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守護霊様は賢者様  作者: 桐谷鎭伍
第四章 動乱編
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いざ公国へ

「姫、お気をつけて」


「で、殿下、何故儂をおいて・・・」


「・・・」


 カルルク将軍とレベッカ姫の爺やの老人コンビは眼に涙を溜めながら出発するアルベルト達を見送る。 今回の目的が本当に観光であれば勿論付いて行く爺やであるが、戦闘も予想される状態ではハッキリ言って足手まといにしかならない。 その事を理解した上で、不甲斐無い自分を攻めて悔し涙を滲ませているのだ


 一方で、もう一人の老人である将軍は今回もお留守番という事に対する悔し涙だ。 アルベルトが出掛ける以上は仕方がない事でいい加減自分の立場という物を理解して欲しいと思う彼は爺やとの対比に無言で顔を巡らせる



「お留守は私達が護りますのでご心配なく」


「うん、アリー頼むね。」


「承りましたわ、ご主人様(・・・・)


「いや・・・うん、行ってくる」



 カルルク将軍の涙には触れなかったアルベルトだが、私兵隊とその先頭に立つアリーの見送りにはキチンと挨拶を返す。 だが、真面目な表情の彼をからかう様にご主人様呼びをするアニーを嗜めようとして失敗してしまう


 なにせ馬上のアルベルトからは大きく胸元が開いた服装のアリーの豊かな双丘が造りだす谷間が丸見えな上に態ととしか思えない仕草でたゆんとしたソレを寄せ上げているのだ。 この状態で突っ込めばエリザベスが騒ぐのは目に見えており余計な騒ぎになるのは判り切っていた



『ほっほっほ、明るい見送りでなによりじゃ』


「出発するよ!」


「おう!まぁ気楽にな」



 明らかに士気を落としているアルベルトであったが自身に気合を入れる為に大声で合図する。 苦笑いのバイマトが慰めてくれはするが聊か締まらない出発であった



「私達だけ馬車で良いのかしら?」


「しかし、姫まで騎乗という訳には・・・」


「そこは気にしなくても良いわよ。私達は慣れてるしね」



 セイレケの街を出発した一行は馬車に護衛の騎士の二人も含めて大公家の面々が乗り込みそれ以外は騎馬での移動だった。 それを申し訳なく思うレベッカ姫であったが、この先を考えれば体力の無いレベッカ王女に合わせるのはあまり良くない。 幸いバサラ少年が御者を買って出てくれたので、いっその事大公家の面々には馬車で移動して貰う事になっていた


 幾ら名目が観光だと言え、それはあくまでも事後の言い訳に使うだけの話で実際には潜入と救出が目的なのだから戦闘は避けられないだろう。 護衛の騎士達の実力は知らないがカイヤやバイマトに勝るとは思えない。 それならいっそ馬車の中で大人しくしていて欲しいという訳であったが流石にそこまで直球で言ってしまえば角が立つのは必至なので、あくまでも長旅でレベッカ王女に無理をさせない為という事で押し切ったのだ 


 とはいえ、逃亡に使った馬車では流石に狭すぎるし凸凹の山道を疾走したせいでかなりガタがきていた。 更に逃亡してきた時に比べれば人数も増えている。 アルベルト達も自身の愛馬に荷物を載せてはいるが着替えやら野営の道具は馬車に積んだ方が良いに決まっている


 その為、貴族が乗るにはやや小振りながらもシッカリとした造りの馬車に乗り換えており、室内も逃走してきた時に比べれば快適で揺れも抑えられ乗り心地は雲泥の差だった



「これなら長旅でも安心ですわ」


「ん・・・長くない」


「そうだね。カリュアー!」


『はいは~い。呼ばれて出てきてじゃじゃじゃじゃ~ん!』


「なにっ!上位精霊だと!?」



 その乗り心地に燥ぐように馬車から顔をだすレベッカ姫にアルベルトの前にチョコンと座るヴィクトリアが悪戯っぽく笑うと、アルベルトも同じく笑顔で答え自身を慕ってくれる上位精霊に呼びかける


 それに応えて突然現れたカリュアーに驚くセンゴクは、しかしここまで明確に姿を現せるのは上位精霊だけだと気が付いたのだろう思わず剣に伸ばしかけた手を意思の力でねじ伏せたのは流石と言える



「カリュアー、この前のアレ。またお願いできるかしら?」


『ホントは駄目だけどアルちゃんがいるから大丈夫よ~』


「ごめんねカリュアー無理ばっかり言って」


『気にしない気にしない~。私はアルちゃんの契約下にあるから言い訳なんて幾らでも出来るからね』



 気軽に話しかけるカイヤにウインクしながら答えるカリュアーであったが、その存在は上位の樹精霊であり本来ならばこのように人前に姿を見せる様な存在では無い。 


 自然を司る彼等彼女等と交流出来るのは精霊使い(エレメンタラー)だけだ。 だが上位精霊クラスになれば精霊に愛される生粋の精霊使い(エレメンタラー)であるエルフの中でも一握りの者だけが交流できるとされている


 だが、目の前の上位精霊はアルベルト達と気軽に話しており更には契約下に有るとまで言い切った上で幾らでも力を貸すと言っているのだ、しかもエルフであるカイヤでは無くアルベルトの為にだ。 これにはセンゴク達公国の面々も驚きを通り越して只々絶句するしかなかった 



『場所は此処で良いのね~?』


「うん、大丈夫?」


『カイヤちゃんの時より近いしお茶の子さいさいよ~』



 表現が古いのは長く生きる上位精霊故に仕方が無いだろう。 しかし間延びしたカリュアーの話し方は何処かコミカルで聞く者を魅了する



『ほう、これが伝説に有る樹精霊(ドライアド)のトンネルか・・・』


「これって勇者様も通ったていうアレよね?」


『へへ~凄いでしょ~』



 だが、おっとりしたその口調で行ったのは魔王を斃した勇者が使ったとされる伝説級の魔法であった。 任意の森同士を繋げるこのトンネルは樹精霊(ドライアド)がいる事が前提に有るとはいえ、移動に圧倒的なアドバンテージを与えてくれる



「うん、ホントに凄い。けど、これをお酒の為に使ったカイヤって・・・」


「え!?今それを言うの?ほ、ほらアレはその~・・・ごめんさい」



 セイレケの街の三大祭の一つに数えられている奉納祭。 収穫祭と並ぶこの祭りが出来た時に共和国まで葡萄を取りに行くのにカイヤはカリュアーに賄賂まで渡して樹精霊(ドライアド)のトンネルを使っていたのだ。 


 その事をアルベルトに責められ今更何を・・・と思ったものの、軽蔑するような彼のジト目に言い訳をしようとするが結局は素直に謝る



「でも、これなら馬車じゃなくても?」


『流石に一瞬でって訳じゃないし~、あくまでも樹精霊(ドライアド)のいる森までまでだから~』


「まぁ何があるか判んねぇからな。大人しく馬車に乗っててくれや」



 目の前に広がる木々のトンネルを見てレベッカ姫が自分も騎乗でと言い張るが、樹精霊(ドライアド)のトンネルとはいえ制約はあるのだ。 彼女の兄である王子が幽閉されているという別荘地に直接行ける訳では無いのだから結局は彼女には馬車に乗っていて貰った方が良いのだ



「それじゃあ行って来るね」


『はい~気を付けてね~』



 最後にカリュアーに見送られて木々のトンネルに入っていくアルベルト達であった



 ☆△☆△



「失礼します。ゲンカ様、騎士団の配置が終わったと報告がありました」


「判った。山道の出口は?」


「はい、ご指示の通り連絡員を数名残すだけです。詳細はこちらに纏めてあります」


「そうか、判った」



 形式的なノックの後に執務室に入ってきた部下に顔も上げずに答えるゲンカ。 彼がこの部屋にいる時は殆ど書類に忙殺されており、態々入室の許可を与えなくても見られて困る様な事をしていない。 その為、部下にも許可が無くても入室して来るように伝えてある



「例の部隊はどうなっている?」


「・・・はい、それもご指示の通りに」



 短い報告を終えて出て行こうとする部下を同じ姿勢のまま問い質すゲンカ。 珍しい事もある物だと訝しげに思いながらも質問に答えるが、例の部隊が何なのか知っている部下は一瞬の戸惑いを見せてしまう 


 しかし、何事も効率を重視するこの恐ろしい上司にそれを気取られる前にスラスラと答えるがその顔に表情を表さない様に努力する必要があった



「そうか、ならば村人はどうした?」


「はい、改宗に応じた者は村に残しております」


「応じた者?そこは応じなかった者を残すべきではないのか?」



 何者も信用しようとしないゲンカは基本的に全ての業務を自分一人で熟す。 宰相となった今でもそれは変わらず実質公国は彼一人の力で運営されていると言っても過言ではない。 


 その為、ゲンカが下す指示というのは事細かく記されており基本的には部下である彼が何かを考える事は無い。 ただゲンカが下した指示が為されたどうかを報告するだけの役目とも言える


 しかし、時折こうやって人を試すように指示に穴がある事があり、簡単な仕事と思っているとその穴に嵌ってしまう。 それで自分の前任がゲンカの不興を買ってどうなったのかを知る彼の背中に冷たい物が流れた。



「応じなかった者はルプスの街に後送しておきました。時間が有れば司祭様のお言葉を賜れるかと・・・」


「ハハハハ、お言葉と来たか!」


「その方がゲンカ様のお好みに合うかと思いまして。 勝手な判断をして申し訳ありません」


「良い。これからも頼む」


「はい、では失礼します」



 執務室の扉を閉めてゆっくり三つ数えてそこから離れた彼は大きく息を吐き出す。 どうやら自分が埋めた穴は上司の不興を買う事は無かったようで一先ずは安心できた


 しかも普段は絶対に書類から目を離さないゲンカが自分の顔を見つめて笑ったのだ。 名前こそ聞かれていないが少なくとも顔は覚えて貰えただろうという期待が彼にはあった


 それが良い事なのか悪い事なのかは今の処は判断が付かないが、少なくとも今迄よりは仕事にやりがいも出るだろう。


 城内の護衛を任せられた近衛騎士としての矜持が彼にそう思わせる一方で、これ以上進めば後戻り出来なくなるかも知れない、という言いしれぬ不安が湧きあがったのも事実だった


 大公家への忠誠とゲンカの見せる不気味さに揺れる近衛騎士の表情は何処か影のあるものであった・・・




二点ほど補足を


セイレケの街を出たアルベルト達は王国側からべレス山脈へと向かうと見せかけて、大きく迂回してカリュアーの森へ向かってます。 基本的にはアルベルトが呼べばカリュアーは何処にでも現れて力を貸してくれますが、自分の領域にいる時の方が一番力を行使しやすいのは確かです


、樹精霊のトンネルは膨大な魔力を使うので、離れた場所で彼女を呼び出して使うのは無地かしいです。 基本的には一方通行になりますが、カリュアーの様に力のある樹精霊がいれば話は別です(ちょっとネタバレ?)


あと、カイヤとカリュアーが樹精霊のトンネルを使ったのはセイレケの街を造っていた時ですから10年ほど前になります。 しかし長い時を生きる二人にとってはその位は、ついこの前といった認識です


なので、カイヤ以外のメンバーが樹精霊のトンネルを見たのは初めてという事になり、マーリンでさえ驚いている訳です



本文に入れると冗長になってしまう為、こちらにて説明させて頂きます

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