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守護霊様は賢者様  作者: 桐谷鎭伍
第四章 動乱編
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ルプス攻防戦

すいません、投稿の日にちを間違ってました・・・

「結構立派な街じゃねぇか」


「そうね、国境沿いでもないのにこれだけの設備が整ってるのは珍しいわね」


「魔物対策という名目ですが軍隊相手でも十分に効果が有りそうですね」



 ルプスの城壁を前に元家庭教師の三人が感想を述べる。 べレス山脈側の村や町を統べる中心的な都市の役割を持ち、それらに住む住民達の避難先という事もあってその防衛設備は非常に立派な物だった


 正直、田舎の街という事もあってバイマト達はこれほどまでに立派な設備が整っているとは思っておらず、意外であったのは確かであった。 



「民たちの為ならばこれ位は準備して当たり前、という事なのでしょう」


「まぁそうなんだろうけどな」


「責める側としては厄介ね」


「姫さんかマーリンさんの魔法を使えりゃ楽なんだがなぁ」


「今回はそういう訳にも行きませんから、別の方法を考えないといけませんね」



 べレス山脈にはワイバーンの住処も有ると言われており、その危険に対処するために大型のバリスタや魔力式の大型射出機も備え付けられていた。 城壁も魔物対策としては過剰な程ではあったが、公国の理念である民を護る為ならばという事で出し惜しみは一切していなかった


 その上、ヴィクトリアの話では騎士団が約百名、それに兵士が五百名ほどが護りに付いているという事らしい。 


 通常ならば騎士一人で兵士を百名程を指揮するのだが寄せ集めの第一騎士団の騎士達には無理があるらしく率いる兵士達が少ないのは朗報であった


 しかし王子の元に集まった戦力と比べれば十分すぎる数であった。 王子側の戦力は騎士が五十名に兵士が百五十、しかも歴戦の勇士と言えば聞こえがいいが平均年齢が高めの部隊だ


 辺境でも遠くに派遣されている若い騎士達は集まり切っておらず現時点の戦力ではあったが、その到着を待っていては相手側に準備の時間を与えるだけであり、少なくともルプスの攻略は現状の戦力で行わなければならなかった


 しかも後々の事を考えれば攻城戦で役に立つ大規模魔法を使用できるエリザベスやマーリンの力を使う訳にはいかなかった。 


 一応アルベルト達は観光名目で公国に入っており、レベッカ姫はその案内をしているに過ぎない。 王子に手を貸しているのもあくまでも偶々(・・)なのである


 それが王子が兵を挙げた初戦で城壁を破るという大功を立てる訳にはいかないのだ。 あくまでもマーリンの言うチョイチョイの範囲に納めなければ王国内での反発に繋がりかねない



「まぁ、そうは言っても寄せ集めの騎士団に古い城門くらいならどうにでも出来るさ」


「カッコつけても、どうせいつもの力押しなんでしょ?」


「今回はウマルも居てくれるし簡単だろ?」


「期待してくれるのは嬉しいですが、私はあくまでも人の範囲内ですから余り期待されても困りますよ」


「なに、チョット突撃して城門をぶっ叩いてくれりゃあ十分だ」


「ハァ、まったく何がチョットですか・・・一応私は初陣なんですよ?」


「弓矢くらいなら守ってあげるから大丈夫よ」



 迷宮や魔物狩りなどは経験しているとはいえ大規模な戦闘は初めてのウマルに気軽に答えるバイマト。 一応は文官である彼が先頭を切らなければいけない理由も無いのだが、残念な事に今回の戦いではバイマトとカイヤは城門を破壊する事を請け負っている


 お前も一緒にだからなという訳の判らない強引な理屈で共に城門に向かう事になってしまったウマルは被害者と言えなくも無かった。 バイマトだけならともかくカイヤまでもがそこに疑問すら持っていない以上はもう逃れられないのだろうと諦める



「バイマト殿、準備の方はよろしいか?」


「おう、任せておけ。いっちょ派手にぶちかまそうぜ」



 第二騎士団の面々や兵士達の準備が完了した所でバイマトに声が掛けられる。 王子の元に集まった騎士や兵士達は戦慣れしているのか気負った様子も無く非常に落ち着いた物だった


 しかし、人員は何とかなったものの残念ながら騎馬の方までは数を揃える事が出来ていない。 その為突撃は人力で走って行かなければならない


 弓矢やバリスタの有効射程内を人の足で走り抜けなければならないのは被害が大きくなりそうではあるが、幸い簡単な魔法ならば扱える者が多く、更にはカイヤの精霊魔法で弓矢を逸らす事は可能であった。 カリュアーから貰った指輪のお蔭でパワーアップした彼女ならば全員を護り切る事が出来るだろう



「バイマト気を付けてね。ウマルの事も気にしてあげてよ?」


「おう、任せとけって。アルも王子のお守頼んだぞ?」


「ん・・・任せとけ?」


「ほら、さっさと行きなさいよ」


「おうおう、姫さん八つ当たりは止めてくれよ」



 今回はお留守番のアルベルト達は王子と共に後方に控える。 その分、王子の護衛に人員を裂く必要が無くなるので正に全軍突撃となる。 兵数で負けている以上は余裕が無いのでこれは仕方のない事だった



「みな無事で帰ってこい!全軍突撃!!」


「おっしゃ行くぞ、オラァ!」


「風の精霊よ、我らに加護を与えたまえ」



 王子の掛け声で全員が城門へと向かって駆けだす。 カイヤが呼び出した風の精霊(シルフ)達が頭上に舞い踊りバイマトを先頭に騎士も兵士も一斉に走り出す。 だがステータスの差だろう、元家庭教師を先頭にその差はドンドン開いて行く


 城門の上に立つ兵士達はそれを見て弓を放ち始めるが、大軍ならともかくたった三名に城壁上からそうそう当てれる物では無い。 しかもカイヤが操る風の精霊(シルフ)が矢を逸らすように不規則な風を舞い起こすものだから三人には掠りもしない



「弓矢じゃ話にならんバリスタで狙え!!」


「無理です!あんな小さな的じゃ当てれる訳ありません」


「チィ!魔法使い達は何やってやがる!!」



 騎士鎧を着込んでいる様子から指揮官なのだろう。 城壁の上で兵士達に向かって叫ぶ男は如何にも戦慣れしていないのだろう。 その指示は逆に兵士達に反論されてしまう始末であった


 抑々大型のバリスタは上空に向けて放つように出来ている。 それを無理やりに下向きに打った処で細かな狙いなど付けられる物では無い。 余程の大軍であれば当たりもするだろうが、たった三人のバイマト達を狙うには不適であった


 せめて後方から迫る第二騎士団に向けてであれば多少は効果はあるだろうが、焦る彼にはそこまで頭が回らないようで苛立ちを魔法使い達にぶつける


 だが、本来であればそんな準備はもっと早くにしておくべきであり抑々の指揮官の指示が悪いのだが、残念ながら寄せ集めの騎士もどきにそんな事が判る筈も無い


 指揮官をたっぷりと苛立たせた魔法使い達が漸く大型射出機に魔力を充填し終った時にはバイマト達は城門のすぐ傍まで迫っていた。 



「射出機準備完了しました!」


「よし、一斉射撃!蜂の巣にしてやれ!!」



 城壁上から放たれる魔力の塊。 魔法に比べて詠唱の必要のない魔力式の射出機から放たれるそれは、威力や範囲こそ魔法に劣るが連射性能はかなり優れている。 魔法使いの数を揃えれるのなら話は別だが、魔力の充填に時間が掛かると言う欠点を差し引いても非常に優秀な設備であった



「カイヤ!」


「任せて!魔法障壁(マジックバリアー)



 だが、その攻撃はカイヤが張り巡らせた魔法障壁(マジックバリアー)によって呆気なく霧散してしまう。 魔力式の射出機はあくまでも充填された魔力を用いて連射するだけの武装だ。 優秀な魔法使いが張った魔法障壁(マジックバリアー)を打ち破れる程の威力は無い


 本来は弓矢や投石などの物理攻撃を混ぜて物理障壁(シールド)魔法障壁(マジックバリアー)の両方に対する攻撃を混ぜる事で敵の消耗を狙わなければならないのに、城壁を使った防衛戦など経験した事も無い不慣れな指揮官にはそんな事も判っていなかった


 しかも一斉射撃などしてしまえば再び充填するのに時間が掛かる射出機は暫らく使えなくなるのだ。 たった三人の攻撃を防ぐ為に指揮官は攻撃手段の一つを失う選択をしてしまったのだ



「ウマル!カイヤ!ぶちかませ!!」


「おおおおお!」


「エアバースト!」



 疾走の勢いそのままに振りかぶった渾身のメイスの一撃を城門へと叩きつけるウマルと圧縮された風を叩きつけるカイヤ。 タイミングを合わせた同時攻撃であったが当然それだけで城門が壊れる筈も無い



「オラァ!」



 しかし、一瞬後方に撓んだ城門の隙間から覗いた閂。 その僅かな隙間に捻じ込まれたバイマトの一撃が太い閂を両断する


 そのままバイマトが放った前蹴りに留める物を失った城門が勢いよく開いてしまう。 その先にはこんなにもアッサリと城門を突破されると思っていなかった第一騎士団が慌てて城壁上から降りてくるのが眼に入る



「へっへっへ、邪魔するぜぇ~」


「バイマト・・・悪役みたいですよ?」


「ん!?そうか?まぁ敵さんに取っちゃあ悪夢の始まりだからな」



 ニタリと笑うバイマトが大剣を肩に乗せながらユックリと城門を潜るのだった・・・

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