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第120話 決戦前夜

 前回のポイント・タロウは、ライトから宣戦布告を受けた!

 決戦の日時は、決まった。

 光の御子の聖誕祭当日である。

 それまでに、準備を整える。


「こいつらから、見舞金を奪い返そう」


「ライトも、そのつもりだったみたいね」


「今頃、光の御子の名を騙った下種は、処分されてるかもしれないな」


「そうかしら? 私と祖父以外には甘いから、見逃しているかもしれないわ」


 俺とクーデリアの見解は、対立する。


 それから――


 自称・光の御子の代弁者を叩き起こす。

 全員を正座させて、被害者に関わらないように、徹底的に叱る。

 その間に、見舞金を奪い返して、来た道を引き返す。


 ほどなく――


 元世話役の少女の家に、たどり着く。

 そこには、かなりの数の少女が集まっている。

 いずれも光を失っているらしく、視線はさまよっている。


「ライトの野郎――」


「タロウは黙ってて」


 憤る俺を制して、クーデリアは少女たちから話を聞く。


「辛いかもしれないけれど、その時のことを教えて欲しいの」


「感情を高ぶらせたライト様から、人型の光が膨れ上がりました」


「その眩しさに、光を失ったの?」


「眩しくはなかったです」


 少女たちは首を横に振る。


「それなのに、光を失ったの?」


「今でも、その姿は目に焼きついてます」


「それは?」


「のっぺりとした、泥の塊のような人型の光です」


 本当に目に焼きついているらしく、少女たちの感想は一致する。


「その人型の光に、心当たりはある?」


「ありません。ただ――」


「ただ?」


「意思のない人形みたいでした」


 その言葉を最後に、少女たちは口を閉ざす。


「これ、奪い返した見舞金。連中も反省してるから、安心して欲しい」


 それぞれの少女に、少なくない金を渡す。

 その中には、情報料という名の、俺からの見舞金も含まれている。

 それには、さすがの少女たちも、表情を和らげる。


「守銭奴のタロウにしては、粋な計らいね!」


「守銭奴は、余計だろ!」


「いちいち支出を計算して、メモに残してるでしょう!」


「貧しい者からは取らない代わりに、富める者からは取るんだよ!」


 俺たちの下らない言い合いに――


「ふふふ」


 少女たちの間に、笑いが起きる。


「みんな、いろいろありがとう! 俺たちは、宿に帰るよ」


「キラタロウさん、ライト様に一つだけお伝えください」


「伝言?」


 俺は身構える。


「光の御子を許してください、と」


「それだけ?」


「それだけです」


「わかった、必ず伝える」


 そう言い残して、俺とクーデリアは少女の家を後にする。


「あの子たちは、強いな?」


「強い?」


「恨んだほうが、気は楽だろ? それなのに、恨まないんだぜ!」


「それだけ優しくされたのよ。タロウも、見習ったら?」


「迷惑料を上乗せして、請求するぞ?」


 俺の嫌味に、クーデリアは肩を竦める。


 会話の間に、宿に着く。

 予想外に時間を取られたため、日は暮れている。

 部屋じゃなく、食堂に向かう。


 そこには――


「ご主人、遅いですよぉ」


「兄貴、待ちくたびれたっすぅ」


「がるるるぅ」


 スラゾウ、ゴレタ、ガルコは、食事を開始している。


「乳繰り合ってたんですね?」


「不純異性交遊に走ってたんすね?」


「けなげな少女たちに、救いの手を差し伸べてたんだよ!」


 お約束のボケとツッコミに、笑いが起こる。


「笑い?」


「君は、相変わらずだねぇ」


「あなたは……トニーさん!」


 そう、食堂にいたのは、見覚えのあるトニーたちだった!


「トニーさんがいるなら、タルタルも?」


「君たちから預かったペガサスなら、宿の中にいるよ?」


「非常食のくせに、宿の中かよ!」


「ペガサスを非常食扱いするのは、やめるべきだと思うよ?」


 トニーは苦言を呈する。


「よくここに、俺たちがいるとわかりましたね?」


「ここは、親戚の経営してる宿なんだよ?」


「すごい偶然ですね!」


「ご都合主義だろう!」


 トニーはおどける。


 それから――


 俺とクーデリアも、食事を始める。

 トニーの家族も加わっているため、自然とにぎやかになる。


「このミートパイは、おいしいですねぇ!」


「このフルーツタルトは、うまいっすぅ!」


「がるるるぅ!」


 スラゾウ、ゴレタ、ガルコは、料理を楽しんでいる。


「魔物の群れに、襲われたんですか? それは、大変でしたね!」


「ペガサスの傷は、治ったんですか? 本当に、よかった!」


「私たちの苦労はここまでだけど、君たちの苦労はこれからだね!」


 俺、クーデリア、トニーは、会話を楽しんでいる。


「それじゃあ、また!」


 夜遅くまで続いたものの、懇親会はお開きになる。

 俺たちは情報交換のため、片方の部屋に集まる。


「大聖堂に侵入するための道は、見つかったか?」


「もちろん、見つかりましたよ」


「お前ら……すごいな!」


 俺はびっくりする。


「そういうご主人たちは?」


「ヒントは見つけたけど、正体の特定には至ってない」


「二人とも……駄目ですね!」


 スラゾウはがっかりする。


「人型の光、意思のない人形……成果は上がっているわ」


「一応っすよね?」


「一応でも、成果よ?」


 クーデリアは主張する。


「それよりも、ライトに会えたことのほうが成果っすね」


「そうかしら?」


「聖誕祭の当日までは、事実上の休戦っすよね?」


 ゴレタは指摘する。


「がるるるぅ」


「大聖堂の守りの弱いところは、罠じゃないみたい?」


「がるるるぅ」


「その弱いところは、空からなら侵入できる?」


「がるるるぅ」


 ガルコは検証した情報を誇る。


「要約すると――」


 大聖堂に侵入するための道は、二つ。

 

 一、上空から、隙を突く。

 二、地下から、隙を突く。


「侵入経路は、どっちがいいと思う?」


 俺は話を振る。


「地下ですね、安全でしょ」


「同じく地下っすね、確実でしょ」


 スラゾウとゴレタは、地下ルートを主張する。


「今ならペガサスを利用できるから、上空ね」


「がるるるぅ」


 クーデリアとガルコは、上空ルートを主張する。


「意見は、五分五分、か」


 俺は考え込む。


 上空にしても、地下にしても、メリットとデメリットが存在する。


 前者のメリットは、時間がかからない。

 前者のデメリットは、比較的危険。


 後者のメリットは、比較的安全。

 後者のデメリットは、時間がかかる。


「ご主人、答えは?」


「兄貴、判断は?」


「タロウ、決定は?」


「がるるるぅ?」


 仲間の求めに応じて、俺は覚悟を決める。


「決めた、侵入経路は――」


 それは、自分でも意外なものだった。

 読んでくださって、ありがとうございます。

 ブックマーク等の応援、ありがとうございます。


 トニーの再登場と、ペガサスの再利用は決まっていました。

 もちろん、決戦のための仕込みです。

 次回は、いよいよ大聖堂に侵入します。

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