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守護霊様は賢者様  作者: 桐谷鎭伍
結婚編
164/179

特訓~⑥

「マーリン!やり過ぎだよ!!」


『ほっほっほ、予めカリュアーが言っておったじゃろ?』


「うん、今回の迷宮は浅めだし魔力もタップリ貰ったからね」



 アルベルトの抗議に年長組はさも悪戯が成功したかのようにいい笑顔で答えているが、最初の魔物でレッド―オーガが現れるとなるとこの先が非常に心配になるアルベルト


 基本的に迷宮というのは奥にいる魔物ほど強くなっていく。 迷宮核(ダンジョンコア)と距離が近ければそれだけ迷宮核(ダンジョンコア)が発する強い魔力から生まれるからだ


 カリュアーが創り出す迷宮は、彼女が集めた魔力を元に人為的な迷宮核(ダンジョンコア)として創り出している。 その為、彼女はどれだけ魔力を込めるかによって難易度の調整が可能なのだ


 抑々、迷宮の魔物達は迷宮核(ダンジョンコア)から発せられる魔力によって生まれる。 迷宮内という密閉空間に漂う魔力が一定の条件下で魔物を発生させるからだ。 当然、迷宮核(ダンジョンコア)の発する魔力が強ければ強いほど生まれる魔物も強くなる


 やや、条件は異なるが、かつてアルベルトが倒したカリュアーの森に発生した澱んだ魔力からグレーターデモーンが生まれたのと基本的には一緒である


 あの大悪魔は澱んだ魔力の中心で異界の扉を開けて直ぐに受肉を果たした特殊な個体だったが、もしカリュアーが本気で魔力を込めた迷宮核(ダンジョンコア)ならばそれ以上に強い魔物が生まれても不思議は無い


 しかも階層が浅いという事はそれだけ迷宮核(ダンジョンコア)に近く強い魔物が発生しているに違いないのだ



「でも、安心してね。階層を浅くしたら魔物同士が喧嘩し始めちゃったから数は少なめだよ?」


「可愛く言っても駄目だからね!その分強い魔物しか残らなかったって事でしょ!!」


「テヘッ」


『ほっほっほ、ほれ次の魔物が出て来るぞ』



 マーリンの言葉に恨みがましい視線を残したままアルベルトは再び迷宮の入口に向かって構える。 既にヴィクトリアとエリザベスが構えているが、アルベルトは一言文句を言わなければ気が済まなかったのであろう



「今度は何が出てくる・・・って、ドラゴン!?」


「ん・・・まだ小っちゃい?」


「レッサードラゴンかしら?でもその分数は多そうだけど?」



 迷宮の入口から現れたのは赤茶けた鱗を持つドラゴン。 サイズ的にも王都の守護聖龍であるベルクワトと比べればかなり小さく、その迫力も比べようも無い程度であった


 とはいえだ、この場合比べる対象にベルクワトやジョゼル達を持ってきているアルベルト達が間違っているのであって、本来ドラゴンとは出会ってしまったら死を覚悟しなければならない相手だ。 例え下位のレッサードラゴンであってもそこはあまり変わらない


 しかも、先程数は少なめとカリュアーが言っていたのに反して奥にはまだまだ控えている気配をエリザベスは感じ取っており、モタモタしていたらセイレケの街にまで被害が出てしまう



「飛ばれたら厄介だ。 入口から出てきたのを確実に倒そう」


「ん・・・陰縛り」


「ドッ、せいっ!!」


「ん・・・はしたない」


「言ってる場合?緊急避難よ!!」



 正に迷宮から出て来たばかりのドラゴンはヴィクトリアの闇魔法でその身を縛られ動きを止める。 それを力任せに斧の横っ面で叩きつけたエリザベスの一撃はドラゴンを吹き飛ばし、その入り口を巨体で塞いでしまう



「まさかこんなに早く使う事になっちゃうとは思わなかった」


「ん・・・出し惜しみは無し」


「ほら、さっさとアレで止めを刺しちゃって


「・・・魔闘剣!」



 かつてマーリンに教えられた魔法剣は使うアルベルトも火傷すると言う欠陥が有ったが、自らの闘気と混ぜ合わせる事でそれを克服したアルベルトの【魔闘剣】。 けっして魔力と闘気を【纏う剣】という事では無いのだが、バイマトに散々揄われたアルベルトは余りその名前を出したくは無かった


 それならば叫ばなくとも良さそう物だが、賢者式教育法では必殺技は叫ぶ物、と教えられているアルベルトは条件反射でつい、叫んでしまうのだった



 アルベルトの魔闘剣はレッサードラゴンの、ドラゴンの中ではやや細いその首を見事に切り落とす。 不意打ちに近い状態でヴィクトリアの闇魔法がその身体を縛っていたからこそ簡単に見えるが、本来のドラゴンとの戦いはこんなに簡単にはいかない



「危ない!下がって!!」


「ん・・・吐息(ブレス)?」


「お友達って訳じゃなかったみたいね」



 剣を振り抜いて残心のままで有ったアルベルトは鋭く警告を発すると、二人を庇う様にして後ろに下がらせる。 「カッ!」と入口が光ったかと思うと、そこを塞いでいたレッサードラゴンの身体を焼き尽くす程の勢いで炎が吹き出す


 おそらく迷宮内の勢力争いを共に戦ったであろう仲間、と思っていたのは此方の考えだったようで、現れたレッサードラゴンにとっては邪魔な蓋に過ぎなかった様だった



「ん・・・ちょっと大きい?」


「あ~きっとあれね、「奴は四天王の中でも最弱」って奴ね」


「べス、物語の読み過ぎだよ。大体四体で終わりそうもないし?」



 確かに次に出てきたのは先程のレッサードラゴンよりは一回り大きな個体だ。 だからと言ってまさか弱い順に出てくる様な事は無いだろうし、エリザベスの言うのはバトル物の物語の中での話だ


 大体、古龍(エンシェントドラゴン)ならばともかく、レッサードラゴン程度にそんな知能が有る訳も無い  


 吐息(ブレス)の余韻の煙を口から漏らしながら「グルル」と低い唸り声を上げるレッサードラゴン。 既に戦闘態勢に入っており先程の様に不意を突く事は難しそうだ


 だが、アルベルトは臆する事なく間合いを詰める。 流石に体勢を崩している訳でなければ首筋を一撃という訳にはいかない。 そうなれば魔闘剣もその燃費の悪さが仇となって常時発動しておくのは悪手だ


 牽制する様に低く飛び込んだアルベルトの背中を爪が掠る。 だが、巨体であるが故に近い間合いに飛び込んでしまえばその攻撃手段は限られる。 



「って、やっぱり硬い。てか、これ本当にレッサードラゴン?」


「ん・・・!」


「穿て!石礫(ストーンバレット)!!」



 ドラゴンの鱗と言えば魔物の中でも最上級の素材だ。 例え最下級のレッサードラゴンと言えどもその例に漏れないだろう。 だがレッド―オーガを斬り裂いたアルベルトとテンゲン作の黒帝を以ってすればもっと深い傷が出来て当たり前の筈であった


 だが、その攻撃は鱗を何枚か斬り裂いただけに留まるのみだった。 そのアルベルトの背中を踏み台に鼻っ面をぶん殴ったヴィクトリアの拳も大して効果が無かった様で、殴った張本人も手応えを感じた様子は無かった



「まぁ魔法は効かないか・・・・当然ちゃっ当然よね」


「でも、それにしてもなんかおかしい気ががするよ」



 ドラゴン達が放つ吐息(ブレス)は体内に溜め込まれた魔力を変換して放つ為、彼等は非常に高い魔法抵抗力を持っている。 だがエリザベスの放った魔法は魔力を元にした攻撃では無く物理的な攻撃力を持った魔法だ


 初級の魔法とはいえ魔法神の加護を持つ彼女が放つ石礫(ストーンバレット)は金属鎧すらも貫通する威力を持っているのだ。 それを喰らって平然としていると言うのは少し納得がいかなかった



「ん・・・試してみる」


「あっ、ヴィク!」



 ブンッという音と共に身体がブレて見えるほどの速度でレッサードラゴンへと迫るヴィクトリア。 それに反応しただけでも流石と言うべきだろう。 だが、その攻撃は掠る事も無くただ彼女が巻き上げた土埃を斬り裂いたのみだった



「ん・・・七星蹴掌」


「ガガッガガッ!」


「・・・爆裂掌!!」



 レッサードラゴンの身体を駆け上がりながら掌打と蹴りを叩き込み、更にその頭上まで駆け上がり大きく振りかぶった拳に闘気(オーラ)を纏った拳を叩きつける連続技を放ったヴィクトリア


 正に爆ぜたとしか言えないその一撃にフラッっと体勢を崩したものの、しかしその身体には大して傷が残ってはいなかった


 打撃を受けた個所の鱗は罅割れ損傷しているものの、その肉体にまで衝撃は伝わらなかったのか大したダメージを受けている様子は無い



「ん・・・ズルしてる」


「ズルって言われても・・・」


「ん・・・通らなかった」


「通らなかったって。衝撃がって事?」



 超近接で格闘をメインとするヴィクトリア。 抑々拳で戦う彼女の場合、己が拳よりも硬い相手と戦う事はいつもの事だ。 今でこそテンゲン作のナックルガードを使っているので拳を痛める事は無いとはいえ、彼女の拳は只の打撃では無い


 浸透する攻撃。 対人で言えば鎧、魔物であれば筋肉や毛皮など彼女の攻撃が只の衝撃であればそれが通らない相手はいくらでもいる


 だからこそ、その堅い障害物の向こうに攻撃を通してこその彼女の強さなのだ。 それが一切通らないという事は単純に鱗だけで防いでいる訳では無いという事だ



「ホント、嫌がらせとしか思えない。次から次へとまったく・・・」


「ふふ、でもアル楽しそうよ?」


「ん・・・笑ってる」



 カリュアーがどれだけ魔力を込めた迷宮であろうと、レッサードラゴンはレッサードラゴンだ。 多少強さが変動しようともヴィクトリアの攻撃がまるで伝わらないという事は無い筈だ


 だが、目の前の相手はそれを防いでいる事は確かであり考えられるとすれば・・・



『ほっほっほ、お手並み拝見じゃな』


「ふふふ、後で怒られても知らないよ?」


『まぁ楽しんでるようじゃし大丈夫じゃろ?』



 ほくそ笑む年長者二人にも案外アルベルトが楽しんでいる様子が見て採れた。 何だかんだで自分の実力を試せる相手というのも悪くは無いのだろう


 特にアルベルト程の実力になれば拮抗する相手というのは非常に少ない


 自らの施した仕掛けにどう気が付くのか、目を細めて眺めるマーリンであった・・・



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