第111話 森の主フンババ
前回のポイント・クーデリアに感謝された!
目印の消失と、水の不足。
二つの問題を解決したため、ここ数日は詰め作業をしていた。
その間に特定した目的地に向かって、俺たちは進んでいる。
今回は、パーティを分けずに、全員集まっている。
問題は残るものの、水の問題は解決している。
それに、この機会を逃したら、次の機会を得るのは難しい。
そう、俺たちは準備万端なんだ!
「この景色も、見飽きましたねぇ」
「緑ばっかりは、うんざりっすぅ」
「お前ら、アンチグリーンかよ?」
「孤高推しですね」
「カレー好きっすね」
「スラゾウブラックと、ゴレタイエローかよ」
スラゾウとゴレタは、戦隊もののポーズを取っている。
「がるるるぅ」
「自分は、ピンク大好き?」
「がるるるぅ!」
「ガルコピンクかよ」
ガルコも、戦隊もののポーズを取っている。
軽口を叩いている間に、目指している場所の近くに来る。
一見すると、他の場所と大差ない。
ただ、よく見ると、茂みの中に道がある。
その道を進んでいくと、開けた場所に出る。
そこには――
魔物の大群が、待ち構えていた!
「どうやら、当たりみたいだな」
この先に、お宝が待っているのは間違いない。
問題は――
魔物は、俺たちの前に立ちふさがる。
進行を邪魔するために?
邪魔者を排除するために!
「森の魔物との、最後の戦いだろう」
俺の言葉に、全員頷く。
「敵の戦力を調べるぞ?」
一定の距離を置いて、俺たちは睨み合う。
「〈異世界王〉の効果により、対象の情報を把握する」
俺は宣言する。
『〈異世界王〉の指定効果、発動』
見たことのない魔物は、二体。
一体目は――
【ステータス】
クラス・ドライアド
ランク・E
スキル・光合成E 埋没E
エクストラスキル・不明
【パラメーター】
攻撃力・F-
防御力・F-
敏捷性・E-
ドライアドは、人の姿をしている魔物。
ただ、トレントと同じく、体は木そのもの。
特徴は、トレントは男性的なのに、ドライアドは女性的。
二体目は――
【ステータス】
クラス・マンドラゴラ
ランク・G
スキル・金切り声G
【パラメーター】
攻撃力・G
防御力・G
敏捷性・G
マンドラゴラは、野菜っぽい魔物。
果物っぽい魔物、キラーフルーツに似ている。
両者は、対になっているのかもしれない。
見たことのある魔物は――
トレント、キラーフルーツ。
「Eランク二種類、Gランク二種類……戦力的には問題ないだろう」
「問題は?」
「敵の覚悟。一歩も引くつもりはないらしい」
俺は指摘する。
「俺たちは、森を抜けたいだけだ。もし邪魔をするなら、殲滅する」
果たして――
「ギャアア!」
マンドラゴラの金切り声を皮切りに、敵は突っ込んでくる。
「……しょうがない、全員、迎撃するぞ!」
俺たちは、戦闘態勢に入る。
向かって左には、ゴレタとクーデリア。
向かって真ん中には、俺とスラゾウ。
向かって右には、シモンとガルコ。
戦力的に、バランスよく分かれている。
そのため、左の敵にも、真ん中の敵にも、右の敵にも苦労しない。
面白いように、敵の数が減っていく。
順調に勝利に向かっていると――
『エクストラスキルの兆候を確認しました』
危険を告げる言葉が浮かぶ。
「エクストラスキルが来るから、陣形を変えるぞ!」
その指示に従い、陣形を変える。
直後――
周囲に、無数の葉っぱが舞う。
それは生き物みたいに、俺たちを襲ってくる!
『データベース・エクストラスキル〈落ち葉の舞〉』
森を住処にしている、魔物のスキル。
威力こそ低いものの、攻撃にも防御にも利用できるため、使い勝手はいい。
ただ、使用条件は厳しく、基本的には森に限定される。
このスキルから逃れたい場合は、森を立ち去ろう。
「立ち去れないから、苦労してるんだよ!」
〈落ち葉の舞〉は、侵入者を蹂躙する!
それを見た森の魔物は――
「ギャアア!」
マンドラゴラを筆頭に、勝利の雄たけびを上げる。
「それ、負けフラグだよ?」
〈落ち葉の舞〉の消えた後に残ったのは――
泥の残骸のみ。
そう、ゴレタの〈形成〉を利用して、ダミーの俺たちを作ったんだ!
「ギャアア――」
騙されたと気づいた森の魔物の中に、動揺が広がる。
その隙を見逃す俺たちじゃない。
「うりゃ!」
「ほりゃ!」
「おりゃ!」
「一撃目!」
「邪魔だ!」
「がるるるぅ!」
総攻撃を仕掛ける。
ほどなく、森の魔物の大群は壊滅する。
生き残った魔物は、まったく別の方向に逃げ出す。
統制の取れていないさまは、完全勝利を思い起こさせる。
「完全勝利――」
そう口にした瞬間――
地響きとともに、巨大な魔物が現れる。
その姿は、猿に似ている。
ただ、大きさも、強さも、今までの猿の魔物の比じゃない。
それこそ、ジュドメルクラス。
「森のボス?」
俺たちは顔を見合わせる。
「〈異世界王〉の効果により、対象の情報を把握する」
俺は宣言する。
『〈異世界王〉の指定効果、発動』
【ステータス】
クラス・フンババ
ランク・S+
スキル・適応A 抵抗A 知性A
エクストラスキル・不明
【パラメーター】
攻撃力・S
防御力・S
敏捷性・S
「Sランクのフンババ……間違いなく、森の魔物のトップだ!」
「トップではない、リーダーだ!」
しゃべったのは、フンババ。
「しゃべった!」
俺たちは驚く。
「侵入者よ、今すぐ森から立ち去れ! さもなくば、その命貰い受ける!」
「立ち去れるなら、立ち去りたいよ!」
「立ち去れないのは森の意思、我の意思ではない!」
フンババは首を横に振る。
「同じだろ!」
「それなら、どうする?」
「もちろん、叩き潰す!」
直後――
森の魔物との、最後の戦いが始まった!
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森の魔物との、決戦の前半になります。
後半はもちろん、フンババ戦です。
その後は、お宝の登場です。