空
04話 「そら」
優しさは時々胸に刺さる。
でもその気持ちをわからない人はいつもこう言う。
「私の家に来ない?」
雨が降りそうで降らなさそうな雲模様。
そのせいか星が見えない。迷惑なものだ。
ここは空乃の家から少し離れた所にある小さな家。
私の父の母……祖母の家。
父と違って祖母は優しい。困った時はいつも招いてくれる。だからといってずっと優しさにしがみつく訳には行かない。私は追われている身なのだから。
「今日はどうしたんだい?」
「友達と喧嘩した。」
「へぇ……喧嘩かい。なんだかあの子を思い出すよ。」
「誰よ。」
「歩ちゃん。」
「あぁ……あいつね。」
「あいつなんて言い方はやめなさいな。いろいろ世話になったんだから。」
「それはそれ、あいつはあいつなの。勝手にいなくなった人なんて覚えていられない。」
「京介もかい?」
「父親は別の意味で記憶に刻まれてるわ。忘れたいのに。」
「まぁ茶でも飲みな。」
目の前に抹茶が出された。
私は抹茶が好きでどんな食べ物でも抹茶味があればそれを選ぶ。
「おばあちゃんは私の事をよく分かってるけど分かってない。」
「どっちでもいいさ。お菓子いるかい?」
「カラフルアイスクリームで。」
「ちゃんと買ってあるよ。」
ヒンヤリとした風が辺りを漂う。
夏の夜だと寒くて鼻がムズムズする。
インターホンがなった。
「あら~久しぶりね~。」
「お邪魔します。」
笑顔の祖母の隣には前髪で目が隠れたポニーテールの少女が立っていた。
「……!?」
少女は少し離れた所に座った。
「私は菊野歩。覚えてる?」
追記 4月15日
一部を修正しました。