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守護霊様は賢者様  作者: 桐谷鎭伍
第四章 動乱編
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宮殿にて

「なんか最後は随分あっけなかったね」


「ホント、まさか黒幕が居なくなってるとは思わなかったわ」


「まぁ、仲間同士で戦うよりは良かったんじゃねぇか?」



 魔物達を斃したアルベルト達の報告を受けたアレクサンドル王子は予定を早めて宮殿へと向かったのだが、途中に予想された妨害は一切無く、しかも防御を固めていると思われた宮殿では歓迎をもって迎えられたのだった


 バイマトの言う通り守備達との戦いを避けられたのは良かったが、入城したアレクサンドル王子が聞いたのはゲンカの失踪と内政の要が抜けた事による混乱であった



「それに何と言っても大公閣下が無事だったのは良かったですね」


「・・・あれで無事って言えるならな」


「まぁ、ちょっと人前には出れなくなっちゃったけど・・・」


「ん・・・上出来」



 本来ならば大公がいるのだから、幾らゲンカが抜けた穴が大きかろうと此処まで宮殿が混乱する事は無い筈であった。 しかし、ゲンカに操られていたと思われる大公は正常な状態では無く相変わらず自室に引き籠ったまま出てくる事は無かった


 だが、入城して直ぐに官僚たちの訴えを聞いたアレクサンドル王子が大公の私室に駆け込み怒りの鉄拳制裁を行ったおかげで大公は無事に意識を取り戻したのであった


 お蔭で真っ赤に腫れ上がったその顔では人前に出る事は大公の威厳に係るので、表向きゲンカによって体力を奪われていた事にしてアレクサンドル王子が前面に立って立て直しを図っていたのだった



『権力の移譲には丁度良かろうて』


「やっぱりそうなるのかな?」


「全ての原因をゲンカに押し付ける以上はその台頭を許した責任は付きまといますからね」


「ん・・・面倒」


「王族なんてそんな物よ。体裁だとか威厳だとか口煩い事ばっかりよ」



 守旧派と革新派の対立、乱れた治安の回復や統治システムの再興など公国の混乱は直ぐには収まらないだろう。 その過程で強権を発動する必要が有る以上は現大公の責任を追及される前に権力の移譲は果たしておく方がスムーズであろう


 王国の王女でもあるエリザベスは心底ウンザリした言葉が表すように、強大な権力はまたそれを脅かす勢力にも気を使わねばならないのだ



「お蔭で私の仕事は楽になりそうですけどね」


「そう言えばウマルには事後の処理が有ったんだよな」


「ええ、前回の戦いの後一応の和解は成立してますが今回はそれをより進めた形にするつもりです」


「復興にも手を貸すんでしょ?」


「そうですね、治安維持の手助けや人材交流など多岐に渡るでしょうね」



 公国が元の姿に戻るのに一番必要な人手の部分を王国が手助けする事で生まれる利権。 ウマルはそれを手土産に王国の貴族達を黙らせるつもりであった。



『奴の狙いが王国内部の対立をも見越している可能性がある以上は仕方が無いじゃろうな』


「ええ、ゲンカという男が何処まで先を見ていたか気になる処ですが打てる手は打っておくべきでしょう」



 王子の救出だけに止まらず大公の交代にまでアルベルトが関わったのだ、サウスバーグ領と公国の繋がりの強さ、即ちメネドールの権力の強化に文句を言って来るのは目に見えている


 国王にもメネドールにも対外的な領土的野心は存在していないのだが、国内の序列に拘る貴族達はそこ口実にメネドールの独断を訴えるだろう


 神国の狙いは自身が力を付ける為の時間と、将来での王国との対立を見越したものだろう。 それをさせない為の利権を貴族達にばら撒く事で貴族達の結束を邪魔しておく必要が有るのだ



「それならなんで手の内を明かすようなことしたんだろうね」


「そこだよな、ミンツァーの徒や洗脳された魔物達なんて必要無かったよな」


「思ったよりも無能で通用しなかったからサッサと逃げたって事は無いの?」


「いや、流石にそれは無いと思うよ」


「そうね、ゲンカって男・・・油断ならないわね」



 一連の流れを見るとゲンカには公国の混乱だけを狙っており、最初から公国を出る時期を狙っていた節がある。 しかし、それならば奥の手とも言えるミンツァーの徒や洗脳された魔物達の事は伏せておいた方が後々に役に立つはずであった


 エリザベスの言う様に思っていたよりもアッサリとそれらが打ち破られた事で予定を変えたとも考えられるが、公国の内部を此処まで巧妙に混乱させた男のイメージにはそぐわない


 ならば、それさえも何かしらの布石と考えねばならずアルベルト達にとっての脅威は残ったままであった



「考えたって仕方ねぇだろ?奴らが力を付けてる間に俺達も力を付けりゃ済む話だ」


「あら、アンタにしちゃあ良い事言うわね」


「ん・・・戦いたいだけ」


「ああ、そう言う事か」


「んだよ!人を戦闘狂みたいに言いやがって!!」



 バイマトもカルルクの後継者として将軍職として色々学んでいるのだから、まるで何も考えて無い様な言われ方は言い掛かりの様な物であった。 だが、カルルクぼやく様にどうしても前に出たがる性格は収まっていないし、今回の戦いでも先頭に立つ事との方が多かった以上はからかわれるのも無理のない話であった



「どちらにせよ、王国に帰ってからの話ですね」


「そうだね、ウマル頑張ってね」


「何を言ってるんです?アルも一緒に参加するんですよ」


「なんで?ウマルがやってくれるんじゃなかったの!?」


「これも将来の為です。交渉のやり方も学ばないと立派な辺境伯になれないですよ?」


「うみゅ~、今回は楽できると思ったのに~」


「じゃあ、私達は公国の観光でもしてようかしらね」


「賛成!伝統ある街だけあって見どころが沢山あるって話よ」


「ん・・・楽しみ」



 真の意味での観光を楽しむつもりの女性陣を残してウマルに襟元を掴まれドナドナされていくアルベルトであった・・・



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