第11話 陰謀
前回のポイント・タロウは、町に無事帰還した!
捕まっていた人々は、それぞれの居場所に散らばっている。
それに伴い、俺たちはギルドに向かっている。
「お前ら、よく盗賊を追い払えたな?」
「盗賊の仲間だと疑われてる?」
「そうじゃない、すごいことをしたと驚いてる」
「驚くほどのこと?」
「何しろ、戦力皆無のルーキーとスライムだぞ」
「運がよかっただけだよ」
俺は謙遜する。
「実戦において、幸運は続かない。二度も賊を追い払えたのは、完全に実力だ」
「実力、ね」
「だからこそ、気をつけろ」
「己の力を過信しないように?」
「盗賊の頭は、お前を狙ってくるぞ。今度こそ、勝つために」
フェルは忠告する。
「父さん、無事に町に着いたのに、不吉なことを言わないで」
「すまん、すまん、だが警戒は必要だぞ、タロウ」
フェルは謝ったものの、発言を撤回しなかった。
気にしろ?
気にするな?
俺からすると、どっちの意見もありがたい。
ここは体を休めつつ、次に備えるとしよう。
ほどなくギルドに到着すると、建物の中に入る。
「ようこそ、ギルドへ、歓迎するわ」
俺たちを出迎えたのは、マリー。
「ここ、マリーさん以外には誰もいないの?」
「いるけど、全員、仕事中ね。出迎えは、マスターが拒んでいるからしないの」
「物騒じゃないか?」
「その中にはテイマーもいるから、砦に突入するようなものよ」
「大丈夫そうだね」
俺は安心する。
「タロウちゃんも、心配性ね。それより、エリザちゃん、手続きがあるから来て」
「わぁ、この人、可愛い」
「これでも、お姉さんなのよ」
「年上でも、すごく可愛いですよ」
「お姉さん、嬉しい」
エリザとマリーは軽口を叩きながら、奥に進んでいく。
「おやっさん、話があるんだ」
「娘はやらんぞ」
「展開、速過ぎ……」
「冗談はともかく、お前は何を心配してるんだ?」
フェルは真顔になる。
「盗賊は、エリザの存在を知ってたみたいなんだ」
「本当か?」
「どこまで知ってたのかは、不明だ。でも――」
「でも?」
「エリザが、王都から馬車に乗ってやってくることは、わかってたはずだ」
「盗賊の狙いは、エリザ……」
フェルは呆然とする。
「オイラも、単独行動してる最中、フェルを探せという指示を聞きましたよ」
「命令の出所はわかるか?」
「略奪品よりも捜索を優先してましたから、盗賊の親分かと」
スラゾウも、俺の意見に同調する。
「興味深い推測だが、間違ってるぞ」
「どうして?」
「なぜなら、その件について知ってるのは、俺たちだけだから」
情報を把握しているのは、二名。
もちろん、俺とフェル。
俺は無理だし、フェルは論外。
だから、指摘は間違っている。
本当に?
俺は理解したものの、納得しなかった。
「本当に間違っているのかしら?」
そう口を挟んだのはマリー。
エリザは手続きしているらしく、その姿は見当たらない。
「そういうお前も、知らなかっただろ?」
「マスター、評議会の席上で、子供のことを話したと、言ったじゃない?」
「……話した」
「その時の内容が、盗賊に流れたんじゃないかしら」
フェルは考え込む。
「マリー、よく思い出したな?」
「報告する予定だったんだけど、タロウちゃんの討伐したハウンドは、野良じゃなく契約したやつだったの。――そうよね?」
俺は頷く。
「その一件とこの一件と、つながっていると思わない?」
「そう言えば、俺が討伐したハウンドに関して、賊の親分に心当たりはないかと聞かれたよ」
「当たりね」
マリーは頷く。
「こうなってくると、おやっさんの急用も、作られたものじゃないのか?」
「その可能性はある。ただ、その件に関しては事実だ」
「たとえ事実だとしても、今回の襲撃のために、利用したのかもしれない」
「利用……」
フェルは言葉を失う。
その件がなかったら、エリザは無事だった。
だが、その件によって、エリザは危機に直面した。
その後、エリザたちが救い出されたのは、偶然の産物――
マリーの提案、フェルの指示、俺の判断。
うまく噛み合ったから、事態は好転したんだ。
「俺の娘に、舐めた真似をしてくれる」
「マスター、怒らないで」
「わかってる」
フェルは頷く。
「姉さん、マスターは怒ると怖いんですか?」
「怖いというよりも、危ないの」
スラゾウの問いに、マリーは答える。
「エリザは、また狙われるかもしれない。だから、注意する必要がある」
「それなら、あたしにいい考えがあるわ」
俺の懸念に対して、マリーは悪戯っぽく笑う。
今回のポイントは、陰謀の有無です。
関連して、黒幕の有無です。
言ってみれば、伏線を回収する話です。