこに行ったんだ?」


「……用があるらしく、部屋に行ったよ」


「見てくる」


 俺は部屋に向かう。


 部屋の中に入ると、スラゾウの姿はなかった。


「スラゾウのやつ、部屋に入らなかったのか? そうだとしたら――」


 俺は奥に向かう。


「どうしたんです?」


「スラゾウの行方を知ってるか?」


「……知りません」


「それなら、どうしてスラゾウが消えたのか、答えられるか?」


「それは……」


 ハンナは言葉に詰まる。


「お母さんは、悪くない! あたしが、スラゾウを渡したの!」


「どうして?」


「盗賊に捕まった、お父さんを助けるためよ!」


 アンナは叫ぶ。


「盗賊? 事情を説明してくれ!」

 

 俺の言葉に、アンナとハンナは頷く。

 今回のポイントは、もちろんスラゾウの失踪です。

 これに関しては、苦労しました。

 タロウとスラゾウは、くっついて離れないからです。

 そのため、タロウには雑用を押しつけました。

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設定を変えた別バージョンは、全部書き直してます。
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