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守護霊様は賢者様  作者: 桐谷鎭伍
第一章 幼年編
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第十六話 アルベルトの初陣~⑤

 辺境伯メネドール・サウスバーグが治める辺境の地サウスバーグ領の要衝セイレケ砦。取敢えずは王国側が緒戦を制し帝国軍は撤退していった


 とは言え本陣が少し後ろに下がった程度の話でサウスバーグ領から軍を引いた訳では無いので継戦の意思はまだあるのだろう


 確かに重装騎兵に損害が出ているが帝国軍の兵数はさほど減ってはいないのだから、指揮官が撤退を決意するにはまだ早いのかもしれない


 しかし輜重隊が襲われた事で兵糧も大幅に減少し、本陣への急襲で現場の指揮官たちが襲われた事で指揮系統に支障をきたしている為、現場の兵士達の士気は著しく落ちていた


 そんな中、帝国軍上層部は新たな攻略法を考える為の軍議を開くでもなく、総大将のヨシュア・ダーマ侯爵が癇癪を起したように一方的に(わめ)き散らしていた



「なんでこの程度の損害で撤退しなければならないのだ!兵の数はまだ十分ある。しかも敵は寡兵の上、指揮官は五歳の子供だと言う話ではないか!」


「し、しかし侯爵様。我が軍は第一、第二輜重隊が襲われ兵糧も少なく、しかも敵城門へも至る事が出来ておりません。ここは一度兵を引き攻城兵器を持って再び攻め入るのが得策でございましょう」


「ええい、黙れ黙れ!下賤の身分の癖に儂に意見などするな!陛下から虎の子の重装騎兵を預かりながら成果も残さず戻る事が出来る筈有るまい」



 自分より上官の指揮官が戦死したため意見を聞きたいと呼び出された現場指揮官である隊長サームは、なら呼ぶなよ・・・と、思ったが表情に出すようなヘマはしない



「食料が足りないのであれば獣を狩れ!例え魔獣であってもこれだけ兵士がいるのであれば問題ないだろう。それでも足りなければ馬を食え!」



 サームにとっては気が進まない事では有るが戦場では良くある話なのでこれだけならヨシュア・ダーマ侯爵の指示は間違ってはいないだろう



「我々は帝国兵として誇りある戦いをしなければならん。それだけは肝に銘じておけよ!」



 だが帝国兵の誇りこれを持ち出されると話は変わってくる・・・貴族である侯爵が言う誇りとは勿論騎兵での戦いの事だ。しかし平原ならともかく、このような場所で獣や魔獣を狩ろうとすれば当然森の中に踏み込むしかない


 そんな場所でどうやって馬に乗って戦えと言うのか、しかもセイレケ砦への攻撃も当然騎兵で行わなければならないのだから食料の不足を馬肉で補ってしまえば騎兵の数はどうしても減ってしまう


重装騎兵でさえ城門まで辿り着けなかったと言うのに、そんな状態でどうやって砦を落とせと言うのか・・・


 平民出身の現場上がりの指揮官が解決するには難しすぎる問題にサームは頭を抱えるのであった・・・



 ☆△☆△



 一方、緒戦の勝利に盛り上がっている砦側ではアルベルトを中心にバイマト、カルルク将軍、カイヤの三人。それに相変わらずアルベルトにくっ付いているヴィクトリアとフヨフヨ浮いているマーリンが集まって作戦の反省点と次戦での対応策を話していた



「反省点と言ってもアルベルト一人で終わらせたようなものね」


「そんな事無いよ。バイマトだって頑張ってくれたし、何よりヴィクトリアのお蔭だよ」


「ん・・・それは違う。主様の実力」




 相変わらず何が良いのかアルベルトにべったりのヴィクトリア。アルベルトの方も引き剥がそうとしていないのだから嫌という訳ではないのだろう。


 そんな彼女が言うにはアルベルトは運命の人らしい。一族に伝わる予言で決められていたと語ったのだがアルベルトや他の三人はその事自体はあまり信じていない


いきなり現れた少女(ヴァンパイア)に「貴女は運命の相手です。一族の予言に記されてましたから本当です!」と、言われて「はい、そうですか。じゃあよろしくね」ってなる訳が無いのだ


 しかしヴィクトリアの行った儀式。これが今回の作戦の成否、つまりアルベルトが魔法をポンポン気軽に放てた理由なのは確かだ


 マーリンの知識では真祖に対する忠誠の儀式だが、ヴィクトリアに言わせると伴侶に対する愛の誓いという事らしい



「ん・・・魂の結びつきが強くなる。だから私は主様のもの」



 まるで説明になっていないヴィクトリアの説明だが、マーリンが【鑑定】で観たアルベルトのステータスに効果の程は如実に表れていた




 LV    25

 HP  1800

 MP  3200

 STR  780

 VIT  620

 AGI  900

 DEX  980

 INT  810

 MAG  980

 CAM   90

 LUC   75


 スキル 身体強化

     魔法強化(全属性)

     無詠唱

     上級剣術

     格闘術

     隠密術

     気配察知

     精霊魔法


 加護  慈愛神の加護

     武術神の加護

     魔法神の加護

     暗黒神の加護

     精霊の加護


 称号  賢者の守護

     神に愛されし者


 契約 ヴィクトリア(始祖の一族)



「ハァ~!?何だこの化け物みたいなステータスは!」


「化け物って!酷いよバイマト」


「アル・・・短い付き合いだったわね。私が教える事はもう無いわ・・・」


「いや!カイヤちょっと待ってよ。まだまだ一緒にいてよ!」


「殿下!このまま帝国を滅ぼしましょう。殿下御一人で十分な戦力ですぞ」


「無理だから!そんな事出来ないからね、カルルクもみんなもちょっと落ち着こうよ!」



 バイマトは戦士、カイヤは魔法使いとして最高ランクのA級冒険者として高い数値を誇っている。勿論カルルクも老いたとは言え十分に高いステータスだ


 アルベルトのステータスは最高ランクの冒険者であるバイマトの身体能力と、そして魔法の能力ではカイヤと比べても遜色は無い。しかも二人は得意分野でこそ高い数値であるが、苦手分野では彼に大きく差を開けられているのだ


 バイマトの言う化け物は言い過ぎであるが、五歳という年齢しかもLV25でこの数値という事は有り得ない事であった



『ほっほっほ。将来が楽しみじゃな~』


「ん・・・流石は私の旦那様♡」



 人外コンビが楽しそうに笑っているが、他の三人にしてみると改めてアルベルトの規格外ぶりに驚きを通り過ぎ・・・いや最早飛び越えてしまい、ただただ呆れるしかなかった



「で、次はどうなさるんで総大将様?」


「やめてよバイマト」


「でも殿下には作戦がお有りなのでしょう?」


「僕って言うかマーリンがだけどね」



 既にマーリンの助言に従ったアルベルトの指示で下準備は進められている。帝国軍の出方次第の部分は残るが着々と準備が整っている処だ



「帝国軍が取る手段、って、いうか取れる手段は三つだと思うんだ」



 アルベルトはマーリンと話し合った結果をみんなに伝えていく。


 まず、第一は撤退して再起を図る事だろう。しかしプライドの高い帝国貴族たちがこの手段を選ぶ可能性は少ない


 となれば、当然再び侵攻してくる事になるのだが同じ戦法で攻めてくるか違う方法を選択するかのどちらかという事になる


『騎兵で攻めて来るなら遠慮はいらん。今度は本気で潰してやれば良い、しかし違う方法ならば出来るだけ指揮官を捕えたい』



 アルベルトはマーリンが言った言葉を三人に説明していく。



「それって帝国軍が馬鹿ならそのままって事?」


「そうだね。まだ帝国には戦力が残っているけど指揮官が馬鹿ばっかりなら怖くは無いからね」


「狙いは現場の指揮官って訳か・・・」



 実際、帝国の総兵力から考えれば今回出征してきた兵力はその一部にしか過ぎない。今回撃退できたとしても再侵攻は間違いなく行われる


 小国群をも巻き込んだ戦いを挑んできた以上は簡単に引き下がるとは思えない。ならば出来るだけ弱体化を狙いたいとマーリンは考えているのだ


 そして帝国軍の強さを支えているのは上層部にいるプライドだけが立派な貴族達では無い。上層部の無茶難題を(こな)している現場の優秀な指揮官達がその強さを支えているのだ


 彼等がいなくなれば兵数だけの帝国軍などセイレケ砦と優秀な守備隊を撃破する事など不可能だろう。更に彼等をこちらに取り込む事が出来れば戦力の増強すら出来るかも知れない



「って事はなるべく殺さない様に戦わなきゃいけねぇのか・・・」


「そうだね。その方が帝国の負担にもなるしね」



 例え負け戦であろうとも戦った兵達に対する補償は行わなければならない。そうしなければ兵達は自分の身を惜しみ存分に戦ってはくれなくなる。その為、戦死者の家族には十分な慰問金が支払われる


 だが、戦死者は慰問金で済むが怪我人や後遺症の残った者達は生涯面倒を見なければならないので補償は莫大になる。更に捕虜の返還交渉となれば莫大な金額が動くのが判り切っている


 なので帝国の負担を考えればなるべく生け捕りにした方が良いのは確かだ



「でも、それで味方の損害が大きくなったら本末転倒だからさ、あくまでも出来ればで良いと思うよ」


「それが妥当な所ね」



 あくまで出来るだけ、という方針を確認し合う。実際帝国軍の残り兵力は怪我人を除いたとしても7000を割ることは無いだろう


 それに対してセイレケ峠に駐留する見方は半分の3500。生け捕りにする事を考えれば砦に籠って戦う訳にはいかないので打って出なければならない。しかも砦にも兵を残す事を考えれば更に少数になるだろう


 本来ならばかなり困難な作戦ではあるのだが、此処にいるメンバーは誰一人として不可能だと考えてはいない。



「それじゃあバイマトお願いね。後は・・・」


「任せとけ。冒険者と傭兵から活きの良いのを見繕っとくよ」


「勿論儂もお供しますぞ」


「はぁ~脳筋ばっかりね。私は砦からにしておくわ」


「ん・・・主様の隣が私の居場所」


『ほっほっほ。まぁ十分すぎる戦力じゃな』



 不可能どころか楽しそうに参加する意思を表明するメンバーにアルベルトが年齢に似合わないニヤっとした笑いを浮かべる


 結局作戦に驚いた守備隊長のサニラさんと選りすぐりの兵100名も加わる事になるのだが・・・



「はぁ!?総大将と将軍が前線に?少しは常識ってもんを考えろ!」



 その作戦を聞いた時の敬語も立場も忘れたサニラの叫びは至極当然であった。


 しかも受け入れられる事の無い雰囲気を悟った守備隊長のサニラは泣く泣く死地へと向かう決心をしたのにアルベルト達には迷惑そうな顔をされてしまう始末だ


 いつの世も苦労人というものはいるものだな、と他人事の様に見つめるマーリンであった・・・

今日から週末まで出張となってしまいましたので次の投稿は日曜日になります


飛行機+レンタカーでなくフェリー+自家用車での移動・・・経費削減の煽りを受ける哀れなサラリーマンでございます(T_T)


読んで頂いて有難う御座います

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