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第113話 森の宝

 前回のポイント・騎士王モードにより、フンババを倒した!

 しばらく勝ち誇った後、俺はフンババに視線を向ける。


「フンババ、案内してくれ」


「案内? フンババは、死んでいるでしょう!」


「いや、生きてる。なぜなら、手加減したからだ。――そうだろ、フンババ?」


 俺の言葉に応じるように、フンババは身動きする。


「動いた!」


 クーデリアたちは驚く。


「生きてるんだから、動くさ」


「そういう問題?」


 クーデリアたちは呆れる。


「キラタロウ、なぜ手加減したのだ?」


「案内させるためさ」


「それだけか?」


「何より、俺たちを森に閉じ込めた理由を、知りたかったからさ」


「それは、確かに気になる」


 シモンは頷く。


「そういうことだから、フンババ、案内しろよ?」


「主の残した力さえ退けられた今、我々に手はない。――好きにしろ」


 フンババはふてくされたように、歩き出す。


「みんな、行こう!」


 俺たちは、フンババの後をついていく。


「フンババ、縮んだわね?」


「力を失ったためか?」


 俺とクーデリアは首をひねる。


「これが、本来の大きさだ。先ほどまでは、無理やり巨大化していた」


 今のフンババの大きさは、他の猿の魔物と同じぐらい。


 フンババに従い、森の最深部を目指す。


 しばらくすると、開けた場所にたどり着く。


 そこは――


「墓?」


 俺たちは顔を見合わせる。


 墓石と思しき石が、複数並んでいる。

 その中心には、花の添えられた石がある。


「誰の墓だ?」


「主と、仲間の墓だ」


「もしかして――」


「これが、我々の宝だ。お前たちにとっては、どうだ?」


 フンババの言葉は、挑発のように響く。


「盗掘するつもりはないよ。――そうだろ、みんな?」


 俺の言葉に、全員頷く。


「それより、なぜ我々を閉じ込めた?」


 元から宝に興味はないらしく、シモンは話を先に進める。


「侵入者を感知したからだ」


「侵入者?」


「善悪の区別を別にすれば、主に類する存在だ」


 フンババの視線は、俺に留まっている。


「たぶん、俺だろう」


「問題の元凶ですね!」


「事件の黒幕っすね!」


「俺は悪くないぞ!」


 俺は抗議する。


「善悪の判断は?」


「結論を言えば、主同様、よき来訪者だ」


 クーデリアの問いに、フンババは答える。


「それにしても、驚いた」


「驚いた?」


「主の気配を感じるとは」


「俺?」


 俺は自分を指差す。


「お前ではない」


「それなら、誰?」


「お前だ」


 フンババが指差したのは――


「私?」


 クーデリアは戸惑う。


「お前は、主の血を受け継いでいる」


「受け継いでいるのは、私だけ?」


「今は弱々しいものの、お前よりも強い気配を遠くに感じる」


 フンババは微笑む。


「祖父ね」


「祖父?」


「聖堂教会の宗主よ」


 フンババは頷く。


「そもそも、お前の主とは何者だ?」


 シモンは核心に迫る。


「お前たちの世界では、光の御子と呼ばれているものだ」


 その言葉は、俺たちに衝撃をもたらす。


「フンババの主は、光の御子!」


「私は、光の御子の子孫!」


 俺とクーデリアは、顔を見合わせる。


 しかし、一番驚いているのは――


「暗殺の対象は、光の御子の子孫……? そんな、馬鹿な――」


 シモンは絶句する。


「なるほど、そういうことか!」


 俺は手を打ち合わせる。


「クーデリアが狙われたのは、光の御子の血筋だからだ」


「そうなの?」


「その証拠に、同じく光の御子の子孫の宗主は、幽閉されてる」


「言われてみると……その通りね!」


 クーデリアは納得する。


「黒幕の目的は、光の御子の血筋の根絶やしだろう」


「ありえん!」


「シモン……?」


「ありえないものは、ありえない!」


 シモンは否定する。


 いや、否定しているんじゃない、拒絶しているんだ。


 耐えられない真実に!


「フンババ、ライトという少年を知ってるか?」


「どんな少年だ?」


「男とも女とも判別のつかない、中性的な顔立ちの少年だ」


 俺の言葉に反応したのは――


「それは、我々の主だ!」


「ライトが、暗殺者の主人?」


「……ライトは、仮の名前だ」


「よりによって、ライトが黒幕かよ!」


 俺はため息をつく。


「そのライトという少年について、詳しく聞きたい」


 フンババの求めに応じて、俺は知っている限りの情報を伝える。


「見た目は、若いころの主によく似ている」


「光の御子に?」


「ただ、主も亡くなる前には、年を取っていた」


「要するに?」


「主とは無関係ではないものの、主とは別人だ」


 フンババは断言する。


 シモンを見ると――


 その表情は、暗く沈んでいる。

 

 おそらく、シモンはライトを、「光の御子」として認識していたんだろう。

 だからこそ、宗主の幽閉も、孫娘の暗殺も躊躇しなかった。

 その信念が、ぐらぐらと揺らいでいるんだ。


「我の認識では、主の血を受け継ぐものは、二名しかいない」


「私と祖父ね?」


「それ以外は、偽物だ。ただ、見た目に限れば、主そのものだ。それに――」


 フンババは考え込む。


「ガルーダの存在がある」


「ガルコ?」


「主の仲間に、ガルーダがいたのだ」


 俺は考え込む。


「ガルコ、お前はどういう経緯から、偽の光の御子についたんだ?」


「がるるるぅ」


「主の出現を確認した族長から、主につけと命じられた?」


「がるるるぅ」


「族長より授かった印が反応したから、主だと思った?」


「がるるるぅ」


 シモンと同じく、ガルコも戸惑っている。


「フンババ、本当に光の御子は死んでるのか?」


「我々は、主の最期を看取った」


「そして、森の奥に墓を作った?」


「そうして欲しい、と主が望まれたからだ」


 フンババの言葉に、嘘偽りはないだろう。


「ライト、お前はいったい何者なんだ?」


 俺の問いは、空しく響いた。

 読んでくださって、ありがとうございます。

 ブックマーク等の応援、ありがとうございます。


 ネタバラシ回です。

 ただし、完全ではありません。

 肝心な部分は、徐々に明らかになります。

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覚醒テイマーの成り上がり
設定を変えた別バージョンは、全部書き直してます。
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