菊
00話 「きく」
ある日の夜に誰かから呼び出された。
【通っていた中学校の校門前で待て。】
私にとってその場所は嫌な思い出しかない。
正直行きたくないのだ。
でも続きを読んで足を運ぶことにした。
【私は確認したい by雨璃】
「よく来たな。」
「あなたがまさか雨璃!?もう少し大きかったはず……。」
「私は雨璃ではない!そやつの……友人みたいなもんじゃ。」
「へぇ……友人ね。」
「なんじゃ?」
「雨璃に友達がいるみたいで良かった。」
「他に知っている者がおるのか?」
「ついこの間、空流に会ってね。私の事を話したりして仲良くなったわ。このピンもその証。」
「無いと前髪で目が隠れそうだな。」
「人の目を見る自信がなかっただけ。今でもあなたをじっと見つめることが出来ない。」
あなたの特徴が派手だから記憶に残るかもしれないけど、なんの特徴もなかった同級生なんて覚えていない。
「雨璃が来たようじゃな。それでは……。」
「ありがとう。」
「ん?私は何も……。」
「何もしていない人がここに来るかな?」
「ふっ。」
「あなたは本当に雨璃さんの友人なんだね。」
私がそう言った途端、背中を向けて逃げるかのように去っていった。
「あいつは私のことを忘れているのに友人な訳があるか。」
か細い声が聞こえた気がした。
「久しぶり。」
振り向くと雨璃がいた。
『ごめんなさい。』
2人同時に頭を下げる。何に対して謝っているのだろう?
「球技大会の練習は練習じゃなくて彼女達の私への攻撃大会みたいなものだった。私はあなたに隙があれば助けを求めていた。でも……でも誰も助けてくれなかった。球技大会前日私は当時仲の良かった月雲雷に『死にたい』と相談した。すると『じゃあ明日の朝保健室の棟の屋上からグラウンド見てみなよ。そしたら分かるからさ。』と言われてその通りにした。しかし、雨璃にわざとボールを投げて女子総員で保健室に行きサボり、やる気のない者達の結末が予想できた。だから私は飛び降りた。あの時雨璃さんが呼びかけなかったら死んでいた。私は……治った日からあなたの名前をちゃんと覚えるようにしたの。」
「……。」
唇を噛み締めて拳を握っている彼女は一切泣いていない。
「私が気づいていれば防げたことだったのに……ほんとダメだな……。まぁ、もう戻れないことを悔やんでも仕方ないと思って生きてきたけどあんたに謝らないと気が済まなかった。ごめん。ごめんなさい。」
「私こそ月雲雷があっち側だと気づかなかったからあなたに怪我を負わせた。こちらこそごめんなさい。」
再びお辞儀をすると向こうもお辞儀をした。
ひたすら時間が過ぎていく。
「何をしてるんですか?」
小さな顔が見える。この学校の制服を着ているという事は中学生?
「あなたこそここで何をしているの?時間も時間だし……。」
女の子は無表情で言い放った。
「死ぬの。どいてよ。」
その二言に衝撃がはしった私は動けなかった。
スタスタと通り過ぎていく少女。
「待てよ。」
「やめてよ!もう生きていても意味が無いの!」
「離すか阿呆!命をなんだと思ってんだ!」
「雨璃!夜中だから静かに!」
「菊野は何も思わねぇのかよ。」
「え。」
いろいろ思っていることはあるけど言葉にできない。
「……はぁ……。もう勝手にすれば。」
雨璃が少女を離すと私の口が動いた。
「何があったとか興味が無いし、これは一方的かもしれないけど、生きなさい。いつか幸せになれる、大人になったら楽しくなるかもしれない。今が全てだと思わないで。」
目を丸くした少女は私達の目の前から消えて行った。
「今日はありがとう。この場所を選んだのは雨璃でしょ?」
「え?お前が選んだんじゃないの?手紙を貰ってここまで来たんだけど。」
「そう。」
雨璃と別れた後、さっきのゴスロリ幼女に会った。
「もしかしてあなたが仕組んだの?あの少女も?」
「さぁね。でも、謝罪じゃなくてお礼が出来て良かったな。」
「……。」
死のうとしていた少女の髪は緑色でツインテール、彼女とそっくりだった。
「私は不死身だから死なないがな。」
そしてまた彼女は去った。
夏休みも終わり新学期が始まった頃、
今までの私を捨ててみることにした。
「一緒にお弁当食べない?えっと……アイちゃんだっけ?」
ここまで読んでいただきありがとうございました。
本編に出したかったキャラである「菊野歩」の話でした。最後のアイちゃんとはだれでしょうかね。
本編はまだまだ続きますのでよろしくお願いします。