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幕間7 本当の暗殺者

 前回のポイント・タロウたちは、海を渡り切った!

 スカーレットの執務室。


 そこに、スカーレットとヨハンがいる。


「反逆者の世話役だった、あなたの意見を聞きたい」


「反逆者は、船を乗っ取るのか、箱を吹っ飛ばすのか、考えたのでしょう」


「その末に、後者を選択した?」


 ヨハンは頷く。


「前者を選択した場合、捕虜の扱いが問題になります」


「圧倒的なまでの力を持っているのに、私たちの反乱を警戒した?」


「キラタロウの力は圧倒的ですが、時間制限があります」


「仮に時間制限があるとしたら、どうなる?」


 スカーレットは先を促す。


「隙を突かれる恐れがあります。そのため、一か八かの手段を選んだのでしょう」


「その際、相手のエクストラスキルを、どう利用したの?」


「クッションです」


「クッション?」


 スカーレットは首をひねる。


「圧倒的な力を見せつけることにより、敵のエクストラスキルを誘発させます」


「その目的は?」


「クラーケンと大渦をクッションにして、光の槍の威力を減らすためです」


「何のために?」


「余波により、自分たちの乗っている箱が壊れないために」


 ヨハンは指摘する。


「守るつもりなら、完全に守れるでしょう? 船のように」


「その場合、箱に衝撃は加わりませんから、陸にたどり着けません」


「要するに、反逆者は目的のために、クラーケンを放置したのね?」


 ヨハンは頷く。


「今の話に関連して聞くけど、本当に法師シモンは暗殺者なの?」


「……わかりません。ただ、残された食事から、毒は見つかっていません」


「それなら、どうして姿を消したの?」


「……それもわかりません」


「いずれにしても、調査中、か。――行っていいわよ」


「失礼します」


 ヨハンは、執務室を後にする。


 それから、気分転換のために、船の外に出る。


「ひどい有様だ――」


 聖堂騎士団の接収した船は、別の船に引っ張られている。

 光の槍の攻撃には耐えたものの、それまでの攻撃の損害が出たのだ。

 そのため、船は独自では航行できないぐらいに、痛んでいる。


「どういうつもり?」


 背後から、声をかけられる。


 それでいて、ヨハンは動揺していない。


「何のことです?」


「毒殺を邪魔したでしょう?」


「当然の対応です」


「邪魔するなら、あなたでも容赦しないわよ」


「怖いですね、シモン」


 月夜に浮かび上がったのは――


 グリフォンに乗った、シモンの渋い顔。


「毒殺は、警戒されていたのだ。その証拠に、対策はキラタロウの発案だ」


「あなたの発案じゃないの!」


「可能なら、止めないさ。不可能だから、止めたのさ」


「それなら、言ってくれればよかったのに!」


「言ったら、止めた? 止めなかっただろう」


 ヨハンの指摘は図星らしく、シモンは黙り込む。


「だから、利用したのだ。キラタロウたちの、信頼を得るために」


「どういうこと?」


「君と君の弟を、恋人同士に見せかけたんだよ」


「私と弟が恋人同士……? 気持ち悪いわね!」


 シモンは顔を歪める。


「弟さんが、心配していたよ? 姉はどうしたんでしょう、って」


「私が姿を消したのは、あなたのせいでしょう!」


「怒らない、怒らない。作戦は、うまくいったんだよ?」


 怒っているシモンに対して、ヨハンは喜んでいる。


「あなたは協力者の一人だから、さぞや楽しいでしょうね?」


「楽しいけれど、苦しくもあるよ」


「苦しい?」


 シモンは引っ掛かる。


「遠くないうちに、彼らを裏切ることになる。その時を思うと、苦しいね」


「それなら、立場を変えればよかったのよ?」


「残念ながら、君では無理だ」


 ヨハンは否定する。


「どうして?」


「君は、能力を隠蔽できないだろう?」


「あなた、能力を調べられたの!」


「君も、調べられたよ。キラタロウのあの力は、厄介だね」


 ヨハンは警戒する。


「それよりも、大丈夫だったの?」


「もちろん、大丈夫さ。君とは違い、私は能力を偽れる」


「そのために、能力を調べさせたの? 意地の悪い人ね!」


 シモンは皮肉る。


「友情を感じて、仕損じないでしょうね?」


「心理面の心配は、無用だよ」


「機会を与えられれば、確実に殺せる?」


「もちろん、殺せる。私は、君よりも優秀だよ?」


「そうだったわね、本当の暗殺者ヨハン」


 二人の暗殺者は、笑みを交わす。


 そこに――


 奇妙な鳥こと、ガルーダが降り立つ。


「次の指示みたいね」


「そう言えば、興味深いことを聞いたよ」


「何?」


「名前があるらしい」


「ガルーダでしょう?」


 シモンの予想に反して、ヨハンは首を縦ではなく、横に振る。


「固有名だ」


「それは?」


「わからない。少なくとも私には、発音できない」


「もしかして、キラタロウは発音したの?」


「もちろん、キラタロウは発音した」


 その意味は――


 果てしなく、重い。


「光の御子さえ名前を呼べないのに、キラタロウは名前を呼んだ!」


「冗談みたいに聞こえるけれど、本当の話なのだ!」


「どういうこと?」


「どういうことだろう?」


 ヨハンとシモンは、顔を見合わせる。


「いずれにしても、従おう。我々の主――光の御子の指示に!」

 次回は、第三部第三章です。

 一区切りついていますから、評価してくれるとありがたいです。

 それでは、タロウたちの旅の無事を祈りつつ、次の機会に!

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