第112話 騎士王覚醒
前回のポイント・森の主、フンババが現れた!
俺とフンババは、向かい合う。
その間には、十メートルほどの距離がある。
でも、相手の力を踏まえると、零に等しい。
「フンババ、お前は本当に森の主なのか?」
「我は森の主ではない、森の管理者だ」
「その違いは?」
「我は主から、森の管理を任されたのだ」
フンババの返答は、予想外。
困惑した俺たちは、顔を見合わせる。
「その主は、どこにいる?」
「どこにもいない」
「それなら、心置きなく戦える」
「戯言を!」
フンババは一笑すると、近寄ってくる。
決戦の確証を得た俺は、迎え撃つために踏み出す。
「エクストラスキル発動!」
次の瞬間――
世界は、変化する。
ただ、想定に反して、おなじみのやり取りはない。
「スラゾウ、ゴレタ、変化を感じるか?」
「ノーマル状態と、チート状態の間ですね」
「強化されてるけど、超絶強化はされてないっすね」
スラゾウとゴレタは困惑している。
「貴様の力は、すさまじいな」
「どういう意味だ?」
「主より授かった力を用いても、すべてを押さえ込めない」
「光の帯の力によって、俺の最強無敵チートを押さえ込んでるのか!」
意外と言えば意外、当然と言えば当然。
「侵入者よ、切り札とはいざという時のために、取っておくものだ!」
「二度の検証を逆手に取って、カウンターを仕掛けたのか!」
直後――
俺とフンババは、ぶつかり合う。
衝撃――
俺も、フンババも、弾き飛ばされる。
その結果から、両者の力は互角だと判断できる。
俺は、冷や汗をかく。
「みんな、俺たちの戦いに巻き込まれないように、離れていてくれ!」
俺は指示を下すと、フンババに躍り掛かる。
俺の振り下ろした拳と、フンババの振り上げた拳が激突する。
それに伴い、衝撃波が巻き起こる。
ブォォン!
それは、周囲の木々をなぎ倒す。
その間も、俺とフンババの攻防は続く。
殴れば、殴られる。
蹴れば、蹴られる。
傷を与えれば、傷を与えられる。
力の拮抗した者の戦いは、熾烈を極める!
「やるな、フンババ!」
「貴様もよくやる、侵入者!」
直後――
俺とフンババは、再びぶつかり合う。
再度の衝撃――
「何、だと!」
俺は呆然とする。
弾き飛ばされたのは――
俺のみ。
フンババは、踏みとどまっている。
「言ったはずだ、切り札とは、いざという時のために取っておくものだ、と!」
「フンババのエクストラスキルか!」
フンババの自信を裏付けるように――
『エクストラスキルの発動を確認しました』
不吉過ぎる言葉が浮かぶ。
『データベース・エクストラスキル・〈森の主〉』
迷いの森の管理者、フンババの必殺技。
その能力は、単純にして強力。
一時的に、フンババの戦闘力を跳ね上げるものだ。
その力を目の当たりにしたあなたは、死を覚悟しなければならない。
「元はS+だから、今はSS、あるいはSSSか!」
「SSS!」
クーデリアを始めとした面々は、驚愕する。
「タロウ、力を抑えられている限り、勝ち目はないわ!」
「キラタロウ、ここはいったん引け、再度挑戦しろ!」
クーデリアとシモンは、撤退を進言する。
「できるなら、俺も再挑戦したいよ。でも、無理そうだ」
「がるるるぅ?」
「フンババは、俺を確実に仕留めるつもりだ!」
「がるるるぅ!」
ガルコは悲鳴を上げる。
「厄介極まりない貴様は、確実に仕留めるぞ!」
フンババは、俺に狙いを定める。
俺とフンババの距離は、じりじりと詰まる。
「ご主人!」
「兄貴!」
「スラゾウ、ゴレタ……!」
スラゾウとゴレタが、俺の肩に乗る。
「お前ら……どうして!」
「ご主人、オイラも戦いますよ!」
「兄貴、オレも戦うっすよ!」
スラゾウとゴレタは、ファイティングポーズを取る。
「負けるかもしれないぞ?」
「生き残りましょ?」
「勝ち誇りましょ?」
「よし、生き残って、勝ち誇るぞ!」
覚悟を決めた瞬間――
俺の中の力が目覚める。
『〈騎士王〉に覚醒しました』
「〈騎士王〉……戦闘スキルか! これなら、行けるぞ!」
俺は勝利の予感を抱く。
「スラゾウ、剣に〈変化〉してくれ!」
「剣ですね、了解!」
「ゴレタ、鎧を〈形成〉してくれ!」
「鎧っすね、了解!」
直後――
俺は真ゴレタアーマーをまとい、真スラゾウソードを構える。
「騎士王モード!」
「戯言を!」
直後――
三度、俺とフンババは、ぶつかり合う。
三度目の衝撃、いや三度目の正直――
真ゴレタアーマーにより、吹っ飛んだのはフンババ。
呆然としている敵に、俺は追撃を仕掛ける。
吹っ飛んでいる相手に追いつくと、真スラゾウソードを振り下ろす。
ザシュ!
「ぐはっ!」
苦悶の声を上げながら、フンババは地面を転がる。
「スラゾウ、ゴレタ、行くぞ!」
「行きます!」
「行くっす!」
俺たちは心を合わせると、フンババに必殺技を繰り出す。
「ウルトラビッグバン・スーパーノヴァ・トランプアタック!」
俺は、よくわからないけれど、すごい一撃を繰り出した!
ドゴーン!
すさまじい閃光と、すさまじい爆発。
超大型のクレーターの中心には、焼け焦げたフンババ。
「勝ったな!」
「勝ちましたね!」
「勝ったっすね!」
俺たちは、喜びを分かち合う。
「タロウ、どういうこと?」
「キラタロウ、説明責任は?」
「がるるるぅ?」
クーデリアも、シモンも、ガルコも困惑している。
「力は抑えられてるものの、完全じゃない」
「その場合?」
「その場合、全員の力を合わせればいい」
要するに――
俺だけじゃ、勝利は不可能だった。
でも、スラゾウとゴレタの協力により、勝利できた。
「「「完全勝利!」」」
俺たちは、勝利のポーズを取った。
読んでくださって、ありがとうございます。
ブックマーク等の応援、ありがとうございます。
技名に関しては、それっぽく叫んでいるだけです。
ちなみに、元から戦闘スキルを獲得するはずでした。
その理由は、戦闘に変化を与えたかったからです。
ただ、その機会が訪れずに、延び延びになっていました。