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守護霊様は賢者様  作者: 桐谷鎭伍
結婚編
153/179

俺達の冒険はこれからだ!?

「メネドール・サウスバーグの息子アルベルトよ。 汝、生涯を通じ二人の妻を大切にし護り通す事を誓うか?」



 急造の教会という事で正式にこの教会に詰める司祭では無いが、それでも態々この結婚式の為に王都から派遣されてきた司祭が告げる言葉は威厳に満ち溢れ、神の代行者として堂々とアルベルトに問い質す


 祭壇に向かって並ぶアルベルト達の後ろには多くの招待客の他にセイレケの街の有力者たちも立ち並び、三人の結婚式は正しく盛大な物であった


 祭壇を背にしてアルベルト達の正面に立つ司祭はまともにその人数を目にする事になるのだが緊張をした様子も無く、真っ直ぐにアルベルトを見つめていた



「メネドール・サウスバーグの息子アルベルトは神々の前において、二人の妻を生涯大切にし護り通す事を誓います」



 その目を見返すようにしながら、ハッキリと言葉を返すアルベルト。 彼を挟む様にして静かに立つ二人の婚約者、いや、この瞬間に妻となった二人からは喜色のオーラが立ち上っているのを彼はシッカリと感じ取っていた


 美しいマーメイドラインを描くドレスのヴィクトリアからは静かな、しかし誇らしげな感情が流れ込む。 もう一方の細い可憐な姿のエリザベスからは真っ直ぐな感情が激しく流れ込む。 それを感じるアルベルトは自身の責任を実感すると共に傍に居るのが当たり前となった二人が正式に自分の物になったという実感が湧き出し、喜びと共に力が湧いてくるのを感じる


 ついでに後方から感じる「グヌヌ!」という若干黒いオーラが湧いているのも感じて、それが誰から出ているか判るだけに苦笑いを隠せなかった



「宣誓は為された。 この結婚に異議のあるものはこの場で名乗り出よ!!」



 まさか、この期に及んで口出しする二人では無いだろうが、その湧き出る黒いオーラに周囲がヒヤヒヤしているのに気が付いているのか、いないのか。 タップリと間を置く司祭の眼が周囲を見渡すが幸い二人の花嫁の父親は苦虫を噛み潰した表情をするだけで流石に立ち上がる事は無かった



「神々もこの結婚をお認めになられた。 今日この日よりアルベルト・サウスバーグは二人の妻を得て新たな人生を歩むだろう」



 司祭の言葉と共にアルベルト達が振り向き、それと同時に列席者たちも立ち上がり祝福の歓声を上げる。 二人の父親も渋々・・・というか周りの物に小突かれてやっとではあったが立ち上がり拍手を送っていた



「はぁ・・・これで正式にアルの妻になれたのね」


「ん・・・結構嬉しい」



 王国の結婚式では新婦は宣誓に参加しないし、新郎の物になると言う扱いで式は進む。 これは女性蔑視というよりも夫になる新郎にのみ夫婦間の責任を押し付ける為であり、妻に対する自覚を促す目的が有ると言われている


 形式的な物ではあるが、婚約期間中で気持ちを高め合った花嫁は案外すんなりとその扱いを受け入れる。 ましてやエリザベスとヴィクトリアは幼少時より共にあった相手との結婚であり、その扱いよりもやっと想い人との結婚という事で感慨も一入であった


 元々結婚式に強い憧れを持っていたエリザベスは目に涙を浮かべながら、そして結婚という物にあまり感情を向けて来なかったヴィクトリアですら満面の笑顔で列席者の歓声に応えるように手を振りながら小声で話す



「そうだね、緊張するだけかと思ってたけど、僕も嬉しいよ」


『ほっほっほ。結婚式というのはそういう物じゃよ』


「これからも宜しくね」


「ん・・・末永く」


「うん、大変な事もあるだろうけど三人で乗り越えていこうよ」


「そうね、神国もぶっ潰して平和に為ったら迷宮を三人で探索しましょうね」


「ん・・・子供も」


「ああ、そうね。アルの子供だからきっと可愛いわよね」


「いやいや、二人の子供だからだよ」


「ん・・・でもきっと」


「そうね。でもアルと一緒なら・・・」


「うん、僕達の冒険はこれからだよ」



 笑顔を見せながら小声で話す三人は、これから先に待つであろう冒険に心躍らせながら結婚の喜びをかみしめる


 三人ならばどんな困難も乗り越えれるだろうし頼もしい仲間も揃っている。 例え強大な敵が現れてもそれはアルベルトという英雄を語る英雄譚の一つのエピソードにしかならないだろう。 そしてそれは将来の子供達が胸を躍らせて親に呼んでもらうお話になっていくのだろう


 そんな未来を夢想して物語は・・・



「これ!アルベルトよ何を最終回みたいな纏めに入っておるのじゃ!?」


「え!?ああっ!マルドゥックさま!!」


「なになに!?此処は何処なの?」


「ん・・・神界?」


「まったく、結婚した位で話を纏められては敵わんぞ?」


「そうです。アルベルトちゃんにはこれからやって貰わないと駄目な事が沢山あるのですからね?」


『フン、どうせお主らの尻拭いであろうが!』


「ユースティティア様も、お久しぶりです」



 二人に会った事があるアルベルトは冷静に返すがエリザベスとヴィクトリアは初めて会う神々に驚いた様子だった


 マーリンは相変わらず二人を、というより神々に対して良く思ってい無い様だったが、アルベルトは後から現れた女神にきちんと挨拶を返す



「ねぇねぇ、この二人ってアルの作った神像にそっくりなんだけど・・・」


「うん、二人には会った事があったからね。他の神さま達もマーリンのデザインだから多分そっくりだと思うよ」


「って事は・・・神さま?」


「ん・・・やっぱり」


「なかなか肝の据わった花嫁じゃな」



 結婚式の最中にいきなり神界へと連れ込まれて目の前に神々がいると言うのにエリザベスもヴィクトリアも普段と変わらない


 そこにはアルベルトに対する信頼もあっての事であろうが、創造神を感心させるのに十分な態度であった



「それにしてもアルベルトよ。もう少し教会に寄ってくれんと話も出来んでは無いか」


「そう言えば王都でお会いして以来ですね。」


「そうよ、まぁいざとなれば現世に降臨するつもりだったけどね」


『法と秩序の女神が何を言っておるのじゃ!!』



 セイレケの街を見ても教会の建設を後回しにするくらいだ。 正直アルベルトは熱心に神様に祈りを捧げるタイプでは無い。 マーリン自身が神々に良い感情を抱いていないのだから仕方が無いかもしれないが、抑々メネドールも熱心な方では無いのでアルベルトも教会に赴く必要性を感じていなかった



「まぁ降臨は流石にやり過ぎじゃが、一応お主は我らの愛おし子じゃし加護も与えておるのじゃからの」


「はぁ、すいません」


「でもでも、あの神像は評判良いわね。特に女神達からは絶賛よ」



 今迄の神像は長い歴史の中で模写される度に実際の神々とはかけ離れた姿になっており、正直神々にとっては忸怩たる思いも有ったらしい。 とはいえ、その為に降臨して姿を見せると言うのも流石にやり過ぎるという事で控えていた様だった



『お前たち神々は気軽に降臨しすぎじゃ。儂の時も一方的に・・・』


「まぁマーリン君には悪い事したよ。今はきちんとルールを作ってるからさ勘弁してよ」


『むっ!貴様まで顔を出すか!!」


「当たり前じゃないか。僕だってアルベルト君に加護を与えてるんだしね」


「あの~失礼ですけど・・・」


「ああ、アルベルト君にしてみれば初対面だね。 僕はマーメルス、君に武術神の加護を与えてるよ」


「え!?マーメルス様って軍神じゃあ?」


「うん、まぁ戦う事全般って事で」


「ん・・・適当」



 何処となく軽薄そうな感じの漂う優男、それがマーメルスの第一印象であり、その姿は世間で一般に軍神と呼ばれる神には似つかわしくない佇まいであった


 アルベルトに武術神として加護を与えていると言いきる軍神であったが、その姿も含めてヴィクトリアの言う通り適当過ぎる感じが漂う。 マーリンの神嫌いの切っ掛けもこの軍神が絡んでいるようでありアルベルトにしてみれば正直あまり有り難い加護とは言えなさそうであった



「心配しなくても加護の方はバッチリだからね」


「なんか話せば話すほど胡散臭ささが増すわね」


「酷いな~、まぁ魔法神とは相性が悪いから仕方が無いか」


「マーメルスよ、その辺りにしておけ」



 創造神の言葉に両手を広げて肩を竦める軍神は、それでもその言葉に従う様に一歩後ろに下がる



「アルベルトよ、お主に使命を果たして貰う時が迫っておる」


「って、案外いきなりね。折角の結婚式の最中だってのに」


「そこはすまんとしか言えないがの。これを逃すといつ教会に来てくれるか判らんからの」


「ん・・・了解」



 憧れの結婚式の最中に呼び出された事に不満げなエリザベスであったが、一応は式の一番盛り上がる処は済んでいるのでその辺りは神々も配慮してくれているのだろう



「アポフィス・・・奴の復活を食い止める。これをお主に託したい」


「アポフィスってザービス教の?でもアレって架空の神さまじゃあ?」


『うむ、先の終末教との戦いでもアポフィスは出てこんかったぞ?』


「その辺りの事も説明しよう。ユースティティア」


「はいはい、まったく面倒事はいっつも私なんだから」


「ブツブツ言っとらんで説明せい」



 女神が語るアポフィスの正体・・・


 それはウェディングドレスと白のタキシード姿で聞くには聊か不適な物語であった・・・



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