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第117話 聖都到着

 前回のポイント・タロウたちは生きている!

 長く苦しい旅の果てに、聖都にたどり着いたのは、巡礼の一行。

 その目的は、光の御子の聖誕祭への参加。

 年に一度の祝祭に、世界中から信徒が集まってきている。


 信徒の行き先は――


 大聖堂。

 遠くに、壮麗かつ巨大な建物が見える。

 光の御子を象徴する、世界的建築物らしい。


 その威容を見た信徒の間から、ため息交じりの歓声が上がる。

 うぉ、とか、ほぉ、とか。

 その中には、俺たちの声も混じっている。


 俺たち――


「元いた世界だと、サン・ピエトロ大聖堂みたいなものか?」


「すごくおいしそうなケーキみたいですねぇ!」


「すごく大きいオモチャの城みたいっすぅ!」


「ケーキでもオモチャでもなく、本物よ?」


「がるるるぅ!」


 俺、スラゾウ、ゴレタ、クーデリア、それにガルコ。


 パーティにガルコが加わっていることに、違和感はない。

 共闘の途中から少しずつ減っていたものの、今はまったくなくなっている。

 

 いろいろ理由はあるけれど、一番の理由は――


 ライトの〈煉獄(ゲヘナ)〉を食らった際の行動。

 俺を地下の避難場所に引っ張り込んだのが、ガルコなんだ。


「ここは、遠かったですねぇ」


「すごく、大変だったすぅ」


「それに、時間もかかったわ」


「がるるるぅ」


 仲間は感傷に浸っている。


 仲間?

 スラゾウとゴレタはもちろん、クーデリアもガルコもそう。

 俺たちは、固い絆で結ばれている。


 ただ――


 契約していない。

 近いうちに、その機会は訪れると、気づいているから。

 俺に限らず、ガルコも。


「このまま大聖堂まで向かえればいいんだけど、無理そうだな?」


 無事に聖都にたどり着いたものの、大聖堂まではかなりの距離がある。

 しかも、町は迷路のように、入り組んでいる。

 加えて、至るところに、臨時の検問が設けられている。


「巡礼の一行から、離れよう」


 俺の判断に、全員同意する。


 数日間の旅をともにした人々に挨拶してから、独自行動を取る。

 その際、もっともらしい理由付けをする。

 病に伏せっている、親戚の見舞いに行く、と。

 なぜなら、この後も巡礼の一行の助けを借りる可能性は、零じゃないから。


「とりあえず、宿を確保しよう。それから、今後の方針を決めよう」


 クーデリアの助言を参考に、宿を回る。

 目立たないように、慎重に一軒ずつ。

 そうして数軒を回ると、手ごろな宿を見つける。


「どう思う?」


 食事の傍ら、確保した部屋の一つに集まる。


「暗いですね」


「狭いっすね」


「部屋のことじゃない」


「少ないですね」


「高いっすね」


「食事のことでもない」


 スラゾウとゴレタはボケる。


「警備は、厳重ね」


「普段と比べて?」


「普段どころか、緊急時に比べても」


「今は、緊急時以上?」


「それこそ、戦時下ね」


 クーデリアは主張する。


 戦争は、始まっていない。

 始まるとしたら、これからだろう。


 その戦争の当事者は誰?

 もし俺たちが相手じゃないとしたら、世界を敵に回した戦争だろう。


「よりによって、世界大戦の勃発かよ!」


 その言葉は、自分のものとは思えないぐらいに、殺伐としている。


 迷いの森を半壊させた、ライトの暴力と狂気を見た今――


 世界大戦の勃発も、絵空事じゃないから!


「ライトの最終目的はわからないけど、その前にライトを止めよう!」


 俺の言葉に、全員頷く。


「問題は――」


 戦争を食い止める方法。


 すぐに思いつくところだと、宗主の救出と加勢。

 宗主なら、光の御子に成り代わる前のライトを、押さえ込めるだろう。


「がるるるぅ」


「空から見た限りだと、大聖堂の守りには穴がある?」


「がるるるぅ」


「ただ、罠かもしれないから、確かめたほうがいい?」


 ガルコは警備の隙を指摘する。


「今のところ有効な手は、警備の隙を突いて、宗主を救出すること、か」


「ご主人、無策と同然ですよ?」


「兄貴、無謀と同意義っすよ?」


「お前ら、やる気をなくすようなことを言うなよ?」


「正論です」


「反論っす」


 スラゾウとゴレタは痛いところを突く。


「一番の問題は、ライトでしょう?」


「宗主の救出よりも、ライトへの対応のほうが問題?」


「何しろ、不死身よ?」


 クーデリアは指摘する。


「本当に不死身なのか?」


「疑う根拠は?」


「あの時、俺たちはライトを倒したけれど、殺していない」


「殺したでしょう?」


「それなら、殺し切っていない」


 俺は表現を切り替える。


「たとえそうだとしても、不死身は不死身でしょう?」


「ライトの特性を知るには、ライトの正体を知る必要があるだろう」


「正体を知れば、特性を知れる?」


「そうすれば、今度こそライトを殺し切れるはずだ」


 俺は主張する。


「ご主人、手がかりはあるんですか?」


「兄貴、対策は考えてるんすか?」


「心当たりなら、ある」


 その言葉に、俺以外の全員が驚く。


「それは?」


「再生」


「再生?」


「ライトは、光の巨人みたいに再生してるんじゃないか?」


「光の巨人みたいなもの……?」


 俺以外の全員が動揺する。


「光の巨人は大きいから、再生に時間がかかる。一方――」


「一方、ライトは小さいから、再生に時間がかからない?」


「そう考えると、説明がつく。実際、あの後、ライトに遭遇してないだろう?」


「あの時、力を使い果たしたから、再生に時間がかかっている……!」


 俺以外の全員が驚愕する。


「今のところ、推測だ。ただ、しばらくしたら、確証になる」


「なぜ?」


「なぜなら、ライトとの決戦は避けられないからだ!」


 俺は覚悟を形にする。


「そのために、宗主の救出と平行して、ライトの正体の特定を進めよう!」


 俺たちは頷き合った。

 読んでくださって、ありがとうございます。

 ブックマーク等の応援、ありがとうございます。


 裏話を一つ。

 本来、ガルコはシモンと同じく、パーティから外れるはずでした。

 しかし、自然とパーティに残り、仲間になりました。

 後はもちろん、契約ですね。

 その時を期待していてください。

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覚醒テイマーの成り上がり
設定を変えた別バージョンは、全部書き直してます。
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