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守護霊様は賢者様  作者: 桐谷鎭伍
結婚編
161/179

特訓~③

「ちょ、待って待って!無理無理!!もう無理だから!!!」


『ほっほっほ、それドンドン行くぞ?』



 訓練場に響き渡るエリザベスの声。 だが、マーリンはいつもの様に朗らかに笑いながら、しかしその手を緩めようとはしない


 若干、昨日の夜に上げた嬌声に似ていたのを知っているアルベルトとヴィクトリアは苦笑いを浮かべるが、自分達も特訓の真っ最中であり顔を向けるほどの余裕は無い


 それに実際に行われているのはアルベルトが放つ夜の攻撃では無く、青マッディ君とマーリンの魔法攻撃である。 とはいえ、魔法での攻撃とは言っても休日の前とは打って変わって二人が放つのは水と土の魔法を混ぜた複合魔法であった



「だから重いって!魔法の盾が動かなくなっちゃう!?」


『それ、マッディ君達よ今がチャンスじゃ』


「「「ま゛っ!!」」」



 マーリンと青マッディ君の放つ複合魔法、というか魔法で生み出した泥自体には然程の攻撃力が有る訳では無い。 だが、粘着性を付与したソレは重りとなりフヨフヨと浮かぶ魔法の盾の動きを阻害する


 その上でマーリンの掛け声で赤マッディ君と黒マッディ君が接近戦を挑み、桃マッディちゃんが気弾(フォース)を放ちエリザベスを追い込んで行くのだ


 休日の前までは、その意味は分からずとも彼等の攻撃を防いでいたエリザベスであったが泥の重みで動きの鈍くなった魔法の盾では赤マッディ君達の攻撃を防ぎきれなくなっていく



『ほっほっほ、単純に威力を上げては直ぐに復活するのでな。ちょっと考えさせられたぞ?』


「だからってこれになんの意味が有るのよ!!」


『ふむ、こうでもせねばお主自身の実力で戦う事にはならんからの』



 特訓が始まってからの執拗な攻撃はエリザベスの魔法の盾を機能させない為の物だった。 なにせ防御を魔法の盾に任せて豪快にメイスでぶっ叩くだけのエリザベスだ。 彼女に戦い方を教えるには魔法の盾をどうにかせねばならないのだ。 マーリン達が放つ複合魔法はその為に考え出された苦肉の策だった



「わ、私は魔法使いなんだからちょっとは手加減してよ!!」


『いやいや、それを言うなら魔法使いらしい戦い方を覚えるべきじゃな。それが嫌なら魔法戦士になるしかないのう』


「魔法戦士って言われても・・・ちょっと!赤マッディ君も手加減してよ」



 エリザベスは自身の身体能力を魔法で高める事で何とかマッディ君達の攻撃を凌いでいるが、それでも基礎のまるでなっていない彼女の技量では徐々に押され始める


 確かに魔方神の加護を存分に受ける彼女の身体強化の魔法は凄まじい物が有るが、それでも戦う術を知らなければ三人がかりでの攻撃を凌げるものでは無い


 元々、後衛で大人しくしている性格では無いエリザベスに【並列思考】を覚えさせて魔法戦士に仕立て上げるつもりのマーリンの思惑をブチ破ったのが、魔法神の加護で発動した魔法の盾だ。 これによって彼女は前衛で戦う事が出来る様になった


 しかしそれはマーリンが描く魔法戦士には程遠い物であった。 彼が描くその理想はあくまでも戦士としての戦いがメインであり、その補助としての魔法。 そしてその事によって生み出される通常の戦士とは違う特異性や万能性と言った物が無ければいけない


 ある意味エリザベスの戦い方は特異性の塊と言えなくもないが、技量の伴わない魔法の盾に頼った戦い方ではこの先に限度が出てくるだろう。 魔法の盾で防げない攻撃を受けた時の対処法を身に着けなければならないのだ



「もう!これならどうよ!!」


「まっ!」



 赤マッディ君の影に忍んで接近してくる黒マッディ君へ向かって牽制のファイアーボールを放つエリザベス。 それはマーリンの理想に近い姿ではあったが、実際には遠く及ばない物だ


【並列思考】を得る事が出来なかったエリザベスに魔法神が与えた加護。 彼女の脳内にあるイメージ上のスイッチを押すと自動で放たれる魔法。 だが、それは彼女の実力からすれば随分とお粗末な物なのだ


 単に魔法使いとしてならば彼女が放つファイアーボールならば同時に十個や二十個放つ事も難しくは無いだろうし、数を減らして威力を上げる事も可能だろう


 だが、今アッサリと躱されたそれは威力も無い単一の火の玉であった。 牽制の為とはいえマッディ君達の実力を以ってすれば脅威でもなんでもなかった



『ほっほっほ、そんな魔法では意味が無いのう。牽制とは言えもっと脅威を感じる物でなければな』


「そ、そんな事言ったって。手が廻んないわよ」


「まぁ~♪」



 既に赤マッディ君の攻撃はエリザベスのメイスのみを封じるために振るわれており、その隙を黒マッディ君が突くという形が出来ている。 更に桃マッディちゃんが悪戯気分で気弾(フォース)を放っているだけだ


 とはいえ、魔法の盾を封じられたエリザベスはそれだけでほぼ何も出来ない状況に陥っていた。 



「ああ、もう腹立つ!!ちょっと魔法神様、何とかしてよ!!!」


『安易に神に頼っても力は貸してくれんぞ?』


「そんな事ないわよ!私の魔法神様は特別なんだから!!」



 神を私物化している様なエリザベスの発言であったが、流石の魔法神も早々加護を与える訳では無いとマーリンはほくそ笑む。 抑々彼女が甘やかしたりしなければエリザベスはとっくに【並列思考】を得ていた筈なのだ


 態と大きめのモーションで振りかぶる赤マッディ君。 自身の攻撃を防がせて黒マッディ君の攻撃に繋げるつもりだ。 流石に何度も繰り返されればエリザベスにもそれ位は読める。 動きの鈍くなった魔法の盾、いつもは自動で攻撃を防いでくれるそれを自身が動く事によって何とか赤マッディ君の攻撃に合わせようとする。 だが、そこに桃マッディちゃんの気弾(フォース)が攻撃の軌道上から魔法の盾を横から吹き飛ばしてしまう



「クッ!」


「ま!?」


『ほっほっほ、そうそう防具を使うのも手じゃのう。じゃが次は通じんぞ?』


「判ってるわよ!!」



 マッディ君達の攻撃はエリザベスを確実に追い込んでいるが、だからこその攻撃は少し手を抜いていたのだろう。 彼女もドワーフ製の防具の頑丈さを合わせれば攻撃を防ぐことは可能だと見切ったのだろう


 だが、二度とは通じない事はマーリンが言わなくともエリザベスも判っている。 エリザベスに怪我をさせずにギリギリのダメージを与える事位マッディ君達にはお手の物なのだ



「攻撃を頭で考えるから駄目なのよ。無意識で出来ればその分を魔法に使える筈だわ!」


『いや、そうは上手く・・・大体、お主元々魔法使いじゃろう?無意識で攻撃ってそんな達人級の戦士じゃあるまいし』


「あとは魔法の盾だから悪いのよ!攻撃にも使えれば泥なんて防げるんだから!!」


『い、いや、じゃからの、【並列思考】を身に着ける事が肝要なんじゃが・・・』


「ああ、もう!ゴチャゴチャ煩いのよ! 私は私のやり方でやるってんのよ!!」



 ある意味エリザベスらしい話であった。 これがアルベルトならば【並列思考】の取得という道が示されていればそこへ向かって我武者羅に努力するだろう。 かなりの無茶ぶりも含むマーリンの賢者式教育法は彼の素直な性格のお蔭で成功したと言って良い


 だが、エリザベスの様に人の話を聞かないタイプになるとそうはいかない。 なにせマーリンが示す道に素直に従ってくれないのだから彼の思惑通りに進む筈も無いのだ


 ただ、これは全ての教師に言える事なのだからマーリンが悪いという訳では無いだろう。 魔法神が加護だけ与えると言うのも試練を与えても無駄と悟っているだけかもしれない



 エリザベスから迸る魔力の奔流。 魔法を放つという訳では無く己が身に存在する魔力を全身から放っているのだろう。 それは達人が闘気(オーラ)を放ちその身に纏う姿に似ていた



「此処からは本当の全力なんだから!」


「ま゛ぁ~」


『ほっ!なんと魔力を具現化して魔法神の加護を上塗りするか!』



 エリザベスの放つ魔力の余りの勢いにマッディ君達は望まぬ後退を強いられる。 そしてその魔力は魔法の盾に付いた泥を吹き飛ばし更に彼女の望む様に姿を変える



「私の魔法を受けてみなさい。風よ!火よ!水よ!土よ!四大属性槍龍突槍フォースエレメントジャベリン


「ま゛!?まぁまままっま゛!?」



 彼女の魔力は四大属性の槍をその背に顕現させ、更には魔法の盾から姿を変えた剣を振りかざしその威容を現す


 そのまま、その迫力に何事かをマーリンに抗議するマッデイ君達を見据えて身体強化を施したその力で大地を蹴ると、一瞬で間合いを詰める



「ま゛!」


「遅いわ!」



 しかし、そこは英雄たちの戦闘データを移植されている赤マッディ君。 すかさず大剣を構えて迎撃するがエリザベスは自身の放った魔力でその動きを把握すると、目で追いもせずに無造作にメイスを繰り出す


 その動きは既に人の動きですらなく、赤マッディ君の戦闘データに無い物だった。 辛うじて受け止めたその一撃、しかしその上空から振り下ろされる魔法の剣の動きにまでは付いて行けなかった。 哀れ剣の一撃で弾き飛ばされた赤マッディ君。 それを助けようと同時に動いた黒マッディ君と桃マッディちゃんには属性を付与された槍がその身を貫く



『ま、マッディ君!!ミスリルマッドゴーレムを貫く槍じゃと!?』


「どうよ!!私が本気になれば・・・って、あれ?」


『馬鹿者!魔力を使い過ぎじゃ!!』



 見事、マッディ君達を倒してドヤ顔を決めようとしたエリザベスは、しかし魔力を使い過ぎて足元も覚束ない状態に陥ってしまう



「へへ~ん、やってやったわよ」


「もう、べス。危ない事しちゃ駄目だよ」


『まったく、無茶をしよる』


「ん・・・満足そう?」


「まぁ、この顔みたら文句も言えないかな?」


『ふむ、後は制御を覚えれば合格じゃがの』



 各々、別メニューで特訓しているとはいえ流石に此処まで無茶をされてはアルベルト達も気が付かない筈は無い。 咄嗟に駆け付け支えたものの魔力欠乏で意識を失いながらも満足そうに自分の膝の上で眠るエリザベスの顔をみれば余り文句も言えないアルベルト



「う~ん、まさかべスが一抜けするとは・・・」


「ん・・・負けられない」


 スゥスゥと眠るエリザベスに気合を入れ直す二人であった・・・


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