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守護霊様は賢者様  作者: 桐谷鎭伍
第一章 幼年編
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第四話 辺境の街カモーラ

本日の投稿四話目です。前のお話しからお楽しみください

 辺境伯一行はそのまま野営をするようで、従者たちがキビキビと準備をしていく。儂は母乳を飲み終わり満足そうに眠るアルベルトの傍で、その寝顔を見つめていた。


 因みに授乳時にはちゃんと目を逸らしていたぞ、スケベ根性でこの場にいるんでは無いのだ。単純に守護霊と言う性質上アルベルトから離れる事が出来ないのだ


 そしてアルベルトの傍らにはもう一人赤ん坊が寝ている。先程までアルベルトの世話をしてくれた女性の子供なのだろう。どうりで都合よく母乳が出る女性がいた訳だ


 しかし、馬車での旅とは言え、移動に時間のかかるこの世界で赤ん坊を連れてと言うのは珍しいのだが・・・



『それはねメネドールが言ったからなのよ』


『うお!吃驚した!・・・失礼だが貴方は?』


『ふふふ、ごめんなさいね。メネドールの守護をしているものよ。初めまして初心者さん』



 初心者と言われて思わず憮然としてしまう。確かに守護霊なぞ初めての経験じゃから初心者と言われればその通りなのだが・・・



『普通はね守護霊同士で詮索なんてしないわ。自分の守護する者以外には興味が無いのが当たり前なのよ』


『なるほど・・・勉強になった。しかし、今は貴方から話しかけたと思うが?』


『ええ、メネドールの子供に成るのだから興味が有ったのよ。それに随分力のある方だと思ってね』



 そう言ってコロコロと笑う彼女からは、アルベルトの母親の守護霊の様な悲壮さは感じられない。守護霊と言っても様々なものだと感じ入るものが有る


 その後も彼女から色々話を聞かせて貰う、というか聞いてもいないのによく話す守護霊だ


 彼女の話によると先程の母親は王国の首都での会議が終わった後に雇い入れた従者の家族だという。首都での屋敷の下働きをしていた従者の働きぶりを見た辺境伯が、領地へと連れ帰ると言い出したそうなのだ


 これはかなり異例な話だ。単に下働きと従者ではまるっきり扱いが変わる。下働きはあくまでも雇用しているだけで何時でも解雇できる扱いだが、従者となれば家臣の末席と言う扱いになる。ましてや辺境伯の従者だ、傍に控えて雑用をするのだから末席と言ってもかなり重要な役目だ、その辺の有象無象を指名する事は殆ど無い




「おや、初めて見る顔じゃの。よく気がついてくれる男だ」


「ハッ。新しく雇った下働きの男です」


「そうか。おい、お主名前を何と言う?」


「いえいえ。そんな恐れ多い、私などは単なる下働きです。名前を名乗るほどではございません」


「なに~!下働きだから名乗れんだと!!。判った今日からお主は儂の従者だ、それならば名乗れるだろう!」


「「えええ~!?」」



 といった具合でいつもの偏屈振りで従者として連れて来たようだ。しかも子供が生まれたばかりだと固辞する従者に一緒に連れて来いと命令して更に専用の馬車まで用意したというのだから、偏屈と言うだけでは済ませられないだろう・・・



『でもね、ああ見えて人を見る目は確かなのよ。その子を見つけたのだってその従者よ』


『ほう、それは儂らにとっては幸運だったな』



 しかも、偏屈(・・)伯の扱いに慣れていないが為にアルベルトを拾ってくれたというのだから本当に幸運だった。家臣たちはその偏屈ぶりに慣れている為、発言にも卒がない


 捨て子を拾う等と言った厄介事を処理したければ、真逆の言い方をするというのだ



「赤ん坊が捨てられていました。是非とも連れて帰りましょう」



 こう言うと、偏屈(・・)伯は・・・



「なんじゃと。そのような事が出来るか!」



 となる訳らしい。中々に家臣たちも考えるものである



『でも、それでも連れて帰ったと思うわよ』



 そう言って笑いながら、メネドールの方を指さす守護霊。その先では二人の赤ん坊を見て相好を崩している・・・いや、もはやデレデレしたと言っても良い位の顔をした辺境伯がいた



『成程な、無類の子供好きか』



 ニッコリとした笑顔で答える守護霊。と、ここで疑問に思う



『そういえばお主は本人から離れられるのか?』


『その子が成長して自分の意思を持てば少しくらいは大丈夫よ。まだ小さい内は守護する者は離れられないわね』



 どうやら、アルベルトが成長すればある程度は大丈夫らしい。自分の身が守れない内は守護霊が出来るだけ守れるようにという事だろうか?


 まぁこれで成長したアルベルトに妻が出来た時、余計な事を見なくて済みそうだ。相手の守護霊と一緒に夜の営みを見るというのは勘弁して欲しからな



☆△☆△



 翌朝、アルベルトを乗せた辺境伯メネドール一行は領地に向けて出発をした。もう少しで彼が治める領地の中心地カモーラに着くという


 アルベルトは従者の妻とその子供と一緒にメネドールの馬車に乗って移動中だ。勿論子供好きの伯爵さまのご希望な訳だ



「メネドール様。本当に跡継ぎに為さるので?」


「うむ。そしてその子が侍女だな」


「まぁ光栄ですわ。ほらマリアも御挨拶して」



 そう言って自分の娘のマリアをアルベルトの顔が見える位置に持ってくる。口振りから従者の妻は本気で受け取ってはいないのだろう。メネドールも女性には優しいのか癇癪を起した様な言い方をしないようだ



「儂は本気じゃぞ。この子にもふさわしい名前を付けねばな」


「それが産着にこの様な・・・」


「あ・る・・べ・・ると?アルベルトか。産着に血染めで名前を書くとはのぅ、余程の事情が有ったのじゃな」


「そうでなければ我が子を捨てていく事など有り得ません。せめて精一杯愛情を込めて育てましょう」



 その言葉に大きく頷くメネドールの姿に安心する。偏屈(・・)伯等と呼ばれる男に拾われた事が心配だったがどうやら大丈夫なようだな。子供好きな様子から跡継ぎ発言は兎も角、少なくても大人になるまではキッチリ育ててくれそうだ


 メネドールの守護霊である女性もニッコリと笑っている。何十年と彼を見守っている彼女が大丈夫だと言うのだし様子を見る事にしよう。しかしアルベルトを苛める様な事があれば容赦なく魔法で攻撃してやろう・・・広範囲殲滅魔法、いや自ら禁呪に指定した攻撃魔法を打ち込んでやる。


ふふふ、あれは凄いぞ。計算上はドラゴンの魔法障壁すら打ち破いて更にその肉体を引き裂くのだ。しかもそれで終わりでは無い。ゆっくりと回復魔法を掛けながら少しでも苦痛が長く続く様に改良した新しい・・・



『なにか不穏当な事考えてるでしょう?』


『な、何も考えとらんぞ。』



 ジト目で見つめてくる守護霊に思わず目を逸らしてしまう。前世の時から女性は苦手だ、生前も妻には此方の考えを(ことごと)く見破られてしまっていた。


 ドラゴンすら倒し、国王の権力ですら無視した賢者の弱点が若くして亡くなった妻だったとは夢にも思われなかっただろう。


 メネドールや従者の妻たちには馬車の中でそんな攻防が繰り広げられていた等とは気付かれる事無く馬車は進んで行く。


やがて見えてくる高い壁に囲まれた城塞都市カモーラ


 この国唯一の外国と接する領地の中心。防衛の要であるこの街がアルベルトの新しい人生の始まりの街になるのだ


 追及の視線から逸らした先に有る窓から見えるその景色。そして警戒心の無い安らかな笑顔を見せるアルベルトに新米守護霊として何をしてやるのが良いのか・・・


 賢者マーク・マーリンは持てる知識を総動員して考えるのであった


 かなりの親バカぶりを発揮しながら・・・


読んで頂いて有難う御座います


本日の投稿の最後です

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