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第107話 目印は、果物の木

 前回のポイント・地図は、もう一枚あった!

 宝探し?

 むしろ、敵探し。

 森に潜む敵を見つけ、叩く。


 そのためには、結局、宝探しみたいになるのかもしれない。


「お前ら、勝手に次回予告してるんじゃない!」


「次回予告は、マスコットの役目ですよね?」


「オレも先輩もガルコも、マスコットっすよね?」


「お前らはともかく、ガルコはマスコットじゃない!」


「仲間外れですね!」


「魔物差別っすね!」


 スラゾウとゴレタは抗議する。


「ドキドキ!」


「ワクワク!」


「ガルガル!」


「ガルガルじゃねえよ! どうして、加わってるんだよ?」


 俺は憤慨する。


「ブーブー!」


「プープー!」


「フーフー!」


「フーフーじゃねえよ! お前、敵だろ?」


 俺たちの馬鹿馬鹿しいやり取りを――


「いつも、こうなのか?」


「いつも、こうよ?」


「楽しそうだな」


「楽しいわよ」


 クーデリアは微笑ましそうに、シモンは羨ましそうに眺めている。


「ご主人、ガルコに冷たいですね?」


「兄貴、ガルコに厳しいっすね?」


「クーデリアみたいに、フラグを立てるな!」


「仲間フラグ?」


「契約フラグ?」


「仲間にならないし、ましては契約しない!」


 俺の完全否定に――


「がるるるぅ……」


 ガルコは悲しそうに鳴いている。


「どうして、悲しそうなんだよ!」


「がるるるぅ」


「ガルコと呼べるのは、俺たちだけだから?」


「がるるるぅ!」


「さすがマスター、話がわかる、じゃねえよ!」


 俺たちのやり取りは、漫才みたいになる。


「遊んでると、いつまでたっても話が進まないから、先に進めるぞ?」


 俺は話を先に進める。


 二枚の地図を並べる。

 一枚は、俺たちの。

 もう一枚は、シモンたちの。


「みんな、気づいたこと、思いついたこと、何でもいいから言ってくれ」


「昼食は、肉が食べたいですねぇ」


「夕食は、魚が食べたいっすぅ」


「お前ら、一度、食べ物から頭を切り離せ!」


 スラゾウとゴレタは、不満そうに唇を尖らす。


「がるるるぅ」


「果物? お前も、こいつらの仲間かよ!」


「がるるるぅ」


「記号は、果物を示してる? 果物を頼りに、進めばいいのか!」


「がるるるぅ」


「役に立ったんだから、報酬をくれ? しょうがない、これを食べろ」


 役に立ったガルコに、俺の分の果物を渡す。


「がるるるぅ!」


 ガルコは喜んでいる。


 一方――


「ご主人、内通ですね!」


「兄貴、裏切りっすね!」


「お前ら、役に立ってないだろ?」


「オイラも、食べたいですよぉ」


「オレも、食べたいっすぅ」


「種を食べろ、種を!」


 果物の種を押しつけると、スラゾウとゴレタは黙り込む。


「果物を頼りに進むとしても、行き当たりばったりにならないかしら?」


「だから、道路標識みたいに利用すればいいんじゃないか?」


「お店の看板みたいに目印にするのね!」


 クーデリアは頷く。


「その場合でも、ルートは複数ある。どう対応するのだ?」


「大きく分けて、二つ。一、手分けして探す。二、固まって探す」


「効率的には前者だが、状況的には後者だな」


 シモンは頷く。


 本音を言うと、元から前者を選択するつもりはない。

 もちろん、状況的に危険だからじゃない。

 ガルコはともかく、シモンによる暗殺の可能性を捨てきれないから。


「下手に分散しても、集合する際の手間を考えると、時間の無駄だろう」


「長期戦のための食料は、十分確保しているのか?」


「食料は、十分確保してる」


「含みのある言い方だな」


「問題は、水。飲み水が、不足しつつあるんだ」


 それが、一番の悩み。


 昨夜の雨を利用すればよかった?

 酸の雨のために、利用しようにも利用できなかったんだ。

 何しろ、浄水するスキルなんて持っていないから。


「みんな、水の不足は頭に入れておいてくれ」


「ご主人、水不足ですか?」


「兄貴、取水制限っすか?」


「水分を代替できるもの……果物の確保も視野に入れよう」


「果物!」


「おやつ!」


 スラゾウとゴレタは興奮する。


 もっとも――


 その程度じゃ、解決には至らない。

 一時、不満を抑えるぐらい。


 解決方法は、主に二つ。


 一、できるだけ早く、光の帯から抜け出す。

 二、できるだけ早く、湧き水を手に入れる。


「水不足に関しては、頭の片隅に置いて、探索を開始しよう!」


 俺の言葉に、全員頷く。


 一通りの準備を済ませると、出発する。

 もちろん、全員揃っている。

 拠点の維持よりも、全員の無事を優先するため。


「準備は済んだな? 出発するぞ!」


 表面上は取り繕っているものの、内面は異なる。

 俺たちにも、シモンたちにも、疑心暗鬼はある。

 このまま状況が好転しないと、最悪、パーティは分裂しそう。


 少しでも人手が欲しい今、分裂だけは避けたい。

 リーダーとしては、踏ん張りどころ。

 俺は、密かに覚悟を決める。


「一つ目の記号の場所に、着いたぞ――」


 そこは――


 ガルコの指摘した通り、果物が実っている。


「ガルコ、一つ取ってきてくれ。ただし、まだ食べるなよ?」


「がるるるぅ!」


 ガルコは指示に従い、果物を一つ取ってくる。


「スラゾウ、毒見を任せるぞ」


「了解!」


 スラゾウは果物にかぶりつく。


 〈毒耐性〉のスキルのあるスラゾウは、毒見にもってこい。

 もしもの場合は、俺のエクストラスキルを発動すればいい。

 そうすれば、毒を始めとした異常状態は、完全に消える。


「スラゾウ、どうだ?」


「まずいですね、それに辛いですね」


「その割に、無心に食べていなかったか?」


「……気のせいですよぉ」


 スラゾウはごまかす。


「怒らないから、本音を言いなさい」


「おいしいですし、味も問題ないですよぉ」


「お前……」


「念のために、もう一度味わいたいですねぇ!」


 スラゾウは悪びれない。


「果物をできるだけ回収しよう。そして、パーティの共有資源にしよう」


 俺の判断に、スラゾウは恨めしそうに見上げる。


 果物を皮袋に、詰め込めるだけ詰め込むと――


「よし、この調子だ。ルートと果物を確保しつつ、お宝を目指そう!」


 俺たちは、探索を再開した。

 読んでくださって、ありがとうございます。

 ブックマーク等の応援、ありがとうございます。


 宝探しというよりも、果物探しですね。

 もっとも、そのほうがスラゾウとゴレタは喜びそうですけど。

 水不足に関しては、面白いイベントを用意しています。

 うまく機能してくれることを期待しています。

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