表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
126/137

第118話 光を求めて

 前回のポイント・今後の方針は決まった!

 決まった方針は――


 一、大聖堂への侵入方法を見つけ出す。

 二、ライトの正体と特性を突き止める。


 問題点を指摘するとしたら――


 情報の不足。

 侵入の方法も、正体の特定も、決定的に情報が不足している。


 思いつくところだと――


 前者なら、大聖堂の建築家に当たる。

 後者なら、ライトの世話役に当たる。


「クーデリア、心当たりはないのか?」


「建築の責任者はとっくに亡くなっているし、世話役に面識はないわ」


「それなら、大聖堂の地図でも光の御子の文献でもいいから、資料はないのか?」


「資料はないけど、情報はあるわ」


 喜んでいいはずなのに、クーデリアの表情は曇っている。


「それは?」


「祖父から、聞いたことがあるの。大聖堂には、外に通じる隠し通路がある、と」


「それを使えば、大聖堂に侵入できるぞ!」


 俺は歓喜の声を上げる。


「問題は、その有無じゃなく、その場所」


「場所?」


「皆目、見当がつかないのよ?」


 クーデリアは肩を竦める。


「それだけわかれば、十分だよ」


「大丈夫?」


「時間はかかるものの、問題ない」


「問題でしょう?」


「光の御子の聖誕祭に、間に合えばいいんだ。時間は、まだある」


 クーデリアは納得したように頷く。


「結局のところ、問題は――」


「ライトの正体ですね」


「ライトの特性っすね」


「それぞれの感想は?」


「オイラは、人間じゃないと思います」


「オレは、ライト固有の力だと思うっす」


 スラゾウとゴレタは主張する。


「人の姿を取った、何かの固有の力――」


 俺は言葉を呑む。


「引っ掛かったぞ!」


 ラミアの正体を見破った時のような、閃きを覚えて!


「……わからない、後少しだけど、わからない」


「心当たりがあるのね?」


「欠けてる情報さえあれば、ライトを打ち破れる!」


 俺は言い切る。


「がるるるぅ」


「ライトの世話役に、心当たりがある?」


「がるるるぅ」


「暇を出されて、聖都の親元に帰ってる?」


「がるるるぅ」


「その少女を訪ねれば、欠けてる情報を得られる!」


 ガルコは、貴重な情報をもたらす。


「ここは分かれて、情報を集めよう」


「ご主人、二手ですか?」


「片方は、ライトの情報収集。もう片方は、大聖堂の情報収集」


 スラゾウは頷く。


「兄貴、組み分けは?」


「前者は、俺とクーデリア。後者は、スラゾウとゴレタとガルコ」


「動きやすいように、人と魔物に分けたんすね」


 ゴレタは頷く。


「もしもの場合は、俺のエクストラスキルが発動するから、最悪の事態は免れる」


「ご主人、それ以外の非常事態は?」


「何はともあれ、逃走を優先する。それが無理なら、蹴散らして、逃げ切る」


 スラゾウは頷く。


「兄貴、落ち合う場所は?」


「もちろん、この宿。それが難しそうなら、巡礼の一行の宿舎」


「その時間は?」


「無理する必要はないから、夕方にしよう。必要に応じて、宿に戻ってくれ」


 ゴレタは頷く。


 それから、二手に分かれる。

 その際、ガルコに目当ての人物の情報を聞いておく。

 その情報に従い、住宅街に向かう。


 もしもに備えて、俺たちはフードを目深にかぶっている。

 普段なら目立つけれど、今は目立たない。

 聖都にやってきた大勢の信徒も、同じような姿をしているから。


「どうして、みんな、フードを目深にかぶってるんだ?」


「嘘か本当か知らないけど、光の御子を目の当たりにすると、光を失うからよ」


「光を失う?」


「偉大なる者を直視してはならない、みたいな教訓よ」


 馬鹿馬鹿しく思っているらしく、クーデリアは苦笑する。


 たどり着いた先は、住宅街の片隅。

 目立たないのはいいけれど、その立地の悪さに辟易する。

 それに、目当ての住居の、廃れ具合に哀れみを覚える。


「それっぽくないよな?」


「光の御子の世話役の実家らしくない?」


「言っちゃ悪いけど、貧相だろ?」


「地味を通り越して、貧相ね。もし機会があれば、宗主に救済を進言するわ」


 そういう視点に立てるのは、為政者の孫だからだろう。


 一度、室内を観察した後、扉をノックする。


「はい」


 弱々しい言葉に続いて、扉が開けられる。


 姿を見せたのは――


 中年の女。


 状況上、目当ての人物の母親だろう。


「すみません、娘さんに話があって、訪ねてきました」


「話?」


「娘さんが、世話役をしてた人物について、知りたいことがあるんです」


「……帰ってください」


「えっ?」


 俺とクーデリアは、顔を見合わせる。


「口止めでもされてるんですか?」


「口止めなどされていません」


「それなら、どうして?」


「これ以上、娘に負担をかけたくないんです!」


 母親は声を荒げる。


「負担?」


「娘は、光を失いました。その人の世話をしたために!」


「嘘でしょう……」


 クーデリアは絶句する。


「どういうことです?」


「娘は、見てはならないものを見てしまったそうです」


「そうしたら、光を奪われた?」


「いえ、自然と光を失ったそうです」


 母親は間違いを指摘する。


「その見てはならないものとは?」


 母親は首を横に振る。


 そんなことは知りたくもない、と言わんばかりに。


「ライトのやつ、本物の光の御子なのか?」


「光の御子みたいなものでしょう。本人も、そう言っていたわよ?」


「それなら、どうして――」


 俺の言葉は、途切れる。


「あたしは、人型の光を見ました!」


 転ぶようにして、外に出てきた少女を見て。


 当の少女は光を失っているらしく、視線はさまよっている。


「大丈夫?」


「大丈夫です」


 駆け寄ったクーデリアは、少女を助け起こす。


「ライト様は、優しいお方でした。一点を除いて」


「それは?」


「光の御子に対する感情です」


「ライトは、光の御子に対しては厳しい?」


 俺は聞き返す。


「感情を荒げます。そして、そのたび光を失います」


「誰が?」


「あたしのような、お世話をしてる者が」


「君のほかにも、犠牲者はいるのか!」


「……はい」


 少女は力なく頷く。


 光を失った少女を目の当たりにした俺は――


「ライトの野郎……今度会った時は、絶対に叩きのめす!」


 黒幕の打倒を固く心に誓った。

 読んでくださって、ありがとうございます。

 ブックマーク等の応援、ありがとうございます。


 断っておくと、欝展開ではありません。

 少女の件に関しては、救済が待っています。

 安心して、今後も読んでください。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
新作へのリンクです
覚醒テイマーの成り上がり
設定を変えた別バージョンは、全部書き直してます。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ