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守護霊様は賢者様  作者: 桐谷鎭伍
結婚編
147/179

ヴァンパイアの里

「ん・・・久しぶり」


「んー空気が美味しい」



 ヴィクトリアに案内されたアルベルトが辿り着いたのは深い森であった。 カリュアーの力で辿り着いたそこは彼女と同等の精霊が支配している場所であり、間違っても人が入り込める場所では無かった



「ん・・・こっち」


「うん・・・って、これは結界?」


『ほっほっほ、これは見事に隔離された空間じゃのう。 中の様子がまるで判らん」


「ん・・・ヴァンパイアの叡智」



 まるでそこに通い慣れた道でもあるかの様に迷わず進むヴィクトリアの案内で森の中を進むと、やがて現れたのは彼等でなければ気が付かないであろう結界。 伝説の賢者であるマーリンですら中を見通せないそれはヴィクトリアが度々口にするヴァンパイアの叡智の結晶であった


 この結界のある森でさえ入る者は、いや入れる者と言った方が正しいだろうか。 大精霊の力によって捻じ曲げられた森は通常の人間では近付く事さえ忌避させる場所だ。 更に見つける事さえ困難な結界に護られた奥にヴィクトリアの故郷であるヴァンパイアの里が有るのだ



「ん・・・ちょっと待ってて」


「うん、判ったよ」



 その結界の前で何やらゴニョゴニョと呟きながら指先に魔力を集めて空中に何やら文様を書き込むヴィクトリア。 それが結界の入口を開けるのに必要な事だろうと予測したアルベルトは大人しくその様子を見つめる



「ふわ~凄い!」


『ほっほっほ、正に桃源郷じゃのう』



 そしてフワッという浮遊感と共に眩しい光が辺りを包み、やがてそれが晴れると目の前に広がる光景は花々が咲き乱れ、ヒラヒラと蝶々が舞い踊る。 鳥たちが囀り、流れる小川は澄んだ水を湛えていた


 ポカポカと春の日差しが射すそこは、マーリンの言う通り桃源郷と言ってもおかしくなかった



「ん・・・こっち」



 長閑だが何処か安心させる風景にアルベルトとマーリンが驚いているのが誇らしかったのか、ちょっとドヤ顔のヴィクトリアが先頭になって進んで行く


 とはいえ、目の前にあるのは一本道。 きっとこの先にヴァンパイア達が暮す集落が有るのだろう



『此処に入った初めての人族であろうな』


「そうだね~。他に入った人がいたらきっと誰かに話したくなっちゃうもんね」



 始祖の一族の事は伝説の種族として、いやそれよりも不確かなお伽話程度とは言え民間にも伝わっている。 何処かに彼等が住む里が有るのだろうとは思われていたがその風景や様子などに関しては一切情報が無かった



『アル、気を付けろ!!』


「判ってる!」



 案内をしつつ先頭を歩くヴィクトリアと風景に見惚れていたアルベルトの距離が少し開いた瞬間、危険な空気を纏った何かが突然襲い掛かる


 咄嗟に抜いたテンゲン作の黒い剣《黒帝》を抜き放ったアルベルトが後方からの気配に向かって一閃、だがそれは虚しく空を斬っただけで終わる



「下!?」


『飛ぶんじゃ!』



 マーリンの指示が出る前に咄嗟に地を蹴り身体を浮かして躱すアルベルト。 だが、確かに襲い掛かって来た筈の攻撃は襲ってこない



「そこだ!!」


 空中という踏ん張りの利かない場所で器用に身を捩り何も無い空間を横に斬り裂くアルベルト。 何も無かった筈のそこに黒帝が通り過ぎると視界に黒い霧が広がる



「お見事!流石は姫の選んブギャラ!!」


「ん・・・お仕置き!」



 広がった黒い霧が人型を取りかけ、アルベルトの攻撃を褒めようとした処で戻って来たヴィクトリアの一撃が人型の顎にクリーンヒットして、吹き飛びながらその正体を現す



「姫様、お久しゅうございますな」


「ん・・・ダーレ、ただいま」


「婿殿もようこそおいで下さいました。 いやはや中々の剣筋ですな」


「はぁ、ありがとうございます?」


「はっはっは、失礼を。 私はバイアリー、あそこでノビているのがゴドルフィンと申します」


『真祖の三人が揃い踏みとは、えらく歓迎されたものじゃな』


「真祖って・・・あの真祖?」


「そうですな、そう呼ばれる事も御座いますが、ただ単に最初にお館様に力を与えて頂いたというだけでございますよ」



 始祖の一族によって力を与えられヴァンパイア達の始まりでもある真祖達。 ダーレ、バイアリー、ゴドルフィンの名前はマーリンの知識にもある力ある三人であった



「「「「姫様、お帰りなさいませ」」」」


「ん・・・ただいま」


『ほう、これは中々の者達じゃな』



 真祖の三人がアルベルト達に挨拶の後、道を譲ればそこには道沿いにズラッと並んだヴァンパイア達が頭を下げてヴィクトリアに声を掛ける


 確かに強大な力を誇る三人がその気配を隠したとはいえ、マーリンの感知すらすり抜けてこうして並んでみせたのだ。 その実力は言うまでも無く非常に高い物であった



「姫様・・・ご無事で何よりでございます」


「ん・・・ありがと。 元気だった?」


「勿論でございます。 この地は始祖さまのお力に護られておりますから」


「ん・・・」


「どうも、初めまして。 アルベルト・サウスバーグです」


「はい、よろしくお願いします。 姫様のお世話係だったナルと申します」



 進み出てきた女性のヴァンパイアが目元をウルウルさせながらヴィクトリアを愛おしげに見つめながら挨拶を交わす。 その表情はお世話係というだけでは無かったのだろう、本当に嬉しそうな物だった


 ヴィクトリアも彼女の手を取ってアルベルトに挨拶をさせる位なのだから、彼女にとっても大切な存在なのだろう



「先程は三馬鹿が失礼しました。 お館様がお待ちでございます」


「さ、三馬鹿・・・」


「だまらっしゃい!!まったく、姫様のお選びになった方に怪我でもさせたらどうするつもりだったのですか!!」


「んな事言ってもよぉ、弱っちい奴だったらフべラ!」


「だからと言っていきなり力試ししてどうします!大体ですね、古の契約に応じて下さった方が弱い筈が無いでしょう!!」



 ヴィクトリアの一撃から復活したばかりのゴドルフィンがナルの一撃で再び宙を舞う。 始祖の一族であるヴィクトリアはともかく、真祖で有る筈の彼が普通のヴァンパイアの一撃で宙を舞うと言うのは少々納得のおかしな話だ



「・・・ヴァンパイアって女性の方が強いの?」


「あらこれは、はしたない所を・・・おほほほほ」


「ん・・・ナルは特別」


「そうなんだ、良かった」


「おほほほ、さぁさぁ、馬鹿は放っておいて先ずは長旅のお疲れを癒してください」



 どことなく母であるソフィアに通じる恐ろしさを感じながら、心の中で怒らせてはいけない人リストに加えるアルベルト。 最近では自身の女難の相を本気で悩むアルベルトなりに身に付いたスキルの結果であろう



「ん・・・父さまは?」


「・・・姫様の予想通りでございます。くれぐれもお気をつけて下さいまし」


「なんか怖いんだけど・・・」



 ナルの不吉な言葉に背中に冷たい物が流れるアルベルトであった・・・

次の投稿は31日になります

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