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守護霊様は賢者様  作者: 桐谷鎭伍
結婚編
175/179

閑話 長く生きてるからと言って・・・

「カイヤ教官!障壁準備完了しました!!」


「魔力解放行くわよ!各人同調を一番に心掛けるように!!」



 流石はエリザベス王女が連れてきた魔法兵士達で、こちらの指示に応えて動く分には十分に満足できる。



「この分ならそう苦労もしないで良さそうね」



 此方の指示に的確に動く兵士達の姿に、つい独り言を漏らしてしまう。 我ながら向いていない事をやっている物だと思わなくもないが引き受けた以上は彼等を一流の魔法兵に仕立て上げるつもりだ


 彼等が戦場で求められるのは大規模な軍団魔法(レギオンマジック)であり、その発動には個人の能力では無く全体の連携こそが肝要だ


 本来、実戦経験の無い彼等を鍛えるのは団長であるエリザベス王女がすべきなのだが感覚で魔法を使う彼女が人に魔法を教えると言うのは無理があった


 結局、次点で私が選ばれたのだが可愛いアルの頼みとあれば否応も無い。 本当であればエルフである私は人族とは魔法に関する感覚が違うので教官役は不向きなのだが伊達に長く生きている訳では無いし、ちょっと育成する弟子の数が増えたと思えば問題ないだろう



「三番隊、魔力の同調が遅れているわよ!」


「し、しかし・・・」


「しかしも案山子も無い!貴方達のせいで全体が危機に陥る。グダグダ言わずにやりなさい!!!」



 泣き言を漏らす三番隊の隊長に激励の意味も込めて強めに答える。 何故か怯えた顔で必死に魔力を練り上げる隊員達の姿は気に掛かるが、言われて出来るならば初めからヤレと思ってしまう


 とはいえ、それを言っても始まらないのだしニッコリと微笑む事で褒める事にする。 その私の顔を見て何故か他の隊の兵士まで必死になっているのが気に掛かるが同調の精度が上がったのだから良しとしよう


 通常個人で魔法を発動させる場合は体内の魔力を操作して魔法を発動させる。 優れた魔法使いは外部の魔力を取り込む事で自身の魔力の消耗を押える事は可能だが、それでも一度体内に取り込んでから発動させるのが一般的とされている


 それに対して軍団魔法(レギオンマジック)は複数の魔法使い達が空間に満ちた魔力を同調させる事で大規模な魔法を発動させる。 この時に戦場に広がる各隊が完璧に同調する事が非常に重要になってくる


 軍団魔法(レギオンマジック)は大きく分けて大規模殲滅魔法とそれを防ぐ為の大規模魔法障壁の二つが主だ。 大規模殲滅魔法は敵軍を一撃で消滅させる威力があるが、仮に敵を殲滅できても同時に味方も殲滅されては意味がないので通常は魔法障壁こそが魔法師団に求められる


 だからこそ甘やかす訳にはいかないのだが・・・



「いくらなんでもいきなり魔法ぶっ放す訳ないじゃない・・・」



 きっとあのバカが広めた噂のせいで必要以上に恐れられているのだろう。 確かに冷血の二つ名は良く知らなければ恐怖の対象かも知れないが教官としてやってはいけないラインは弁えているつもりだというのに・・・



「はぁ、なんであんなのと付き合ってるんだろう」



 魔法師団が軍団魔法(レギオンマジック)に使う魔力を放出しながらつい零してしまう。 本来ならば部隊単位で担当するべきだが、それだと魔力が枯渇すれば訓練にならなくなる


 豊富な魔力を誇るエルフの私が担当すれば問題が解決するので担当しているが、魔力を放出する簡単なお仕事だとついつい他愛のない事を考えてしまうのだ


 抑々、あのバカとはアルの家庭教師としての同僚でしか無かった筈だ。 だが教えればすぐに吸収する彼を自慢したくて三人で話し込む時間が長くなっていき・・・


 馬鹿で粗野で考え無し・・・でもエルフである私にも他と変わらぬ態度で接してくれた


 騙されるって可能性を考えない・・・でも最初から他種族の私を信用してくれて疑う事をしようともしなかった


 全て力で解決できると思ってるから無計画過ぎる・・・でも一緒に戦う様になってから只の一度も私に敵が近付いた事は無かった



 ああ・・・駄目だ。否定しようとしても自分でそれを拒んでしまう



 別に付き合った相手は沢山いるし人族とだって付き合った事が無い訳では無い。 だが、所詮は一時の気紛れ。 人族とは寿命の違う私にとって添い遂げる相手には成り得ない


 かといって同族であるエルフの連中は森に引き籠って満足している様な奴ばかりで外に飛び出した私とは決定的に合わなかった


 永遠とも思える長い寿命、それを一人で過ごすと考えれば寂しいが魅力溢れるこの世界で自由にやるのも悪くないと思っていたのが、寄りにも依ってあんなバカの事が・・・


 ああ、もう!何だってこんな事で悩まなきゃいけないのよ!!これも昨夜のあのバカのセリフのせいよ!!!



「カ、カイヤ!俺の子供を産んでくれ!!」


「はぁ!?いきなり子供って」


「死ぬまで大事にする。い、いや、お前が死ぬまで俺も死なないから安心しろ!!」



 大体、順序が逆じゃない! いきなり子供って!! 普通結婚しようじゃないの!?


 抑々、只でさえエルフの私は子供が出来難いってのに冒険者としてLVの高くなった女性は余計に子供が出来なくなるのを知らないのかしら


 まぁ、バカだから仕方ないかもしれないけど、プロポーズも無しにいきなり子供は無いじゃないっての!!


 先にプロポーズしなさいよ!!


 でも、確かこの前ギルドの研究論文に男性のLVが高いと妊娠できる可能性があるって読んだ気が・・・



「そうよ、仮にLVの問題をクリアできても種族の壁は・・・」



 ブンブンと頭を振って自分の考えを否定する。 ギルドの研究論文だって比較検討するべき対象が少な過ぎて可能性止まりの話。 仮にそれがクリアできてもエルフである私がバカの子供を妊娠する可能性は・・・


 で、でも、今迄だって無理だって言われてた事を正面から力技で叶えてみせた筋金入りのバカなのよ。 そう、バカはバカでも最高レベルのバカなんだからバカみたいな事だって叶えてくれるかも・・・



「ああ!?・・・でもなんて返事すれば良いのよ!!」



 仮に、そう仮によ!バカの申込を受けるとしてなんて答えればいいのよ!?


 貴方の子供が産みたいです?そ、そそ、そんな事言える訳ないじゃない!!


 ああ、もう!なんであの時に黙って頷かなかったのよ!そうすれば悩まなくて済んだのに!!


 これもあのバカが悪いのよ!!もう少し答えやすい様に言いなさいよ!!ホントにデリカシーの無いバカって扱いに困るわ


 そ、そうだわ。きょうは目一杯サービスしてあのバカがメロメロになった隙にドサクサに紛れれば何とか・・・って、何考えてるのよ!!



「きょ、教官・・・も、もう無理・・・」


「え!?やだ!何この魔力濃度!?もっと早くに止めなさいよ!!」



 冷血の二つ名を持つ鬼教官が真っ赤な顔で頭を抱えてブンブン振ったり、頬を押えてイヤイヤしたりしながら魔力を放出するのをどうやって止めろと言うのか・・・


 意識が遠くなっていく刹那の間にそう考えた魔法師団の兵士は、しかしその言葉を発せられないまま倒れ込むのだった・・・




久しぶりに一人称視点で書こうと思ったら大苦戦でした


時間無いのに・・・

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