第115話 黒幕、討ち取ったり
前回のポイント・黒幕のライトが現れた!
黒幕の登場。
予想外の事態に、俺たちは戸惑う。
「どうしたのさ、揃いも揃って驚いたような顔をして?」
「ライト、お前は光の御子なのか?」
「光の御子と言えば、光の御子だね」
「はぐらかすなよ?」
「はぐらかしていない、認識の問題だから」
ライトは肩を竦める。
「少なくとも、フンババの言う、光の御子じゃないんだろ?」
「それは、間違いなく違う。でも、もう少ししたら、間違いじゃなくなる」
「また、はぐらかしかよ?」
俺は辟易する。
「僕に欠けているものを集めているんだ」
「集め切った時、どうなる?」
「僕は、名実ともに光の御子になる」
ライトの言葉に、嘘偽りはないだろう。
少なくとも、ライトは本心からそう思っている。
「何を集めてるんだ?」
「光の御子の遺物」
「まさか――」
「そう、フンババから遺物を奪うために、君たちと連中をけしかけたんだよ」
ライトは頷く。
「その結果は?」
「聞くまでもないだろう、もちろん手に入れたよ」
「フンババは?」
「気を失っている。命に別状はないから、心配することはないよ」
ライトは安心させるように微笑む。
「あなたが、私と祖父の命を狙ったのはなぜ?」
「君たちの命を狙ったのは、そこにいるシモンとガルーダだろう?」
「はぐらかさずに答えて!」
「君たちの命を狙わせたのは、邪魔だからだ」
「自分が、光の御子になるのに?」
クーデリアは引っ掛かる。
「それとこれとは、話は別だよ。ただ、今となっては不要だね」
「不要?」
「君たちを殺す必要はなくなったんだ」
「なぜ?」
「もちろん、光の御子の遺物を集め切り、僕が光の御子になるからさ」
ライトは胸を張る。
「光の御子の遺物を集めれば、誰でも光の御子になれるのか?」
「なれるわけないでしょ、冗談は休み休み言ってよ?」
「資格でもあるのか?」
真実を追い求めて、俺は質問を重ねる。
「そんなものは存在しない」
「それなら、クーデリアは可能か?」
「不可能。もっと言うと、僕以外は不可能」
ライトの言葉は、意味深に聞こえる。
「お前は、光の御子の子孫なのか?」
「冗談でも、そんなことを言わないでよ? さすがの僕でも、気分を害するよ」
「お前、光の御子が嫌いなのか?」
「あの光の御子は嫌いだ。この光の御子は好きだ。何しろ、僕だから」
ライトの言葉からは、嫌悪が伝わってくる。
ライトは、光の御子の知り合い?
「祖父は、大丈夫なの?」
「言っただろう、殺す必要はなくなった、って」
「大丈夫なのかを聞いているの!」
「大丈夫だよ。ただ、老齢のため、日に日に衰弱しているね」
ライトの返答に、シモンを含めた全員が表情を曇らせる。
「祖父を殺すつもり?」
「殺すつもりはないけれど、死なせないつもりもない。君たち次第だね」
「交換条件?」
「そんなものに乗る、君たちじゃないだろう? もちろん、勝負さ」
ライトは挑発する。
「勝負?」
「黒幕である僕を殺せれば、問題は片付く。そうすれば、君の祖父は助かる」
「あなた、楽しんでいるの?」
「もちろん。そうでもなければ、生きている意味はないだろう?」
ライトは、こちらに視線を向ける。
「人の命を何だと思ってる?」
「言っただろう、あの光の御子は嫌いだ、って。その子孫も、嫌いなんだよ?」
「だから、宗主に対しては、手加減しない?」
「そこにいるもう一人の、あの光の御子の子孫にも、手加減しないよ」
ライトは、どす黒い殺意を漂わせる。
「クーデリア、下がってろ!」
俺は、クーデリアを下がらせる。
「キラタロウ、僕の相手は君じゃないだろう」
「俺じゃない?」
「君の出番は、まだ先だ。ただ、面白そうだから、相手になろう」
「相手になるのかよ?」
「それは、こっちの台詞。果たして、君は生き延びれるかなぁ――」
ライトの言葉は、途切れる。
俺に、殴り飛ばされて!
「思ったよりも早いね」
「思ったよりも痛いね、の間違い――」
俺の言葉は、途切れる。
ライトに、殴り飛ばされて!
「ご主人!」
「兄貴!」
スラゾウとゴレタは心配する。
「瞬間移動……? 早過ぎだろ!」
「普通に移動して、普通に攻撃しただけだよ? 君が遅過ぎるんだ」
「ほざけ!」
「だから、遅過ぎる」
俺は殴りかかるものの、空振りする。
それに会わせて、ライトは俺の後ろに回る。
背後から蹴り飛ばされた俺は、地面に転がる。
「タロウ!」
「がるるるぅ!」
クーデリアとガルコは警告する。
直後――
地面に転がった俺の上に、ライトは跳ぶ。
警戒していた俺は、地面を転がるように避ける。
少し前まで俺のいた地面が、えぐられたように削り取られる。
「何だよ……その威力!」
「グレゴール、スカーレット、フンババ、強者を三名退けた者の台詞じゃないね」
「馬鹿にしてるのか?」
「驚いているんだよ。巣の状態の君を、叩きのめせないことに」
ライトは、拳を振り下ろす。
ドン!
その一撃は、強烈。
地割れを引き起こして、その余波は俺に及ぶ。
俺は慌てて立ち上がると、地割れを飛び越える。
「逃げてばかりだと、僕には勝てないよ?」
「逃げてるんじゃない、避けてるんだ」
「これぐらいの攻撃は、簡単にしのいでくれないと、楽しめないよ?」
「ほざけ!」
俺は、距離を詰める。
「ゴレタ、スラゾウを投げてくれ」
「投げるんすね、了解」
「スラゾウ、剣になってくれ」
「剣ですね、了解」
ゴレタは、スラゾウを抱えると、勢いよく投げる。
スラゾウは宙を飛ぶ間に、剣に〈変化〉する。
俺は飛んで来たスラゾウソードを掴むと、勢いを保ったまま振り下ろす。
その一撃は、ライトの首筋を捉える寸前――
ガキン!
シモンによって、受け止められる。
「シモン!」
「さすがに、主を見殺しにはできん!」
「そいつは、光の御子じゃないんだぞ!」
俺とシモンは睨み合う。
「フンババの知る、光の御子ではないだけだろう」
「もう一人の光の御子だと、言いたいのか?」
「光の御子に類するものなら、命を捧げよう」
シモンは覚悟を決める。
「シモン!」
「キラタロウ!」
ガキン、ガキン、ガキン――
俺とシモンの打ち合いは続く。
それをライトは、楽しそうに眺めている。
「もう一人の光の御子を騙る者よ、さようなら!」
いつの間にか、距離を詰めていたクーデリアは、剣を払う。
その一撃は、ライトの首を刎ねる!
「これは、一本取られた――」
その言葉を最後に、ライトは地面に崩れる。
「主!」
シモンは、ライトに駆け寄る。
ガルコは、俺の周りをうろうろしている。
「黒幕を討ち取ったわ、後は祖父を救出するだけね!」
クーデリアは勝利宣言とともに、剣を天高く掲げた。
読んでくださって、ありがとうございます。
ブックマーク等の応援、ありがとうございます。
打ち切り展開ではないから、安心してください。
ただ、話の展開としては、安心できないかもしれません。
そもそも、肝心の黒幕の正体も不明ですから。