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守護霊様は賢者様  作者: 桐谷鎭伍
第四章 動乱編
120/179

その者の名は・・・

「なぁ・・・」


「ええ、どっからどう見てもやる気がなさそうね」


「で、でも、ほらお蔭で楽できそうだよ?」



 カイヤの魔力の回復を待って王子が軟禁されている別荘までやってきたアルベルト達を迎えたのは厳戒態勢の騎士達では無く、いかにもやる気が無さそうな門番であった


 無精ひげにだらしなく着崩した?鎧に刻まれた紋章は確かに公国の騎士団の物であり、彼等が第一騎士団の面々だという事を示している。 だが、此処は王子の軟禁場所でありアルベルト達にしてみれば最大の作戦目標であったはずだ


 入口の村での戦闘の事もあり最大限に警戒していたカイヤやバイマトにしてみれば行き成り肩透かしを喰らわされたようなもので、そのせいでアルベルトも敵の為に訳の判らないフォローをする羽目になっていた



『ほっほっほ。ここまで盆暗とは思わんかったの』


「そうね。まさかあの山賊がマシな方だったなんて予想外も良いトコだわ」



 今も目の前で大きな欠伸をしながら伸びをしている騎士?は周囲を探るなどといった基本的な警戒すらしておらず、当然隠れているアルベルト達に気が付いている様子は無い。



「これって門のトコで暴れても気が付かないんじゃないのか?」


「いや、流石にそれは・・・」


「まぁ攻撃したら逃げてきそうな感じね」



 作戦では元家庭教師の三人が正面から突入して敵を引き付けている間にアルベルト達が裏から潜入する手筈であったが、あの様子を見る限り我先に逃げ出していく様子が目に浮かんでしまう



「もういっその事、全員で飛び込むか?」


「う~んでも・・・」


『敵が盆暗な分には儂らは助かるからの。態々追い詰めてミンツァーの徒を使われるのも厄介じゃ』


「そこなんだよな~。」


「逆に皆で忍び込んだら?」


「ウマル、出来そうか?」


「自信はありませんけど何とかなると思います」



 マーリンが言う通りアルベルト達が騎士団を斃して王子を救うと言うシナリオを作らなかったのは敵を追い込む事を避ける為だ。 終末教とゲンカの係わりが判っている以上はミンツァーの徒の様な邪法で生み出された戦力を持っている事は予想できていたし、実際に村ではミンツァーの徒の襲撃を受けた


 寄せ集めの第一騎士団を壊滅させた結果、そのような戦力が全面に出て来たのではアルベルト達はともかく周囲の被害が馬鹿にならない。


 村を丸ごと壊滅させる手を取った事には驚いたが、人口の多い都市ではそれを行う事は避けるだろう。 彼の目的は不明だが、寄せ集めとは言え騎士団という戦力が有るうちは折角固めた地位を捨ててまで危険な策を取るほど愚かな男では無い筈だ



「それじゃあ、忍び込んでから追い立てちゃおうか」


「ん・・・こっち」



 またもや大きな欠伸を漏らす門番を横目に見ながらヴィクトリアの案内で潜入に適した場所へと移動するアルベルト達だった




 ☆△☆△



「ゲンカ様。村の結界が作動したとの報告がありました」


「そうか。状況は?っと聞くまでも無いな、その顔は」


「はい。結界の作動後に彼等が動き出した事までは確認しておりますが・・・」


「結界の反応が消えた、という訳だな」



 真夜中だと言うのに執務室で書類に目を通していたゲンカに近衛騎士が報告を上げる。 あれ以来、此方を見ながら報告を聞いてくれるようになった上司に嬉しさを感じながらもそれをおくびにも出さない彼は、寧ろ目の前の男の先を見る視線の鋭さに対する驚きの方を抑えるのに必死だった 



「騎士団は派遣しておりますが、このままだと王子は・・・」


「ハハハ、あいつらに期待する方が間違いだ、今頃はルプスに向かって逃げ出しているだろうよ。」


「・・・では例の指示でよろしいですか?」


「ああ、頼む。王宮にまでサウスバーグの若様に侵入されては敵わんからな」


「判りました。第二騎士団を廻します」



 ゲンカは王子の救出に動いているのが誰なのかを正確に予想していた。 勿論、そんな情報が上がってきている訳では無いがレベッカ王女が王国に逃げ込んだ時点でその為の準備を始めていたのだ



「一つ、お聞きしてもよろしいでしょうか?」


「・・・そうだな、お前は見込みがありそうだ。だがこれ以上踏み込むと逃げられんぞ?」


「覚悟は出来ております」


「そうか、物好きな奴だな」



 表向きのゲンカの顔は人当たりの良い優秀な文官だ。 しかし様々な報告を上げている彼にはその裏の顔を知る機会はいくらでも有った。 そして自分の前任者がどうなったのかを考えれば目の前の男の本当の姿がどれだけ恐ろしいかを理解するにも十分であった


 抑々、近衛騎士にまで上がる男は公国に対する忠誠心はかなり高い。 ゲンカの裏の顔を知れば反抗するのが当たり前で寧ろ前任者の行いが普通だろう。 当然恐怖も有る、時にゲンカが放つ冷気にも似た迫力にその身を竦ませたのは一度や二度では無かった。 しかしそれでも彼はゲンカという男にどうしようもなく引き付けられた


 この小さいながらも平和で安定した国で男として憧れの近衛騎士にまで登りついた。 自身が変わり者という自覚が有る訳では無いが、このまま安定し場所で一生を終える事を考えると・・・


 始めは小さかったその感情は何時からであっただろうか、ゲンカという男の生き様を見せられて大きく育ってしまった。 それが彼にその一歩を踏みこませる



「王国の動向、ゲンカ様は何処まで・・・」


「なに、そこまで難しい事では無いさ。人が人を妬むと言うのは何処の国に行っても変わらんよ」



 ゲンカは何処か悟った様な表情で説明を始める。 レベッカ王女が訴えるのは自身の簒奪に関する訴えであろう。 当然、そこには神国の関与も疑われて当然だし事実ゲンカは神国との係りを強く持っている


 そうなれば王国としては神国を警戒せざるを得なくなり、公国がザービス教に取り込まれる前に、もっと言えば包囲網を築かれる前に動きたくなるだろう。


 だが、それをさせない勢力が必ず存在するとゲンカは言うのだ



「公国へ干渉するとすれば最終的には武力が必要になるのは誰にでもわかるだろう」


「はい、属国ならともかく、我らは小国とはいえ独立した国家ですから」


「では誰が動く?」


「かの国で武力を持つのはサウスバーグ家のみ・・・」


「そう言う事だ。」



 辺境伯であるメネドール。 地理的な面でも、また防衛の為とはいえ武力の面でも公国へと干渉するとすれば動くのは彼であろう。 しかし只でさえセイレケの街の発展で伸びているサウスバーグ領にこれ以上の力を付けさせたくない勢力が王国には有るとゲンカは言う



「潜在的な脅威が神国、いやザービス教に在ったとしても目に見えて何かされた訳では無いからな」


「だから王国は動かぬ、いや動けぬと」


「そう言う事だ。 国王も貴族達を敵に回すリスクに悩むだろう。 だが、それで終わらぬのがメネドールという男だろうな」


「故に少数と予測したのですね」




 アルベルトが帝国を初陣で破り、その後の侵攻を撥ね退けたのは有名な話だ。 実績は全てカルルク将軍に齎されているが実際の戦闘の様子を探れば誰が中心に有ったかは判ってくる。 婚約者である第三王女が魔法の才に恵まれている事もA級冒険者であるカイヤとバイマトの事も調べれば幾らでも判る事であった



「大事なのは情報と分析だよ。それがあれば結果も付いて来る・・・が、予想外も起きるがな」


「あの部隊があそこまで簡単に抜かれるとは思いませんでしたが・・・」


「まぁ、それでも可能性はあったからな。第二騎士団はその為の準備だよ」



 ゲンカの手足となって動く寄せ集めの第一騎士団では無く、精兵たる第二騎士団。 しかし大公に忠誠を誓う彼等がゲンカの言う事を聞く訳が無いし、当然それをゲンカも知っている。 



「では・・・それを以ってゲンカ様は何処へ行かれますか?」


「フッ、その問いを此処でか!フハハハ、本当に拾い物だよお前は。まだ名を聞いていなかったな」


「貴方に付いて行くのならば今迄の名は捨てましょう。どうかイスカリオとお呼び下さい」


「裏切り者の村の名か・・・ではイスカリオよ、今日からそう呼ぼうぞ」


「ハッ!」



 恭しく頭を下げるイスカリオを眺めるゲンカの眼には遠く彼が望む世界への道標が移っているのだろう。 


 だが、そこへ共に歩く事を望んだ新たな従僕の姿が、その終着点に共に在るのかどうかはゲンカのみが知るのであった・・・  

 

君の名は・・・じゃあちょっと合わないので(^_^;)


日曜日が所用で投稿でき無さそうなので、次回の投稿は月曜になると思います。

ひょっとすると、明日の筆の進み具合では投稿するかもしれませんが決算期の月末という事で難しそうです

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