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守護霊様は賢者様  作者: 桐谷鎭伍
第四章 動乱編
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救出作戦

ちょっと遅刻・・・

「ねぇ随分ユックリだけど良いの?」


「う~んあんまり目立つのも拙いみたいだよ?」


『ほっほっは、あくまでも観光じゃからの』



 エリザベスの疑問にアルベルトも良く判っていない感じであったが、全てはマーリンが言いだした事であった。 アルベルト達は真ん中に馬車を挟んで先頭にバイマト、カイヤ、ウマルの家庭教師組が馬を並べて、後方にエリザベスとアルベルトが並んで進んでいる


 エリザベスが言う程ユックリ走っている訳では無いが馬車を曳く馬にはまだ余裕もあり、もっと速度を出そうと思えば不可能ではないし、バイマト達が乗る馬達もかなり余裕を持った速度で走っている


 その為、普通に見れば馬車に乗る主人とその護衛の一行としか見えないだろう。 後方に控えているラモーヌが立派過ぎる点とヴィクトリアがアルベルトの前にチョコンと座っている事を除けばの話ではあるが・・・



「でも、催眠で従わされた民たちがいる可能性が有るんじゃなかったの?」


『ほっほっほ、首都までの距離を考えれば間に合わんよ』



 マーリンによると優秀な鳩ならば僅か数時間で200~300㎞を移動すると言う。 しかし鳩の移動時間と部隊の展開の速度はまた別の話だ。 目的の別荘地までの距離を考えれば例えアルベルト達の存在に気が付いたとしても大規模な展開までは間に合わないと判断している



『それにの、こうやって普通の旅人を装っておけば伝わる情報も混乱させられるからの』


「そっか、鳩さんに長い手紙を持たせる訳にはいかないもんね」


『そう言う事じゃ』



 鳩を使った情報というのは彼等の足に着けれる程度の情報量しかないのだ。 普通の旅行者が別荘地の近くを通る度に反応して部隊を派遣する事は考えにくいし、送る側も催眠状態での行動ならばそこまで細かく判断する事は無理だろう。 寧ろ全速力で走る馬車の方が警戒される可能性の方が高いのだ



「それなら安心ね」


『じゃがそれ以前に配置された兵力は別じゃぞ』


「そうだね、油断して良い相手じゃないみたいだし」


『うむ、じゃが油断さえせねば何とでもなるがの』



 レベッカ王女が王国に保護されたという情報はゲンカの元にも届いている筈だ。 その情報を得たゲンカが何も準備をしていない訳が無く、おそらく別荘地にはそれなりの数の兵士が警戒に当たっている筈であった


 しかし、いかなゲンカであろうとも全兵力を別荘地にという訳にはいかないだろうし、公国内にだって廃嫡されたとは言え親王子派だっているだろう。 そうなれば動かせるのは手勢の第一騎士団のみと考えて間違いない。それならばこのメンバーで隙を突いて王子を救出するのは難しくないとマーリンは考えていた




「ここらで一休みするぞ~」


「ん・・・お昼」



 先頭を走るバイマトが休憩に丁度良い場所を見つけたのか速度を緩めて声を掛けてくる。 太陽も真上に上がっており時間的にも昼食時だったので食事も兼ねた休憩という事だろう


 道の脇にある日除けに丁度良い大きな木の下に馬車を停め簡単な食事の用意をしながら車座に座るアルベルト達



「で、マー・・・アル、何か作戦あるんだろ?」


『ふむ、まぁ此処は定石通り夜襲じゃろうな』


「夜襲が一番いいんじゃないかな」


「別荘地の地理は判るの?」


「あっ、それなら僕が判ります」



 いつもの調子でマーリンに頼ろうとしたバイマトはレベッカ王女達がいる事を思い出したのか、言い直すようにアルベルトに問い掛け、苦笑いを浮かべながら王女達に配慮しつつアルベルトが通訳する


 幸い話の流れで別荘に行った事のあるバサラ少年が地面に簡単な地図を書きながら説明してくれたので不自然さに気付かれることは無かったようだが、カイヤに睨まれたバイマトは首を竦める様にして謝る



「建物は奥にあるほど身分の高い方の持ち物になりますので、大公家の別荘は一番奥です」


「此処と、それから此処にも詰所があるな」


「そうなると、ここらあたりに集中的に配置してあるのか?」


「いや、大公家の場合は敷地にも十分な兵力を配置できるようになっておる」


「そうなると軟禁場所に集中してるかもしれないわね」



 流石に貴族御用達の別荘地という事もあって警備に関してもシッカリしている様でバサラ少年が書き込んで地図に騎士団に所属していたセンゴクが兵士の詰所などを記入していく


 彼の話では大公家の別荘は警備の人員を配置できるように敷地も広く取ってあると言う。 その為、寄せ集めの第一騎士団が満足に連携を取れるとは考えにくい事を考えれば別荘自体に戦力を集中している可能性は高いとカイヤが予想する



「背後から廻りこめねぇのか?」


「無理、とは言いませんが・・・」


「後ろの森には罠が至る所に仕掛けてあるわい。不可能とは言わんが時間は掛かるだろうな」


「まぁそこら辺は抜かりねぇか」


「精霊さんに頼んだらどうかな?」


「魔力に反応する魔道具も仕掛けてありますから無理だと思います」


「正面突破しかねぇか?」


「もう少し考えなさいよ!この脳筋!!」


「正面は高さ三mの塀と門は鉄製です。準備も無しじゃ破れませんよ」


「なんで自慢気なんだよ!そこを破らねぇと王子様助けらんねぇだろ!!」




 大公家の別荘の守備に関する情報を漏らすのを渋っていたジェニーだが、上司であるセンゴクがポンポン答える上に、今回は王子救出の為の緊急避難と割り切ったのだろう、遠慮なく答えていく処か自慢げに胸を反らす始末だった



「ねぇウマル、なんか良い手ないの?」


「いや、流石に戦闘は専門外ですが・・・私も正面から行くのが有効だと思いますよ」


「うわ!アンタまで脳筋になったの!?ひょっとして脳筋って伝染するの?」


「失礼な!バイマトと一緒にしないで下さい!!」



 迷宮でLVを上げて戦う力を得たとはいえウマルは文官であり、実際の、しかも拠点を落とすような戦闘は専門外であった。 しかしカイヤの問い掛けに出した答えがバイマトと同じで在った為、類友扱いされ憤慨する



「俺と一緒だからって照れるんじゃねぇよ。そうかウマルもようやっと判ってくれたか」


「違いますよ!!これだけのメンバーがいれば時間を掛けるより電撃戦の方が有効だと思っただけです!!」


「それって正面突破とどこが違うのよ?」


『ほっほっほ。アル、解説できるかの?」


「えっと、ウマルのいう電撃戦って撃破じゃなく攪乱って意味じゃないかな?」


「流石はアル!判ってくれましたか!!」


「攪乱?つまりは・・・どう「はいストップ!」ばよ?」


「ん・・・ワンパターン」


「敵を斃さないで・・・俺に囮になれって事か?」


「バイマトだけじゃなくても大丈夫だよ。なんたってヴィクトリアがいるからね」


「ん・・・お任せ」



 話しが妙な方向へ向かいそうな処でマーリンがアルベルトを試すように回答を促すがレベッカ王女達もいるのでマーリンの方を見ずにアルベルトがウマルの意図を説明する


 単に電撃戦と聞くと素早い動きで相手の態勢が整う前に制圧するように聞こえるが、今回の目的は王子の救出であり第一騎士団の撃破は目的では無いのだからそこに拘る必要は無い。 要は王子救出の隙さえ作れば良いと説明する


 ヴィクトリアの眷属である闇人(シャドウ)であれば別荘に侵入する事は不可能ではない。 残念ながら戦闘力は無い為、救出までは無理でもアルベルトならば三mの塀など飛び越える事だって難しくは無い。 


 事前に闇人(シャドウ)達が王子の居場所を把握しておけば、バイマト達が正面で敵を引き付けている間にアルベルトが忍び込んで内部から逃がす事も可能だろう



「んじゃ、俺達は攪乱組だな。潜入はアル達に任せるとするか」


「我らは・・・」


「王女様の護衛でしょ」


「むぅ・・・致し方あるまい」



 若干不満げなセンゴク。 彼もバイマト寄りの気性なのかもしれないが自分の使命を思い出したのか渋々引き下がる。 一方のジェニーは初めから王女の傍を離れるつもりは無かった様で呆れた様子で上司を眺めており、アルベルト達の目的が王子のように公国側の目的は王女なのだからそこは言われなくても判れよ!とその目は訴えていた



「じゃあもう少し休んで時間調整してから作戦開始だね」


「別荘地の村までは半日掛からないくらいですから夕方に出れば寝静まってるかと思います」


「後は詰所の警備だな」


「ん・・・任せて」


「おし、腹も一杯になったし俺は寝るぞ」


『ほっほっほ、剛毅な男よな』


「ほら、アルもひと眠りしとくのよ」


「うん、カイヤありがとう」



 カイヤが差し出した毛布は一人用にしてはかなり大きな物だったが、アルベルトの後ろではエリザベスとヴィクトリアが小石などを避けて寝床を作っている処をみれば三人で寝る為の物なのだろう



「姫!あまりジロジロ見るのは如何かと・・・もう、誘惑する必要は無いんですよ?」


「み、みちゅめてなんか無いわよ!!」



 アルベルトが恋しいというよりも恋人という関係が羨ましいのか、指摘され焦る噛み噛みのレベッカ王女であった・・・

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