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守護霊様は賢者様  作者: 桐谷鎭伍
結婚編
168/179

私兵隊とアルベルト

「弓隊放て!!」



 サームの掛け声と共に前方に布陣するストーンゴーレムに向って放たれる。 勿論ゴーレムと言ってもマッディ君達の様な特別な個体では無く、あくまでも一般的なストーンゴーレムであり実戦に近い形式で訓練する為に魔法師団が用意した物ではあった


 そこへ放たれる無慈悲な矢が雨霰と降り注ぐ。 私兵隊の弓隊と言えば長弓から放たれる鉄製の矢が標準装備だが、それはあくまでも城壁を利用した打ち下しで使用するもので今回の演習の様に平原で使う場合は木製の矢だ


 とは言っても、特製の長弓は通常よりも重い矢を、まだ距離のあるゴーレム達まで悠々と届くだけの威力を秘めていた。 高空より降りかかる重量のある矢はストーンゴーレムの固い身体を物ともせず彼等を地面に縫い付ける。 



「左翼!弾幕薄いよ!?何やってんの!!」


「申し訳ありません!」


「もう一度初めからだ。弓隊構え!!」



 だが、左翼から放たれた矢は風に流されたのかお互いの干渉のせいでその着弾点にムラが出来てしまっていた。


 距離が遠くなる程風の影響を受ける弓矢で面制圧を目指すには放たれた矢が干渉しあわない様にしなければならず、その為には各射手が放つタイミングが重要になる事をもう一度徹底させゴーレムの復活を待つ



「弓隊!放て!!」



「ドゥヒュ!」と風を切る音と共に放たれた矢は今度は乱れる事無くゴーレム達を貫く。  



「前衛歩兵隊、盾突撃(シールドチャージ)用意!」


「吶喊!!」


「おおおおお!!」


「突撃!!」



 サームの指示に小隊長が自ら大声で部隊を鼓舞し、その身に闘気(オーラ)を漲らせる。 前衛に並ぶ大盾を構えた歩兵達もそれに倣い部隊全員の闘気(オーラ)が高まった処で小隊長が大声と共に部隊を解き放つ


 身に纏った闘気(オーラ)を推進力に変えて突き進む前列の重装歩兵たち。 私兵達の中でも特に身体能力に優れゴリゴリの筋肉に包まれた彼等だ、重装鎧を身に纏った質量を乗せた勢いは本来は守勢に廻る事の多い彼等に驚異的な攻撃力を授けている


 ぶちかまされた攻撃は弓矢で隊列を崩されたストーンゴーレム達を粉砕し、そのまま本来の役目に戻る事で戦場に強固な壁を作り出す



「騎馬隊突撃!!本当の突撃(チャージ)を見せてやれ!!」


「おお!!」



 私兵隊の騎馬中隊を任されているハサンがその機動力を発揮して乱れた敵集団を迂回する様に廻りこみ横合いから騎馬を突っ込ませる


 本来、突撃(チャージ)は彼等騎馬隊の十八番でありデストリア種の大きな馬体を利用して戦場に楔を打ち込む。 



「弓隊!残敵の殲滅!!」


「魔法兵!弓隊に後れを取るな!」


「重装歩兵、前へ!!」



 混乱したゴーレム達を更に弓隊と魔法兵が追い打ちをかけ、空いたスペースを重装歩兵が歩を進め侵食していく。 痛みを感じる事の無いゴーレムであっても物理的な波と降り注ぐ攻撃には為す術は無かった



「大分形に成って来たみたいだね、サーム」


「殿下!まだまだ満足はいきませんが教えられた盾突撃(シールドチャージ)を組み込む処までは出来る様になりました」



 特訓の合間に視察に訪れたアルベルトに声を掛けられ笑顔を見せるサーム。 自らの仕える主人に褒められたことが嬉しいのだろう、言葉とは裏腹にその声は弾んでいた



『ほっほっほ、後は敵の素早さに対応できれば対ミンツァーの徒には十分じゃろ』


「そうだね、取敢えずは合格かな。忙しい中大変だったでしょう?」


「勿体無いお言葉です。ですが此処まで頑張った部下達を褒めてやってください」


「うんうん、みんな良くやってくれたね」



 アリーが行った募兵にサーム達私兵隊の幹部が関わっていたのを報告でアルベルトの耳にも届いていた。 そんな中で此処まで私兵隊達を鍛え上げたのだからサームの苦労はかなりの物であっただろう


 勿論、闘気(オーラ)の修得や新しい戦い方を身に着けた一般兵達の努力も相当な物であっただろう事も間違いない。 そんな彼等の顔を確認しながらアルベルトは笑顔で自らの部下達を褒めちぎる



「しかし、まだゴーレム達との訓練が形に成っただけです。 ミンツァーの徒が相手となればそう簡単にはいかないでしょう」


「う~ん、まぁそれはそうなんだけど・・・」


『ほっほっほ、奴等の最大の脅威は感情による怯えが無い事じゃ。攻撃自体はそう脅威でも無いからの』



 ミンツァーの徒の身体能力はその身体のリミッターを外される事によって通常よりも高いのは事実だ。 だが考える力を失った彼等はただ闇雲に飛び付いて来るだけであり守勢に回れば不利になるが、単純にその攻撃を撥ね返す事は難しくは無い


 問題は恐怖や身の安全を一切考慮しない事なのだ。 仲間さえ踏み台にして押し寄せる怒涛の波にどう対処するか? それに飲み込まれないようにする為の盾突撃(シールドチャージ)であり重装歩兵たちなのだ


 盾突撃(シールドチャージ)で押し寄せる波を弾き飛ばし、且つその重装でミンツァーの徒を抑え込む。 眼前の敵にしか目が行かない知能の低さを利用して横合いからの攻撃と弓矢と魔法で数を減らす。 攻撃に特化しているミンツァーの徒は怒涛の如き波さえ凌いでしまえば非常に脆い存在でもあるのだ



「まぁ、初見で倒すのは難しいだろうけど対策出来るなら問題ないよ?」


「ですが、やはりゴーレムの動きとは・・・」



 公国での戦いでミンツァーの徒を破ったアルベルトや、生前に終末教との戦いで経験しているマーリンの言葉にもイマイチ不安を拭えない様子のサーム


 いつもの彼ならばアルベルトやマーリンの言葉に全幅の信頼を寄せるのだが、苦労性の彼は二人が自分達を過大評価している様な気がしているようであった


 これが単純にミンツァーの徒に対する壁になって、殲滅はアルベルトやバイマト達が行うと言うのならば此処まで心配はしないのだろう



『ほっほっほ、そこは心配いらんと言っておるのじゃがのう・・・では素早い敵と戦ってみるというのはどうじゃ?』


「そうは言っても、実戦の訓練に丁度良い相手というのもなかなか・・・」



 模擬戦という事であれば部隊を分ければ可能であった。 しかしそんな事は既に何回も繰り返して来ているのだ。 既に実戦での成果を確認する場面に措いては実際に本気の攻撃を行わなければ確認のしようも無い



『なに、マッディ君やアル達ならば丁度良かろうて』


「で、殿下達とですか!?」


『うむ、ああ勿論アル達は攻撃せんから安心するが良い。ただ攻撃を当てる事を考えれば良いのじゃ』


「攻撃しちゃいけないって、ただ的になれって事?・・・流石に自信ないんだけど」



 マーリンの言葉に驚きの声を上げるサーム。 護るべき対象のアルベルト相手に本気の攻撃をすると言うのは彼等の矜持を無視した提案なのだから無理は無いだろう


 だが、何をどう勘違いしたのかマーリンはそれを実力差から来る不安と解釈した様であった。 確かにLVが存在しステータスがある以上、ある一定の差が有れば群の力だけでは攻略できないと言う問題はある


 バイマトの攻撃力ならば一撃で前衛を吹き飛ばすのも可能だし、アルベルトが本気で護りに入れば一般兵の攻撃力ではそれを抜く事は出来ないだろう。 抑々、二人が躱す事に集中すればそう簡単に攻撃が当たる物では無い 


 LV差が一騎当千や万夫不当というのを実現してしまう世界なのだ。 とはいえだ、一般の兵達ならばともかく、サームやハサンなどの幹部たちはバイマトに直接鍛えられているし私兵達の一般兵の鍛錬ぶりは通常とはまるで違う精鋭揃いだ


 その上で彼等の訓練になる様に手加減しつつ攻め掛けて、だがアルベルトは攻撃を当ててはいけないとなればアルベルトに当てるだけならばLV差が問題になる事は無い


 しかも、ミンツァーの徒の素早さを実感する為の訓練なのだから必ずしも倒す必要は無い。 ストーンゴーレムを粉砕するだけの攻撃力が有るのだから彼等に対するには十分な事は間違いなく、そこはサームにも不安は無いだろうとマーリンは笑う


 つまり、本気の攻撃をアルベルト達に当てさえすれば良い訓練でありLV差はこの際無視しても良い事になる、と言うのがマーリンの主張なのだが・・・



「主君に刃を向けるのですか?・・・」


「えっと、流石に僕もアレ(シールドチャージ)を受けて無傷な自信は無いんだけど・・・」


『ほっほっほ。まぁ細かい事はやってみれば判るじゃろうて』



 不安いっぱいで顔を見合わせる二人の事など気にしない様子で笑うマーリンであった・・・


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