幕間9 黒幕の正体
前回のポイント・タロウは、二人の聖堂騎士団長と戦いになった!
大聖堂上空。
そこに、二つの影がある。
一つは、クーデリアの乗ったペガサス。
もう一つは、誰も乗っていないガルコ。
「守りの隙を突きましょう!」
「がるるるぅ!」
「賛成しているのはわかるけれど、やはり言葉が通じないのは不便ね」
「がるるるぅ?」
「こっちの問題。タロウは、よくガルーダの言いたいことがわかるわね?」
ガルコの反応からして、表情を読んでいるとは考えられない。
タロウ固有のスキル、〈異世界王〉による、言葉の読み取りに違いない。
ただ、スキルに限らず、相性の有無も関係していそうだ。
「それよりも、祖父を救出しないと!」
「ペガァァァ!」
クーデリアの指示に従い、ペガサスは大聖堂に向かう。
「馬……?」
「人……?」
「侵入者だ!」
侵入者を発見したらしく、地上から矢が飛んでくる。
ヒュン、ヒュン、ヒュン――
矢の雨。
しかし、いずれも上空までは届かない。
「ペガサス、このまま突っ切って!」
「ペガァァァ!」
矢の雨を無視して、大聖堂に向かう。
その間も、弓による攻撃は続く。
ヒュン、ヒュン、ヒュン――
そのうちに、矢が届き始める。
監視塔を利用して、飛距離を稼いでいるらしい。
ただ――
危険を覚える前に、防衛線を突破する。
標的は二体いるため、攻撃は分散したのだ。
「ガルーダ、内部に侵入するための道を作って!」
「がるるるぅ!」
ガルコは、翼の刃を飛ばす。
ガシャン!
それは、外壁を突き破る。
それに伴い、外壁に穴が空く。
「中に入りましょう!」
「がるるるぅ!」
「ペガァァァ!」
穴の中に、クーデリアはペガサスに乗ったまま飛び込む。
果たして――
迎撃はない。
それどころか、無人。
「無人……警戒しながら、先に進みましょう!」
クーデリアは不審を覚えたものの、先に進む。
移動はもちろん、ペガサスに乗ったまま。
それが可能なだけの広さが、大聖堂にはある。
構造を熟知しているため、迷うことなく通路を進む。
しばらくすると、ペガサスを降りる。
さすがにここからは、降りないとまずい。
ペガサスに待機を指示して、クーデリアはガルコとともに、先に進む。
「見えた!」
クーデリアは歓喜の声を上げる。
そこは――
図書室。
宗主お気に入りの場所。
軟禁するとしたら、もってこいなのだ。
実際――
図書室には似つかわしくない、警備の兵士が数人いる。
「侵入者……クーデリア様!」
「祖父は、中にいるのね?」
「宗主様は、中にいます。ただ――」
警備の兵士はためらう。
「ただ?」
「暗殺未遂犯であるあなたには、会わせられません!」
「……仕方ない、クーデリアコローナ、推して参る!」
クーデリアは剣を抜き放つと、警備の兵士に襲い掛かった。
ガルコの加勢もあり、決着はあっという間につく。
「鍵を探しましょう」
「がるるるぅ」
クーデリアは、気を失った兵士の懐を探る。
一本の鍵を取り出すと、図書室の扉を開く。
中には――
「騒々しいな、これでは読書も満足にできんぞ?」
「相変わらずですね、おじい様」
「その声は……クーデリア!」
宗主は驚きのあまり、持っていた本を取り落とす。
「おじい様、助けに参りました」
「一人なのか?」
「仲間と一緒です」
「仲間……ガルーダか!」
宗主は息を呑む。
「ライトの仲間か?」
「いえ、私たちの仲間です」
「ようやく偽物だと、ガルーダもわかったのか」
宗主は皮肉る。
「ライトは、本当に偽物なのですか?」
「間違いなく、偽物だ。このわしが、間違うわけがない」
「フンババから聞きましたけど、私たちは光の御子の子孫なのでしょう?」
クーデリアは確認する。
「わしは、光の御子の孫じゃ」
「それなら、私は光の御子の孫の孫?」
「その通りじゃ」
宗主は同意する。
「なぜ、そんな大切なことを隠していたのです?」
「他ならない、光の御子の意思じゃ」
「おじい様の、おじい様の意思?」
「この世界のことは、この世界の住民に任せたかったらしい」
宗主は、光の御子の心中を察する。
「でも、無理だった?」
「光の御子の死に伴い、世界を争いが覆ったのじゃ」
「そして?」
「わしは苦しんでいる人々を救うために、聖堂教会を立ち上げたのじゃ」
クーデリアは頷く。
「がるるるぅ!」
「敵……? おじい様、安全な場所に避難しましょう!」
ガルコの警告を受けて、クーデリアは進言する。
「安全な場所? あやつが相手では、聖域内に安全な場所などないぞ」
「なぜ?」
「なぜなら、あやつは――」
宗主の言葉は、途切れる。
「僕は、光の御子の呪縛から逃れた、光の巨人だから!」
突然、背後から聞こえた、ライトの声によって。
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正体に関しては、苦労しませんでした。
苦労したのは、前半部分です。
クーデリア以外、しゃべれないのは誤算でした。
スラゾウとゴレタの存在は、ありがたいですね。