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第12話 町の中の盗賊

 前回のポイント・エリザは、陰謀に巻き込まれた!

 誰にも見送られることなく、俺とスラゾウはギルドを後にする。

 全員、忙しいとはいえ、少々寂しい。


「ご主人、細かいことを気にしてると、モテませんよぉ?」


「うるさい」


 会話の間も、俺は道を歩いている。

 しわくちゃになった、地図を片手に。


 時刻は遅い上に外灯も少ないため、辺りはかなり暗い。

 それでいて、景色ははっきりとわかる。

 契約による世界への適応は、視力などにも及んでいるらしい。


「契約、か」


 便利と言えば便利、不便と言えば不便。

 なぜなら――

 スラゾウとの契約に、依存しているから。


 スラゾウとの契約を失った場合を考えると、ゾッとする。

 おそらく、助けを求めている間に、命を失うだろう。

 今の契約を保ちつつ、別の契約を考えるべきかもしれない。


 要のスラゾウは、きょろきょろしている。


「スラゾウ、どうした?」


「追われてるように感じたんですけど、気のせいですよね」


「いや、そうとは限らないぞ。ゆっくりと振り向いてみろ」


「……いますね」


 スラゾウは頷く。


「俺の熱烈なファンだと思うか?」


「思いませんね」


「言ってくれる」


「当たり前じゃないですか、ご主人と分かれた時に見かけた、盗賊の一員ですよ」


 俺は息を呑む。


「盗賊が、町の中にいる!」


「ご主人、声が大きいですよ」


「悪い」


 スラゾウの求めに応じて、俺は声を落とす。


 声は、届かなかったみたいだ。


 盗賊の一員らしい男は、一定の距離を保ちながら追ってきている。


「同じ盗賊でも、表と裏に分かれてるんじゃないですか」


「表と裏?」


「前者は町の外を拠点にしていて、後者は町の中を拠点にしている」


「それなら兵士の行動を調べて、仲間に情報を流せるな」


 俺は納得する。


 そう言えば、ケネスは言っていた。


 小物は捕まえられるけど、大物は捕まえられない、と。


 その裏には、住民に化けた盗賊の存在があるようだ。


「相手の目的はわかるか?」


「さすがにわかりません。ただ、その時も今も、好戦的じゃないですね」


 表と裏の役割分担からすると、相手の目的は俺の監視だろう。

 それぐらいは、許してしまう?


 いや、駄目だ。

 スラゾウが狙われたら、大問題。


「ご主人、どうします?」


「振り切るのは難しいから、ここはやり過ごそう」


 条件に適した場所を求めて、歩き続ける。


 行き止まりを見つけると、追っ手に気づかれないように、小走りになる。


 そのまま行き止まりに着くと、作戦を実行する。


「どこへ行った? いないぞ!」


「見失ったのか? 頭に怒鳴られるぞ!」


「いつも怒鳴られてるよ。あの人、怒りっぽいよな」


「怒りっぽいというよりも、子供っぽいんだろ。みんな、愚痴ってるぜ」


「そのくせ本人は、ガキに敗北した上に負傷だぜ。あの人、終わったな」


「そうだとしても、黙っておけ。もう少しの辛抱だ」


 二人は愚痴った後、どこかへと走り去る。


 しばらく待って、俺たちは再び歩き出す。


「ご主人、オイラは何に変化したんです?」


「隠れ蓑」


「隠れ蓑?」


「忍者が身を隠すために使う、秘密道具だよ」


 そう、隠れ蓑になったスラゾウによって、俺たちは隠れたんだ。

 もちろん、行き止まりの壁に、溶け込むことによって。


「忍者? 密偵みたいなものですかね」


「そんな感じだ」


「賊の目的は、ご主人の行動の把握のようですね」


「ゴメスの個人的な指示らしいな」


「相当、子分の反感を買ってますね」


「当たり前だよ、子分ごと俺を始末しようと、考えたんだぞ」


 追っ手をやり過ごした俺たちは、再度追われる前に宿に着く。


 扉を開けて中に入ると、宿の人を探す。


 目が合ったのは、十歳前後と思しき少女。


「ヒロイン?」


「ご主人、守備範囲広過ぎ……」


「マリーの例もある、年上かもしれないだろ」


 俺は反論する。


「単にロリコンなのでは?」


「ヒロイン詐欺をした、お前が言うか?」


「オイラより先に、ご主人が捕まりそうですねぇ」


 スラゾウは笑う。


「あのぉ、お客さんですかぁ?」


「予約客だね、俺はキラタロウ」


「キラッとタロウ?」


「どこのプリ☆チャンアイドルだよ!」


「ありましたぁ、端の部屋ですぅ」


 少女の指し示した部屋に、俺は向かう。


 ベッドに横になると、睡魔が襲ってくる。


「これからも、よろしく。――お休み」


「こっちこそ、よろしく。――お休み」


 こうして――


 俺の記念すべき、異世界一日目は終了。

 安全なはずの町の中に、敵が潜んでいる。

 こういう状況だからこその、展開にしてみました。

 当然、宿も安全ではありません。

 一区切りついていますから、評価してくれるとありがたいです。

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覚醒テイマーの成り上がり
設定を変えた別バージョンは、全部書き直してます。
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