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第101話 迷いの森

 前回のポイント・謎の少年ライトと出会った!

 迷いの森。


 そこは、立ち入ってはならない場所。

 その理由は、迷うため。

 迷うことに関しては、いろいろ言われている。


 道に、迷う。

 人生に、迷う。


 前者はともかく、後者は何だろう?

 もしかしたら、人生の転機が訪れる場所なのかもしれない。


「今日は、晴れですね」


「夕方から、雨っすね」


「今日の天気じゃねえよ!」


 ある意味、期待通りのスラゾウとゴレタの反応。


「冗談はともかく、早く中に入りましょう?」


「本当に入っていいのか?」


「準備も計画も万全なのに、方針を撤回するの?」


 クーデリアはクスリと笑う。


 俺たちは、迷いの森の前にいる。

 立ち入りを禁止する、壁などの障害物は見当たらない。

 目につくのは、あの世とこの世の境界線のように、引かれた線のみ。


「入るぞ?」


 俺たちは頷き合う。


 それから――


 森の中に、入る。

 その際、一人ずつ入らない。

 全員、一緒に入る。

 危険信号に似た、予感を覚えて。


 森の中は――


「暗いな?」


 俺の言葉に、全員頷く。


 昼間だから、木々の間から光は差し込んでいる。

 そのくせ、薄暗く感じる。


 この感覚は――


 墓地に似ている。

 本来以上に、薄暗く感じるんだ。


「ボッチ?」


「ぼちぼち?」


「ボッチが、ぼちぼちしてねえよ!」


 スラゾウとゴレタのボケに、俺は平常心を取り戻す。


 感傷的になったのは――


 森が、生きているみたいに感じたため。


「問題ないみたいだから、先に進もう」


 俺たちは、歩き出す。


 大金を払って手に入れた古地図を頼りにして、森を進む。


 もしもに備えて、隊列は決まっている。

 俺、両肩にスラゾウとゴレタ、その後ろにクーデリア。

 俺はともかく、クーデリアは武器を所持している。


「妙に寒いですね」


「妙に暗いっすね」


「寒いのも、暗いのも、先入観だろ」


「森の中に入ったら、本当に寒くなりましたよ?」


「森の中に入ったら、本当に暗くなったすよ?」


「クーデリアは、どう思う?」


 俺は、クーデリアに話を振る。


「懐かしく感じる」


「懐かしい?」


「生まれ故郷に帰ってきたみたい」


「実際、生まれ故郷に帰ってきただろう?」


「たとえね。それぐらい、懐かしさを感じるの」


 クーデリアの声は、妙に柔らかい。


「お前ら、いろいろ大丈夫か?」


「大丈夫ですよ?」


「大丈夫っすよ?」


「大丈夫よ?」


「自分でも周囲でも、異変を感じたら、遠慮なく言ってくれ」


 俺はリーダーらしく振舞う。


「それにしても――」


 ぎゅっ!


 土を踏む音。


 ぱきっ!


 枝を砕く音。


 どっちもたいしたものじゃないのに、よく響く。


「静か過ぎる。普通、鳥や虫の鳴き声が聞こえるものだろ?」


「魔物はともかく、獣はちらほらと見かけるわよ?」


 クーデリアは、俺の不安を打ち消す。


「この森を抜けられれば、聖都に到着するのか?」


「正確には、聖都の郊外ね」


「郊外?」


「聖都の郊外には、森が広がっているの。その森に、続いているはずよ」


 クーデリアは主張する。


「それなら、ショートカットは問題なし、か」


「気がかりでもあるの?」


「本当に到着できるのか否か」


 クーデリアは頷く。


「まぁ、伝承の魔物も、問題なく処理できるだろ」


「ご主人、その根拠は?」


「俺には、最強無敵チートがある」


「あれには打ち勝てませんね」


 スラゾウは頷く。


「問題は、下手に最強無敵チートに頼ると、騎士団の介入を招くこと」


「兄貴、その理由は?」


「この森は、聖都の郊外の森に続いている」


「敵の懐っすね」


 ゴレタは頷く。


「問題は、他にもあるわ」


「それは?」


「この森は、聖都の郊外の森に続いているのよ?」


 クーデリアは指摘する。


「目的地は、遠いね」


「下手すると、数日は野宿ね」


「それは、覚悟のうちだろ? そのための準備は整ってる」


 俺は、大きく膨らんだ皮袋を示す。


 それは、二つある。

 それぞれ、俺とクーデリアが一つずつ背負っている。


 会話の間も、歩いている。


 徒歩なのは、理由がある。

 光の巨人の存在があるため、神々の伝令に頼れないのは仕方ない。


 問題は――


 荷物の運搬に獣を利用しようとしたら、いずれも森に近づかなかったこと。

 その中には、野良の魔物も含まれている。


「スラゾウ、ゴレタ、異変を感じるか?」


「妙に暗いことですね」


「妙に寒いことっすね」


「それ以外はない?」


 スラゾウとゴレタは頷く。


「妙に暗いのも、妙に寒いのも、気のせいか? そうじゃないとしたら――」


 俺は言葉を呑む。


 進行を妨げるように、立ちふさがったものを見て!


 それは――


「木?」


 そう、立ちふさがったのは木なんだ!


「植物の魔物ね」


「そんなもの存在するのか?」


「現に存在するでしょう?」


 クーデリアは現実を突きつける。


「一応、調べてみるぞ?」


 俺の言葉に、全員頷く。


「〈異世界王〉の効果により、対象の情報を把握する」


 俺は宣言する。


『〈異世界王〉の指定効果、発動』


 【ステータス】


 クラス・トレント

 ランク・E

 スキル・光合成E 埋没E

 エクストラスキル・不明


 【パラメーター】


 攻撃力・E-

 防御力・E-

 敏捷性・F-


「Eランクのトレント……もちろん、野良だ」


「トレント……」


「聞いたことがあるのか?」


「聖堂教会に伝わっている古いお話に出てくる、森の番人よ」


 クーデリアは昔話を持ち出す。


「味方なのか敵なのかは、判断できるか?」


「探索者の立場と目的により、異なるわ」


「俺たちの場合は?」


「たぶん――」


 クーデリアの言葉は、途切れる。


 敵を排除するように、トレントが襲ってきたために!


「どうやら、侵入者として認定されたみたいだ。全員、迎え撃つぞ!」


 俺は判断を下した。

 読んでくださって、ありがとうございます。

 ブックマーク等の応援、ありがとうございます。


 これより、物語の舞台は迷いの森になります。

 それも、かなり長い間。

 その理由については、物語の進行とともに明かされます。

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設定を変えた別バージョンは、全部書き直してます。
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