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守護霊様は賢者様  作者: 桐谷鎭伍
第四章 動乱編
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逢魔が時~②

遅れてごめんなさい

「オイオイ、流石にコレは初めて見たぞ?」


「ちょっと想像と違いましたね」


「ん・・・暴走(スタンピート)?」


「いや、その割には落ち着いてるし迷宮の気配なんて無かったわよ」



 闇人(シャドウ)からの連絡を受けて駆け付けたアルベルト達が見たものは魔物達の群れ。 しかしそれは彼等が想像していた物とはまるで違う物だった


 通常、魔物の群れが現れたと聞いて想像するのは単一種族による物だ。 ゴブリンやオークなど集落を作って生活するタイプの魔物達はそれが増えすぎると新たな集落を造る為に移動したり、食料を求めて近場の村や町を襲う為に出没する事がある


 しかし、遠くで秩序をもって整列している魔物達の種族は多種多様で、どう見ても単一種族には見えない。 迷宮や魔境から魔物が溢れる暴走(スタンピート)ならば多様な魔物で構成されていてもおかしくは無いが、この辺りに迷宮や魔境を造りだすような魔力の濃い場所は発見されていなかった


 それに暴走(スタンピート)で有るならば、目の前の秩序だった動きは説明がつかない。 名前の通り正しく暴走した魔物達の動きに秩序など存在しないのだ



「上位種でも現れたのかしら?」


『ふむ、その可能性が無いとは言えんがの』


「うん、そこまで強い個体の気配は無いよね」



 確かにオークがゴブリンを従えていたりオーガを用心棒の様に集落で飼っているなど違う種族が同時に現れる事はある。 しかしそれはあくまでも共生関係が成り立っているからこそであり、それが理解できるだけの社会性の有る一部の魔物達だけに見られる事だ


 だが、展開している魔物達はそれが成り立たない、所謂敵対関係に有るとされている魔物達や獣に毛が生えた程度の知能しか持たない者も含まれており通常では考えられない状態であった。


 例外的に強力な個体が様々な種族を従える事は稀にある。 だが仮にこれだけの数の様々な種族を纏め上げるほどの上位種となればかなりの危険度になるだろう。 目の前の群れにそう言った個体がいるのならば、まだ離れているとは言ってもアルベルト達が感知できない筈は無い



「ギャァオオオ!!」


「フグォオオオ!」


「ホブホブ」


「来るみたいだよ」


「考えるのは後だ!アル、ヴィクトリア行くぞ」



 様々な叫び声を上げながら進軍を始めた魔物達を迎え撃つべく、バイマトがアルベルトとヴィクトリアを従えて群れへと走り出す。 エリザベスとカイヤは後方で援護の構え、ウマルは二人の護衛である



「ギャガギャ!?」


「ヘッ、構ってられるか」



 バイマトの大剣が先頭のゴブリンの首を斬り飛ばす。 大剣を木の枝でも振り回すように軽々と操るバイマトにしてみればゴブリンなど正しく雑魚であり鎧袖一触にその命を刈り取る


 しかし数を頼りに押し寄せるゴブリン達はその姿を恐れる事無くバイマトを包囲するべく回り込もうとするが、彼のやや後方で別れたアルベルトとヴィクトリアがその波を押し返す



「ん・・・!」


「ギョパ!?」



 ヴィクトリアの手甲が彼女の闘気を帯び闇色に光る。 その手が振るわれる度に吹き飛ばされていくゴブリン共。 身体のどこかしらが欠損した彼等は後方から来る仲間に踏みつぶされ二度と立つ事は無い


 小さな身体を活かしたスピードで間合いを調整しながらその波に飲み込まれる事なく動き続ける彼女の姿にゴブリン達は、しかし怯む事無く飽くなき突進を繰り返す



「マーリン、おかしいよ」


『ふむ、ゴブリン如きが儂等を相手取って逃げ出さんとはの』



 アルベルトの両手にはテンゲン作の長剣が握られ、その黒と白に彩られた双剣が煌めくたびに悲鳴すら上げられずに倒れ伏すゴブリン達の山が出来ていた


 ゴブリン自体の身体能力はそれほど高くない。 その繁殖力とそれによって生み出される数こそが脅威になる種族だ。 しかしそれが通用しない強者に対してはサッサと逃げ出す位の知能を持っており、アルベルト達の実力を知っても襲い掛かってくるのは有り得ない話だ



「へ、後ろにおっかない奴でも控えてんだろうぜ」


「ん・・・殲滅」


「うん、カイヤ!抜け出した奴等をお願いね」


「任せておきなさい」



 バイマトのフォローでは無く、魔物達を駆逐するべく押し出すように進むアルベルトとヴィクトリア。 三人が並ぶ事で殲滅の速度は上がるが、その分彼等の隙間から抜け出した魔物達が後衛のカイヤ達へと向かうだろう


 しかし、後衛と言ってもカイヤもA級冒険者である、強力な魔法だけが彼女の武器では無いのだ。 この程度の魔物達に後れを取る事は無い。 しかもウマルが護衛に付いているしエリザベスは近接戦闘を好む位なので問題ないだろう



「ブゥモォオォオ!」


「おっと、へっへっへ。楽しくなって来たぜ?」


「アレってハイオーク?」


『そうじゃの、上位種が混じり始めてきたようじゃの』



 ゴブリンの後方から現れたオーク達。 それに混じって一回り大きな上位種であるハイオークの姿も見える。 通常のオークが粗末な腰布に棍棒等の装備しかしていないのに対して金属製の鎧にバイマトの大剣よりも大きな曲刀を手にしていた


 更に彼等の太った身体の隙間を縫う様にリザードマンの槍も伸びてくる。 縄張りである湿地帯から殆ど出てこない彼等がオーク達と連携を取っている姿など考えられない事であった



「オラァ!!」


「シャァアア!!」



 だが、バイマトにとってはそれこそ雑魚がちょっと大きな雑魚になった程度の事であり、その大剣が振るわれる度に魔物達が倒れる事に変わりはない。 寧ろ敵が大きくなった事で数の圧力が減った分、戦い易くなったのか嬉々として大剣を振るう


 上下の振り下ろしや切り上げでは無く、左右に横薙ぎする動きを中心に多数を相手取りバッタバッタと斬り伏せる。 通常の大剣は寧ろ叩き潰す事で敵を斃すが、迷宮の奥で見つけた愛用の大剣はその切れ味も破格なようでアルベルトの長剣と変わらない切れ味を誇る。 更にテンゲンによって手を加えられたソレはオークの脂肪やリザードマンの鱗などで鈍る様な物ではなかった



 一方のアルベルトは先程の様に両手で双剣を操るのでなく主力である黒い長剣一本に絞っていた。 ステータス上ではバイマトと変わらないSTRを誇るアルベルトではあるが、体自体は成長の途上であり敵の身体が大きくなった事で片手では斬り伏せるのに少し足りない


 両手でシッカリと全身を使う事でしか敵を斃せなくなってきていた。 だが、それでアルベルトが苦戦している訳では無い。 長剣に纏わせた彼の闘気と火の魔力をミックスした魔闘剣とも言うべき技術は触れただけでも敵の身体を焼き、振り下ろせばその身体を両断するほどの切れ味であった



「プギャア!?」


「こっちだよ?」


「ホブホブ~!」



 敵を葬った隙を突いて襲い掛かるオークは、しかしアルベルトの姿を見失う。 続いて現れたホブゴブリンが仲間のオークをあざ笑うかのように叫びながら移動したアルベルトに襲い掛かるが・・・



「ブンッ!!」



「プギャ!」「ホブっ!?」



 空気が振動したような音を残してブレたアルベルトに付いて行く事が出来ず、二匹同時に悲鳴を残して崩れ去る。 バイマトを上回るAGIを活かした高速戦闘。 マーリンが掛けた補助魔法がその動きをさらに押し上げる



「ヴィク!交代だよ」


「ん・・・助かる」



 固い甲羅を持つビッグタートルに苦戦していたヴィクトリアのフォローする余裕すらアルベルトには有った。 無手で超近接戦闘を熟す彼女には寧ろ人型の魔物の方が戦い易い、周りを見て戦う余裕がまだアルベルトには有った



『こやつ等・・・アル気を付けろ。ここで確実に殲滅しておくのじゃ』


「マーリンさんよ、そこまでしなくても所詮は魔物だぜ。ある程度で斃しちまえば逃げ出すんじゃねぇのか?」


『魔物達を鑑定したのじゃ!!』


「鑑定?魔物達にも使えるの?」


「ん・・・個人情報」


『そんな事を言っている場合じゃない!こやつ等洗脳されておるぞ』


「洗脳?んなぁ事、出来んのかよ?」



 まだ余裕のあるアルベルト達は敵を葬る手を止める事は無い。 だが、マーリンの言葉は彼等を驚かすのに十分な衝撃を持っていたのであった・・・






GWという事で、色々私用も重なって少し投稿が不安定になるかも知れません


連休前が忙しくて書き溜めも消費してしまっているので予告なしの休載をするかも知れません


なるべく頑張るつもりですが、ご了承いただけると幸いです

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