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守護霊様は賢者様  作者: 桐谷鎭伍
結婚編
170/179

蜂蜜酒

「ふぅ、お疲れ様」


「お疲れ様です!お蔭で問題点が掴めました」


「うん、あんまり無理しないでね」



 アルベルト達との模擬戦で感覚を掴んだのだろう、サームは疲れさえも気にならないのか元気よく答える。 それこそアルベルトが止めなければこのまま問題点の修正でも始めそうな勢いであった


 正直、模擬戦の結果で言えば私兵隊の負けと言っても良いだろう。 実際、アルベルトやヴィクトリア、それに黒マッディ君のスピードには付いて行けず、赤マッディ君や黄マッディ君には攻撃を弾き返された


 だが、魔道具で生み出された影法師達を倒す事には成功しており、ミンツァーの徒が相手ならばそれで十分だ


 寧ろ、何もかも上手く行った方が苦労性のサームには不安が残ったであろう。 新たな課題を見つけてそれを訓練で克服する方が不安を紛らわせると笑っていた



「さて、と・・・って、なんでべス達がそんなに疲れてるの?」


「・・・色々あったんだけど今日はもう勘弁して?」


「ん・・・またやらかした?」


『ムッ!?またとはなんじゃ、またとは』


「まま゛!!」


「ああ、そう言う事か・・・」



 意気揚々と去る私兵隊を見送り振り返ってみればサーム達とは対照的に疲れ果てた表情のエリザベス。 模擬戦を見学していただけで此処まで疲れ果てるという事は無い筈であったのだが、ヴィクトリアの指摘に不満そうなマーリンの表情で薄々事態を察するアルベルト


 更に青マッディ君と桃マッディちゃんまでジト目で睨んでいる処を見るとかなり盛大にやらかしたのだろう



「う~んこれは暫らく特訓もお休みにするべきだよね?」


『なっ!?そんな訳にはいかんぞ!計画が狂うではないか!!』


「ん・・・誰のせい?」


「どっちにしてもべスは休ませないといけないよ。どう考えても魔力切れだし」



 ここが攻め時と見たのかアルベルトは顎の下に手をやりながら思案顔でマーリンに問い質す。 だが当然マーリンがそれを飲み込む筈は無いのだが、エリザベスの怠そうな表情は魔力が枯渇寸前な事を示している


 この状態で彼女が特訓に参加出来る訳も無く、しかも何やら手を加えているのか今回の二十四時間耐久魔物殲滅作戦に出てくる魔物達は特に戦いにくい相手ばかりでエリザベス抜きで戦い続ける事は難しい


 詳しく聞いてみれば、マーリンの作った例の魔道具の欠陥を穴埋めする為に魔力を送り込んでいたのだから抑々の原因はマーリンに在るのだ



『むぅ、三日じゃ。三日以上となると迷宮の結界が保たん』


「この前殲滅したばかりなのに三日しか保たないの!?」


『今回の特訓用に特別に作った迷宮じゃからな。 カリュアーの力を借りても抑えておけるのはそれが限界じゃ』



 アポフィスとの決戦に備えマーリンの意気込みは留まる事を知らず、うなぎ登りの情熱が暴走してい状態だ。 確かに王国としては初の外征を控え戦力の増強は必須だ。 ましてや邪神であるアポフィスとの戦いを控えるアルベルト達の戦力増強は最優先事項であろう


 だが、大精霊でもあるカリュアーの力を以ってしても三日ほどしか持たない迷宮は聊かやり過ぎであろう。 手筈では神国が王国へと攻め入るのを待って此方から攻勢に出るのだし、帝国を打倒したばかりの神国が王国へとちょっかいを掛けるにはまだ時間が有る筈であった



「ん・・・改善を要求」


『しかしじゃな・・・』


「そうよ!新婚なのに全然新婚らしい事してないのよ!!」


『新婚と言うてものう・・・』



 新婚を強調する二人の新妻であったが、エリザベスもセイレケにやってきて五年以上たっており、ヴィクトリアに至っては十年以上一緒にいる。 一緒に暮らした期間を考えると新婚を訴えるには少々婚約期間が長すぎるとマーリンは訴えるが・・・



「ん・・・結婚したばっかり」


「そうよ!婚約時代には出来なかった事をするのよ!!」


『婚約時代に出来なんだ事って・・・アル、お主思い付くか?』


「え!?僕?え~と、ほ、ほらその・・・あっそうだ蜂蜜酒が余ってるから飲まないと」


「ん・・・そうじゃない」


「そうよ、まったく男って・・・」



 正に巻き込まれたアルベルト。 基本的に彼自身は新婚を主張したい訳ではない。 年長の既婚者の話を聞いてそういう物だと理解しているだけだ。


 更に長い結婚生活を暮していく中で対応を誤ると後々までチクチク言われると時期の一つだ、と聞き及んでいる為に二人の事を気遣っていたが、では新婚らしい事と言われれば特に思い付かないのが現状だ



「ふ、二人と一緒にいる事が大事だと僕は思うんだけど・・・」


「ん・・・六十点」


「まぁアルに女心を察しろってのが無理だったわね」



 結局、苦し紛れの言い訳は酷評されたのだが、それでも努力と気持ちは伝わったのか少しは機嫌を直してくれたようで街へと戻る足取りも軽くなっているようだ



『ほっほっほ。女性には特別感という物が必要なのじゃよ』


「特別感って言われても・・・」


『ふむ、ほれ指輪とか装飾品も記念になるからこそ価値が在るのじゃ』


「そうなんだ。高いからって事じゃないんだね」


『そうじゃ。高ければ良いと思っておると手痛いしっぺ返しを喰らうぞ?まぁ、安いとそれもまた問題あるのじゃが・・・』



 マーリンの少し遠い目には生前の苦労が映っているのだろう。 例え賢者であっても嫁さんへのプレゼントと言うのは正解を見い出せないものらしい



「うう・・・これからを考えると胃が痛くなってくるよ」


『ふむ、結婚とはそう言うものじゃよ。さしずめ新婚じゃからこそという記念品を考えねばなるまいて』


「新婚だからこそか・・・って、結婚指輪も送ったしまだ足りないって事なの!?」


『まぁの、しかし機嫌を直して貰わんと特訓も間々ならんぞ』


「いや、それをやめれば問題解決の様な気が・・・」


『ほっほっほ、そう言う訳にはいかん。なにか気の利いた贈り物を考えねばなるまいて』



 物を送れば何とかなると思っているあたり生前のマーリンの奥さんも色々苦労したのかも知れない。 だがそんな事は当然アルベルトには判る筈も無い。 実際には彼が言う通り休暇をただイチャイチャするだけで過ごせばそれだけで二人は満足するのだが・・・


 流石の賢者式教育法も教師役のマーリンが間違った知識を持っていれば教えられる立場のアルベルトが正解に辿り着く事は無い


 早速この休日を利用して贈り物を考えようとする二人がそれに気が付く日は果たして来るのだろうか・・・


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