表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
101/137

第96話 運命の二択

 前回のポイント・法師シモンが、怪しい!

 俺たちは、船を散策している。


 ヨハンに監視されて?

 ヨハンに先導されて!


「本当に大丈夫なのですか?」


「細かいことは気にするなよ?」


「気にしますよ」


「もしもの時は、勇者のせいにできるんだし」


「勇者様のせいですか……」


 ヨハンは頭を抱える。


「付き合ってくれるんだから、ヨハンも気になってるんだろ?」


「それは気になります……シモンが暗殺者かもしれないなんて!」


「声が大きいぞ! 俺も……?」


「すみません……お互い様ですね」


 俺とヨハンは苦笑する。


 そう、俺たちは事情を打ち明けて、ヨハンの協力を取り付けたんだ!


「本当のところは、どうなんだ?」


「わかりません」


「わからない?」


「最近、シモンは多忙なんです。新入りの法師の、教育に夢中で」


 ヨハンは不満そう。


「新入りの法師?」


「暗殺未遂事件に関連して、騎士団に出向してきた法師がいます」


「事件に関連して?」


「その法師が、シモンとは顔なじみなのです」


 ヨハンは不快そう。


「不満なのは、どうしてです?」


「不快なのは、どうしてっす?」


「勇者様に取り繕っても仕方ないですね、私たちは恋人なんです」


「同性――」


「恋人――」


 スラゾウとゴレタは興奮する。


「ヨハンも、シモンも、役職に与えられた名前です」


「要するに?」


「私は男、シモンは女、異性ですよ?」


 シモンは笑う。


「びっくり?」


「がっかり?」


「個人的には、異性愛も同性愛も、等しくありだと思っています」


 シモンはおどけてみせる。


「恋人と間男が仲よさそうだから、嫉妬してるんだね?」


「……ぶち殺しますよ?」


「冗談にならないから、やめて……」


 俺とヨハンの下らないやり取りに、スラゾウとゴレタは笑う。


「話を戻すと、恋人の身を心配してるんだね?」


「正直に言うと、心配しています。悪い道に、引きずり込まれないか、と」


「悪い道?」


 俺は引っ掛かる。


「あなた方の話を聞く限りでは、その新入りの法師が元凶でしょう」


「逆の可能性は?」


「……あります。ただ、可能性としては低いでしょう」


 ヨハンの言葉は、願望のように聞こえる。


「それよりも、具体的にはどう判断するのです?」


「俺のスキルを使う」


「あなたのスキル?」


「〈異世界王〉だ」


 俺は胸を張る。


「ご主人の唯一の利点ですよ」


「兄貴の唯一の存在価値っす」


「お前ら、ぶん殴るぞ?」


「勇者への暴言確認!」


「勇者への圧力阻止!」


「袋叩きにされるから、やめて……」


 俺は懇願する。


「対象の立場や能力を判別できる、俺専用のスキルがあるんだよ?」


「試しに、私に使ってみてください」


 ヨハンの要請に、俺は応じる。


「〈異世界王〉の効果により、対象の情報を把握する」


 俺は宣言する。


『〈異世界王〉の指定効果、発動』


 言葉が響き、文字が浮かぶ。


 【ステータス】


 ネーム・ヨハン

 クラス・プリースト

 ランク・D

 スキル・治癒D 解毒(げどく)D 解痺(かいひ)D 解呪(かいじゅ)

 エクストラスキル・不明


 【パラメーター】


 攻撃力・G

 防御力・G

 敏捷性・G


「ランクDのプリースト……サポートタイプだね」


「よくわかりましたね!」


「完全に読み取れるわけじゃないけれど、大半は読み取れるんだよ」


「すごいスキルですね!」


 ヨハンは驚愕する。


「賞賛するほど?」


「対象の能力を読み取れるスキルは、その大半がデータベースに過ぎません」


「対して俺のスキルは、実践に使える?」


「戦闘、交渉、商売……万能型のスキルですね!」


 ヨハンは賞賛する。


「スラゾウ、ゴレタ、聞いたか?」


「眠いですねぇ」


「疲れたっすぅ」


「お前らの中の俺の評価、低過ぎだろ!」


 スラゾウとゴレタは、欠伸を噛み殺す。


「そのスキルを使い、シモンと新入りの法師の能力を調べるのですね?」


「二人のうち、どちらかに毒を用いるスキルがあれば、確定だろう」


「毒を用いるスキル?」


「クーデリアは、暗殺者から毒を食らったんだ。それも、スキルによる毒を」


 ヨハンは考え深げになる。


「どうした、ヨハン?」


「いえ、何でもありません」


「隠し事?」


「隠しても仕方ないから、答えましょう。シモンは、毒の専門家です」


「毒の専門家!」


 俺たちは驚く。


「本来の役割は、毒の治療です。ただ、その知識は暗殺に用いることができます」


「知識に過ぎないんだろう?」


「私も、彼女も、テイマーですよ?」


「シモンは、毒のスキルを持ってる、か」


 会話の間も、船の散策は続く。


 途中、幾度か人とすれ違う。

 そのつど、ヨハンは丁寧に用意された理由を口にする。

 相手はヨハンの柔らかい物腰に、詮索することなく立ち去る。


「まずいですね」


「まずい?」


「話によると、クーデリアコローナ騎士の配膳担当は、他ならないシモンです」


 俺たちは、顔を見合わせる。


「ご主人、まずいですよ!」


「兄貴、やばいっすよ!」


「毒殺だろう?」


 スラゾウとゴレタは頷く。


「皆さん、あの男女が、問題の二人です」


 ヨハンが指差したのは――


 談笑している、男女。

 見るからに、親密そう。


 一方――


 二人を見つめるヨハンの表情は、悩ましげ。


「調べてみるぞ?」


 俺たちは頷き合う。


「〈異世界王〉の効果により、対象の情報を把握する」


 俺は宣言する。


『〈異世界王〉の指定効果、発動』


 言葉が響き、文字が浮かぶ。


 【ステータス】


 ネーム・シモン

 クラス・プリースト

 ランク・A

 スキル・身体強化B 精神耐性B 毒特攻B 毒耐性B

 エクストラスキル・不明


 【パラメーター】


 攻撃力・B+

 防御力・B+

 敏捷性・A-


「Aランクのプリースト……暗殺者みたいに、身体能力に優れてるぞ」


「新入りの法師ですか?」


「もちろん、シモンだ。もう一人は、たいしたやつじゃない」


「シモン、ですか」


 ヨハンは、落胆したように声を落とす。


「シモンのスキルの中に、〈毒特攻〉がある」


「毒特攻?」


「毒の攻撃だろう。対応するように、毒に対する防御、〈毒耐性〉がある」


「当たり、ですね」


 ヨハンは、失望したように顔を伏せる。


「シモンは、クーデリアを毒殺すると思うか?」


「推測に推測を重ねるのは好みませんが、その可能性は大いにあります」


「その場合、どうすればいい?」


「二択です」


 ヨハンの言葉は、重々しく響く。


「シモンを抑えるか、クーデリアコローナを逃がすか、二択です」


「敵を倒すか、味方を助けるか、二択ね」


「キラタロウさん、あなたはどちらを選択しますか?」


「俺は――」


 俺は決断を下した。

 読んでくださって、ありがとうございます。

 ブックマーク等の応援、ありがとうございます。


 ヨハンを中心とした話になっています。

 情報通り、シモンは暗殺者なのでしょうか?

 それとも、暗殺者は別にいるのでしょうか?

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
新作へのリンクです
覚醒テイマーの成り上がり
設定を変えた別バージョンは、全部書き直してます。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ