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第121話 竜騎士と薔薇騎士

 前回のポイント・侵入経路は、二つある!

 聖誕祭の早朝。


 俺たちは、大聖堂に通じている、地下通路を進んでいる。


「暗いですね」


「狭いっすね」


「文句は受け付けないぞ?」


「ブーブー!」


「プープー!」


「気づかれるから、ブーイングはやめろ!」


 スラゾウとゴレタは、ブーイングする。


「地下飽きた!」


「潜入飽きた!」


「言い出したのは、お前らだろ!」


「堂々と正門をくぐりたい!」


「好き勝手に暴れ回りたい!」


「突入じゃなく、潜入を主張したのも、お前らだろ!」


 スラゾウとゴレタは、プラカードを掲げる。


 個人的には、地下からの潜入は受け入れている。


 その理由は――


「今回の騒動は、地下を通ってボードレスの町を脱出しただろう?」


「結局は、ペガサスを使いましたよね?」


「リンクしてるみたいだから、面白いだろ?」


「それ以外、考えられないだけっすよね?」


 スラゾウとゴレタは、痛いところを突く。


「そんなこと言われても、どうすりゃいいのさ?」


 心の中で、俺はコロコロクリーナーを動かす。


 会話の間も、一行は地下通路を進んでいる。

 その中に、クーデリアとガルコの姿はない。

 両者には、上空からの侵入ルートを担当してもらったんだ。


「本来なら、逆ですよね? こっちより、あっちのほうが危険でしょ」


「上空からの侵入ルートは、罠じゃない」


「それなら、地下からの侵入ルートは?」


「もちろん、罠だ」


 スラゾウは頷く。


「この先には、敵が待ち構えてるんすね?」


「もちろん、待ち構えてる。それこそ、敵の主力が」


「大軍じゃなく、主力?」


「俺の最強無敵チートなら、数は無意味だ。意味があるのは、個々の戦力だ」


 ゴレタは頷く。


 俺たちの目的は――


 ライトを叩きのめすことじゃなく、宗主を救い出すこと。

 そのため、戦力を分散して、主力を地下に回したんだ。

 もちろん、その間に目的を達成するために。


 むろん――


 ライトとの戦いは、避けられない。

 ただ、遠ざけることはできる。

 黒幕の討伐と人質の救出と、順番は入れ替えられるんだ。


「ご主人?」


「兄貴?」


 突然、立ち止まった俺に、両肩のスラゾウとゴレタは困惑する。


「敵の待ち伏せだ……シモン!」


 開けた場所にいたのは――


 暗殺者シモン。


「残念だったな、クーデリアならいないぞ!」


「いてもいなくても、構わん。主からの伝言がある」


「ライトからの伝言?」


 俺は身構える。


「今日は、始まりの日だ。僕にとっての、あるいは君にとっての。さぁ、争おう」


 シモンの言葉は、不気味に聞こえる。


「ライトはそのつもりみたいだけど、シモンもそのつもりなのか?」


「私に、自由意志はない。そんなものは、とっくの昔に捨てた」


「捨てなら、拾えばいいだろ。今からでも、遅くないぜ」


 俺は、立ち去ろうとするシモンを引き止める。


「……私も、彼も、覚悟を決めた」


「彼?」


「真の暗殺者だ。再会した時、あなたは絶望する」


「絶望……待て、シモン!」


 伝言役らしく、役目を終えたシモンは、通路の奥に消える。


「追いかけよう!」


 シモンの姿を求めて、俺は通路をひた走る。


 暗くて狭い通路を抜け切った先は――


 明るくて広い空間。


 広大な中庭には、見覚えのある二人。


 どちらも、甲冑を着込んでいる。

 その光沢からして、特殊な金属によるものだ。

 それこそ、ミスリルクラスの貴重品だろう。


「ご主人、グレゴールですよ!」


「兄貴、スカーレットっすよ!」


 そう、一度相対したことのある、二名の聖堂騎士団の団長が待ち構えていた!


「久しぶりだな、キラタロウ」


「また会ったわね、勇者スラゾウと勇者ゴレタ」


 グレゴールとスカーレットは微笑む。


 その笑みは、凄惨に見える。

 覚悟を決めた者特有の、人を引きつける笑み。

 それには、相手の死はもちろん、自分の死も含まれている。


「死ぬつもりかよ?」


「破滅願望はない」


「それなら、どうして?」


「もちろん、勝つためだ!」


 グレゴールとスカーレットは、頷き合う。


「ライトの指示か?」


「上からの指示だ」


「その指示に従う必要はないだろ?」


「たとえ宗主様以外でも、我々はその指示に違う」


 グレゴールは反論する。


「どうして?」


「それが、我々の使命だからだ」


「そんな使命、捨てちまえよ!」


「君は、クーデリアコローナを見捨てられるの?」


「それは……」


「君が大切な人を見捨てられないように、我々も大切な人を見捨てられない!」


 スカーレットは主張する。


「話は、終わりだ。戦いを始めよう!」


「勝っても負けても、最後の戦いね。今度は、負けない!」


 グレゴールとスカーレットは、言い放つ。


「ご主人?」


「兄貴?」


「……戦おう。それ以外の選択肢はない」


「勝ちましょ?」


「生き残りましょ?」


「黒幕を討つために、絶対に勝ち残るぞ!」


 俺たちは頷き合う。


 直後――


『エクストラスキルの発動を確認しました』


 不穏な言葉が浮かぶ。


【データベース・エクストラスキル〈竜騎士の魂(ドラゴンウォーリア)〉】


 記録者の、もっとも信頼する者の必殺技。


 契約する竜の力を、自身に加えられるスキル。


 契約する竜の戦闘力により変動するものの、その効果はずば抜けている。


 一時的とはいえ、その戦闘力は英雄に匹敵する。


【データベース・エクストラスキル〈戦乙女の心(ヴァルキュリア)〉】


 記録者の、もっとも信愛する者の必殺技。


 尊敬の念を受ける相手の信仰心を、自身に加えられるスキル。


 対象の信仰心により変動するものの、その効果はずば抜けている。


 一時とはいえ、その信仰心は聖女に匹敵する。


「戦闘力と信仰心を引き上げる、エクストラスキル?」


 同時――


「一撃目!」


「先手必勝!」


 俺の間合いに、グレゴールとスカーレットが、同時に飛び込んできた!

 読んでくださって、ありがとうございます。

 ブックマーク等の応援、ありがとうございます。


 今回の話は、当初から予定していました。

 そのため、一度目にはエクストラスキルを使いませんでした。

 もちろん、二度目の今回に使うためです。

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覚醒テイマーの成り上がり
設定を変えた別バージョンは、全部書き直してます。
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