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守護霊様は賢者様  作者: 桐谷鎭伍
第四章 動乱編
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閑話 騎士団長センゴク~若き日の物語~④

「騎士団への釈明とその後始末。それにソフィアの箔付けと何だかんだで家に戻るのが三年遅れたわ!」


「すまん・・・」


「ふふふ、そんな事言って・・・結局許しちゃうんですから、初めから優しくしてあげればいいのに」


「まぁ、その間にバイマトを鍛えたり、他にも大切な知己を得られたのも確かだがな」



 公国へ観光旅行(・・・・)の出発の前夜メネドールに呼び出された俺は、彼の私室で改めて事情を聞かれていた


 あの時、古城に巣食う魔物のボスを倒した俺達は本来ならばギルドに報告を入れて、残った少数の魔物を騎士達が殲滅する予定であった。 実情は違っても手柄を騎士団に譲る事の見返りに国から褒賞を受ける予定だったのが、俺が単騎古城を抜ける途中で邪魔になる魔物を殲滅してしまった事で出来なくなってしまった


 流石に騎士団も戦ってもいない功を受け取る訳にはいかない。 少ない戦果を誇張するのと存在しない戦果を捏造するのでは話しはまるで違う。 騎士団のプライドに掛けてそこは曲げられない話だろう


 結局、冒険者でも殲滅できる程度の魔物達を騎士団が放っておいた事で開拓民に被害が出たと言う事なってしまい国の評判はガタ落ち。 お蔭でメネドール達は褒賞どころか恨みまで買ってしまったらしい


 とはいえ、その程度の話は働きで返せばどうにかなる話であったらしいが、問題はソフィアの事であった。 放蕩息子が他国で褒賞されたとなればメネドールの実家にも名誉な事だ。 身分の差をそれを餌に強引に結婚を認めさせるつもりが・・・


 という事で、騎士団の仕事を格安で受けながらソフィアの身元を誤魔化す、要は養女にしてくれる貴族を探したとの事だった


 その過程で出会った人脈は今でも役に立っているようであったが、それでも二人の結婚が遅れたのはセンゴクの責任であるのは間違いないだろう



「でも、二人きりの生活も悪くは無かったんですよ?」


「まぁ、そう言う意味ではソフィアには苦労を掛けたが・・・」


「すまん。儂のせいだ」



 ギルドの受付をしていた位なのだから元々ソフィアの家柄が悪かった訳では無い。 彼女にしてみれば貴族としての礼儀作法などを学ぶのが苦だったという事では無いだろう。 しかし、それでもメネドールとの気楽な生活も楽しかったとソフィアは笑う


 センゴクを気遣ったソフィアの言葉だが、メネドールにしてみればどちらにせよ苦労を掛けたという思いが浮かび、それに対して申し訳なさで再び俺は頭を下げる



「それで、今なら事情も話せるのだろう?」


「儂の父は叩き上げで出世した男でな・・・」



 お互いが冒険者であった時には話さなかった身の上を説明していく。 取り潰された実家の事、そこから冒険者になるまでの話を滔々と語る。 もう既に消化された話であり、それを人に語るのに忌避感は無かった



「あの時の公国は他国に攻め込まれておってな、義父はその初戦で深手を負っていたのだよ」


「ふむ、まぁ確かにきな臭い時代じゃったな」



 今でこそ同盟を組んで互いに緩やかな関係を築いている小国群だが当時は群雄割拠の時代であり、帝国の圧力を受けて結束するのはまだ先の話であった


 公国はその当時から今と同じ勢力を誇っていたが、他国に手を広げての拡大政策を取ってはいなかった。 その為、弱腰と断じられ近隣の都市国家から攻め込まれた


 宣戦布告も無い奇襲に国境警備隊の隊長であった義父は深手を負いながらも勇敢に戦いはしたものの、多勢に無勢で結局は国境を護る事が出来なかった


 普通であれば敵の侵攻を少数で受け止め、その侵攻を遅らせた義父の活躍は褒められこそ貶される話ではないものだった。 だが、父の幼馴染であり共に活躍する事で同様に出世した義父。 そのせいで非常に危うい立場に追い込まれていたらしい



「元婚約者からの知らせで窮地を救いに、という事か?」


「若干ニュアンスは違うが概ねその通りだよ」



 当時の彼女、まぁ今の儂の嫁であるが彼女が望んだのは義父の身体を心配しての事であった。 決して彼女の家の危機を憂いてという訳では無く、深手の身体を押して戦場に戻ろうとする義父の身を案じての事であった


 儂の父と同じように敗戦で生き残った義父。 戦死していればそこまで非難されなかったのは同じであったが、義父の場合は殿を務め部下を逃がす為にその身を捨てて戦ったのだ


 義父はそこで深手を負うも俺の父とは違い部下に慕われていた義父は、彼等によって救われた。 真っ先に逃げ出し責任を他人に擦り付けた父とは過程がまるで違ったのだ


 それでも、上官は俺の父のせいで義父を色眼鏡で評価してしまう。 義父は家族を護る為に重傷を押して戦場へと戻ろうと・・・そう戦場で死ぬ為に戻ろうとしていたのだ



「彼女は家の事を気にしていた訳では無い。 ただ義父の事を心配しておったのだよ」


「センゴクの父の評判が関わっているとなれば、お前も尚更に行かねばならなかったか・・・」



 再会した時の、私の家も取り潰しになれば晴れて再び一緒になれます、と笑う彼女の一言に随分と救われたものだった。 


 その言葉を胸に彼女の家の郎党として義父の代わりに家名は名乗らず只のセンゴクとして戦った。 断絶された家名を名乗れば彼女の家に迷惑を掛けるし抑々の問題は父の為した事なのだからだ


 とはいえ、兵士達は俺の顔を見れば誰の息子かは直ぐにばれる。 だが、義父の身を案じている彼等は口を噤み、何より一心不乱に戦う俺の姿に剣の有った視線はやがて和らいでいった


 そのお蔭か幸運にも大将首を上げると言う大功を為す事ができ功罪相殺という事で義父も許されたのであった



「ではその後に婚約者様とご結婚なされたのですね」


「ああ、大公様も儂の出自には目を瞑って下さった」


「それで今も只のセンゴクという訳か?フン、下らん拘りだな」


偏屈(・・)伯のお前が言うか?それにな、今では女伯爵の地位にある彼女の配偶者だぞ、悪くはあるまいて」



 断絶された俺は当然父の家名を名乗る事は無い。 しかし婿入りとは言え義父の跡を継ぐ事も可能であったがそれは頑なに固辞させて貰った。


 戦いの最中は義父のお蔭で受け入れられた俺ではあるが、父のせいで身内を失った者も大公家には多いのだ。 そんな父の血を引く俺が彼女の家を継げば面白くない者も多いだろうと考えたのだ


 メネドールはそれを下らない拘りと言うが、公国にも聞こえてくる偏屈(・・)伯の噂はそう言った拘りこそ大事にする男なのだ 正にどの口がそれを言うのだ?といった処であろう


 しかも内政の才能が有ったのだろう、我妻は公国内で着実に出世していき伯爵の地位まで手にしたのだ。 お蔭で騎士団長まで務める事が出来たとなれば、それこそ文句を言える話では無い



「でもセンゴク殿もいけないのですよ。 せめて知らせだけでも下されば良かったのに」


「すまん・・・しかし公国の騎士団長が王国の辺境伯に手紙は流石にな」


「まぁそう言う事なら仕方あるまい。だが・・・」


「ああ、アルベルト殿には手を出さんよ」



 公国と王国の関係、ましてや今回の観光の裏に隠された事を考えれば言われなくともアルベルト殿と戦うという選択肢はなくなるだろう


 そんな事は言わずとも判る筈なのに、態々言って来るメネドール。 噂に聞こえてくる偏屈(・・)伯の子煩悩ぶりもどうやら本当らしい


 だが、同じく家族を持つ身ならばその気持ちも判らなくはない。 誰しも自分の子供というのは可愛い物だ



「儂の孫の方が可愛いし賢いがな」



 言葉にすれば再び争いになりかねない言葉はそっと胸に忍ばせて旧友との関係の修復を祝う事にしたのだった・・・


もう一つ閑話を考えていたのですが、流石に長く成り過ぎたのでまたの機会に


次からは本編に戻る予定です


次章、結婚編・・・まぁ章の名前は変えるかもしれませんがほのぼのメインで進めさせて頂きます

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